ブラインドテスト・・・5
いきなり聞こえてきたのは、強めの低弦で開始奏されるシューベルトの「未完成交響曲」だった。
通常この曲の序奏はPPなのだが、この録音ではPかmfであるかのように強めに出ている。
しかしこのことは、指揮者によるものか、聞こえにくいSP録音であるから、マスターリングの処置なのかは、はっきりしないところだ。
かなり早いテンポで進む1楽章には、シューベルトの暗黒面は見当たらない。
むしろ、喜怒哀楽の喜と哀の対比に重点を置いた演奏だ。
第2主題は、かなり明るめに・・・喜の象徴のように・・演奏されるから、「魔王」の暗黒面を感じることはできない。
録音のせいか、オーケストラは、今まで聞いてきた中では一番柔らかい音を出していて、特にホルンの音色と技術には、このオケが相当の実力を持つことが確認できる。
それに付け加えて、弦パートには、一種独特の細かいルパートとアクセント処理が見られる。
これはオケの方言か、あるいは指揮者のアゴーギグなのか、判断付きかねる。
もしオケの方言ならば、伝統的演奏スタイルを、守続けてきた相当歴史のあるオケということになるだろう。
指揮者の方言であれば、純粋ドイツ風ではないような気がする。
長音から短音に変化するときに、その特徴が顕著で、静かなウイーンナーワルツを一瞬思い浮かべてしまった。
少々精神分裂気味のこの曲、この指揮者の場合はそう感じさせないどころか、バランス感覚がよいのか、構成力に富んでいるのか、全く危なげない。
もう少しテンポが緩やかであれば、優雅そのものといってもよいだろう。
速いテンポの1楽章の後だから、なお一層そう聞こえるのだと思うが、2楽章はかなりテンポを落とし、ジックリ歌い聴かせる。(何度か2楽章のみ聴いてみたが、それでもまだテンポは速いほうだ)
楽章における喜と哀ばかりか、楽章間の喜と哀を、はっきりと示した演奏のようで、小生はシューベルトの暗黒面を強調するかのような、ムラヴィンスキーの演奏もお気に入りだが、優雅な美しさを表出した演奏も、悪くないと思うようになった。
種明
エーリッヒクライバーとベルリンフィルの1935年の録音。
速い演奏のはず、22分程度で終わっている。
by noanoa1970 | 2009-07-15 11:09 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)