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黄色・・・「聖と賎」

わが国の古代には、色彩感覚として「赤」「黒」「白」「青」の4つの色が認識されていたと、古事記の中に出てくる色を表す言葉から推察されるようだ。

この4つの色は全て白い、赤い、黒い、青いというように、末尾に「い」という言葉を付けて呼ばれるのも、古代からの用法であるという。

さらに補足として
「白」「黒」「赤」「青」は、
白=顕い、黒=暗い、赤=明るい、青=漠い・・・からの転用語だともいう。

青=漠は取り留めのないあいまいな色合いの事を広く指し、緑や灰色も含まれ、何故現代になってまで緑色の色の信号を、青信号を呼ぶかはこのことと関係するらしい。

「黄色」は、歴史的にはもう少し新しく、日本書紀に出てくる色で、どうも中国からもたらされた色彩後で、それは「黄色い」というように「色」つきで呼ばれることで明らかであるという。
従って上の4色とはその成り立ちの背景が根本的に異なるらしい。

面白いのは
紀貫之の土佐日記「黒崎海岸の記述に」黒崎、白い波、青い海、赤い貝殻を入れ込んだが、5色ないといけないのに、(黄色が)一色足りない、と書いているから、日本書紀を経て紀貫之の時代には4色+黄色の5色が、わが国の正式5色として認識されたが、それは中国の陰陽五行説が大いに影響してのことであったらしい。

小生は「黄色」に関する文献を昔読んだことがあって、その中で驚いたことがあった。

それは「黄色」:色彩における「聖と賎」の文化で、中世以降キリスト教社会では「黄色」に対する差別が支配していたこと。

顕著なのはユダヤ民族差別で、彼らの描かれた絵画には黄色の着物でユダヤ人が象徴され、それは最後の晩餐の「ユダ」の着物が黄色であったからだとされる。

娼婦に黄色の衣服を着させたり、ヒットラーは、ユダヤ人に黄色の「ダビデの星」のしるしを付けさせた。
罪人の家の門やドアを黄色に塗ったりするところもあったそうだ。

「黄色」を使って差別的内容や、否定的な事柄を表す言葉は多く、

古語yellows―単数形で「妬み」「移り気」などを意味することがある。

ドイツ語gelb―「嫉妬のあまり顔色を失う」

yellow stockings―「嫉妬」 wear yellow stockingsで「妬む、嫉妬する」

yellow-livered―「臆病な」

yellowbelly―「臆病者」

yellow journalism―低俗で扇情主義的な新聞のこと。低俗で滑稽な内容のもの。

yellowback―19世紀の扇情的な通俗小説のこと。表紙が黄色かったことに由来する。

yellow race―「黄色人種」特に中国、日本、朝鮮半島、モンゴルの人々を指す。

yellow peril―「黄禍」「黄色人種(特に中国人、日本人)の恐怖」

yellow game―「お粗末なプレーの多い野球の試合」

yellow sheet―「犯罪記録」

・・・などなどが上げられる。

そして西欧人に対する、好む色と好まない色調査の結果として圧倒的に好まれる色は「青」、そして好まれない色は「黄色」であったというデータもあるそうだから、キリスト教国家の人々にとっては潜在意識の中にあの「ユダ」そしてユダヤ人に対する差別意識が存在するのかもしれない。

ただ北欧の人々は、なぜか黄色を好ましいと思うg人が圧倒的で、その理由を「太陽の光に対する憧れ」とするが、小生はそれだけでなく、それは古代北方ゲルマン人の末裔だからだと思っている。

非キリスト教社会や、古代キリスト教文化が謁見する前の世界では「黄色」は高貴な色であり、最も身近な・・・つまり希成や土の色で、最も人の暮らしに直結した色であったはず。

中国の皇帝やギリシャローマの神官、古代ゲルマン、ケルト等の古代民族。
そして、ヒンドゥー教、道教、儒教、仏教等、非キリスト教宗教においては「黄色」は高貴な色でもあったという。

黄色は古代ゲルマン語ではgelo「胆汁」を表し、その言葉がyellowと英語に転用されたという。
そして黄色に輝きを持たせたのがgoldすなわち「金」で、これはキリスト教では「聖」の象徴の色。

恐らくユダヤ教そして初期キリスト教に置いて黄色は「聖色」であったのだろう。
それがあの最後の晩餐のユダの裏切りで、一変して差別の象徴の色となったのは、病的な何かを感じてしまうものだが、この隠された背景の謎に肉薄することが出来れば、面白いことだ。

黄色・・・「聖と賎」_d0063263_10521031.jpg

The Kiss of Judas by Giotto・・・通常ユダはこのように黄色の衣服をまとって表現される。

黄色・・・「聖と賎」_d0063263_10525672.jpg

ダビンチの最後の晩餐では、ユダの衣服は暗緑色で描かれているのは、さすがダビンチ。
イエスから向かって左2人目がユダ。


by noanoa1970 | 2008-01-12 10:57 | トピックス | Comments(0)