パウムガルトナーのモーツァルト
何故このことをくどいように言うのかといえば、昔のクラシック音楽掲示板でもそうであったし、最近の大手通販WEBサイトでも、いまだに2人を混同しているのを見かけるからだ。
ルドルフ・バウムガルトナー:Rudolf Baumgartnerは、ルツェルン音楽祭弦楽合奏団を率いてのバロック音楽が得意な指揮者であり、バッハ、ヴィヴァルディ、パッフェルベルでオールドファンには、おなじみの人。
パウムガルトナー:Bernhard Paumgartnerは、彼よりも20年ほど古い人であるが、1960年当たりに、両者とも・・・バウムガルトナーはルツェルン音楽院、パウムガルトナーは、ザルツブルグモーツァルティウム音楽院を創設して活動したから、同じような経緯があり、名前も似ていることから混同されやすいのだろう。
ベルンハルト・パウムガルトナーは、彼が残した録音によってではなく、カラヤンの先生として、またモーツァルト研究者としてだけの名声が高いのか、はてまた彼の残した録音が少ないせいなのか、その音楽に比して今まで、一部の人意外は、余り高い評価をしてこなかった指揮者である。
小生がこの指揮者の音楽を聴いたのは、1962年のこと。
35番、36番のカップリングで、廉価版の全集に収録されていたのだった。
その全集には当時殆ど無名状態であったが、実力は相当高いと目される人たちの録音が集められていて、アルテュールローター、レオポルド・ルートビッヒ、フリッツ・リーガー、イシュトヴァン・ケルテス、フランツ・コンヴィチュニー、ゲオルグ・ルートビッヒ・ヨッフム、ピエール・デルヴォー、エリク・テンベルク、ヤコブ・ギンペル、アンドレ・ナヴァラ、フリッツ・ブンダーリッヒ
有名どこでは、ウイーンコンツェルトハウス弦楽四重奏団のモーツァルト、ハイドンというものまでがあった。
今ではポピュラーなクラシック音楽の代表を、バロックから近代まで50枚のレコードに収録した全集で、この中に今日取り上げるベルンハルト・パウムガルトナー指揮のザルツブルグ・モーツァルティウム音楽院管弦楽団のハフナーとリンツが収録されていたのだった。
大学生になるまでの間の5年間、小生はこのレコードを聴き続けてきたが、そのうちレコードは廃棄されてしまい、探し続けて40年入手に至ってなかったのだった。
この世界は、最初に見たものを自分の親だと思ってしまう動物の子供のようなところが有って、本当の評価以上の付加価値をどうしても与えてしまうところがあって、それを一概に否定するものではないが、改めてCD復刻版で聞いてみても、矢張りこの演奏は素晴らしい。
心地よい緊張が連続し、音色が明るいモーツァルト。
ノーブルな「トパーズ色の香気」が漂ってくるような心地よい演奏に、小生は35,36,38,41と4曲も続けて聴いてしまったほどだった。
音色が明るいのは、オーケストラのピッチが、今まで聞いてきた現代オーケストラのピッチと違うのかもしれないが、ピリオド楽器のピリオド奏法に依存度の高い今日の演奏事情とは方向性の異なる演奏スタイルを、1960年にパウムガルトナーがモダン楽器のモダン奏法で、これだけの素晴らしいモーツァルトを聞かせたのだから、古楽器古楽奏法信者の諸氏は、パウムガルトナーの演奏を聞くべしであろう。
ペーター・マークのモーツァルトにも素晴らしさを感じたが、この演奏は、「気品」という観点でそれ以上である。
by noanoa1970 | 2008-04-21 11:39 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)
こういう録音が、CD時代の終わり近くになって出てきたとはちょっと寂しい気がしますが、これだけのクオリティであれば長年待たされたことを恨むのは止め、出してくれたことに感謝を捧げるのみです。