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洋梨は「バロック」

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写真は、「洋梨」の新品種「オーロラ」という名前のがつけられている。
オーロラは、「マリゲット・マリラ」と「パートレット」という2つの洋梨をかけあわせた、人気急洋梨という。

小生は今までラ・フランス あるいはル・レクチェという種類のものしか食したことはないが、姿かたちからは決して想像できない 香りと、味、そして日本の梨にはない滑らかさが気に入っている。、「梨」という名前は同じだが、違った果物だとも思っていて、それぞれのよさがあるから、水分豊富な日本のの梨も勿論大好きだ。

小生は、お気に入りの日本酒・・・奈良の「今西清兵衛商店」の「春鹿」大吟醸の香りをラ。フランスの香りと、よく表現するのだが、上の写真は、今まで食したことのないもの。
「オーロラ」という新品種で、2つの洋梨を交配させたものと聞く。
いわば日本における、イギリスとフランスの果物の共同作品である。

早生種の2つについて調べると、
<パートレツト>
原産はイギリスですが、世界各国で栽培されており、西洋梨の中でも知名度が高
い品種です。日本へは明治の初めに導入されていますが、果形はひようたん形で、
可食期になると肉質は柔らかくなり、舌触りと香りのよさが特徴の品種です。
生食用のほか、缶詰やジャムなど加工用としてもよく使われています。

<マルゲリット・マリーラ>
フランス原産の品種ですが、樹勢が旺盛で、摘果をしないと技が折れるくらい豊
産性があります。果重は530gぐらいと大玉で、パートレツトを大きくしたような形
をしています。果肉は白色で果汁が多く、肉質も良いのですが果頂部に繊維質が残
るのがやや難です。爽やかな甘みと食味の良さ、そして日持ちも良いと言うことで、
有望視されている品種です。

お互いの欠点をうまく補って、旺盛な生育力と、やわらかい肉質という強みを発揮する味になっているか、例によってわが国の技術は疑うべくもないのだが、洋梨の持つ「風雅」が、ラ・フランスやル・レクチェと同レベル以上に出し切れているのか、楽しみに試食することにした。

姿を見ていると、「サティ」の音楽が聞こえてきそうだ。日本の梨のように整わない、ゴツゴツした感じは、洋梨の特徴なのか・・・サティが食したものもこのような形のものだったのだろうか・・・

あるとき、ドビュッシーがサティの作品を評して、「形式が欠けている」と言った。
ドビュッシーは、音楽にはある程度の「形式」が必要だと考えていたのだ。
その言葉に対するサティの回答が・・・「梨の形をした3つの小品」
フランス語の「梨(poire)」には、馬鹿・間抜けという意味もある。
「三つの小品」なのに、七曲から出来ている。
ユーモアとも皮肉ともとれる、いかにもサティらしい作品。

洋梨の形は「バロック」そのものである・・・・と、フと思いつつ、常温で熟すのを待つことしばし、食べごろを冷やしてから皮を剥いた。(バロックの本来の意味はお調べください・・・笑)

イギリスとフランスそして其れを盛った皿は、わが国の国花「菊花紋」の伊万里の大皿だから、ここに「英仏日」食の三国同盟が成立することとなった。

さて、期待した「味」の話を。
果肉は今まで食してきたものとほとんど変わらない、そしてやわらかさは、なるほど、評判どおり、バターをナイフで切った時のように滑らかだ、しかしラ・フランス、ル・レクチェとほぼ互角。
差があるとしたら、それは品種の差ではなく、個体差のレベルであろう。

肝心の味は・・・・結論から先に述べると、小生の好みには合わない、其れはなぜかというと、
皮を剥いたときに立つ「香気」が感じられなかったこと。
「香気」は恐らく、何か揮発性のものによって引き出されると思うのだが、残念ながら、「オーロラ」には其れが微弱すぎて、ほとんど感じられない。
そして、ここが小生の「洋梨」が好きなところでもあり、わが国の梨と一線を画すところなのだが、・・・上品な「酸味」・・・これがないのだ。

上品な酸味成分が引き起こす香気・・・もしこの表現が適切だとすれば、この洋梨はこの一点で、その生存理由を失うことになり、「熟した林檎」の香りの域を出ないことになってしまっている。
価格を聞くとかなりやすく、日本の梨とほぼ同じぐらいだから、広く流通するのは良いことなのだろうが、これが「洋梨」の味だと、手放しで薦めるわけには、どうしても行かない。

「洋梨」には「香気」「高貴」がやはり必要で、其れはあの「バロック音楽」にもいえることだ。

by noanoa1970 | 2006-09-17 09:00 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(1)

Commented by 岩見茂美 at 2006-09-17 23:16 x
洋梨はバロック・・・ すばらしい表現ですね
洋梨については、未知の世界でコメントできませんが、バロックについては最近とても関心があります。バロックといえばクラウディオ・モンテヴェルディが第一に頭に浮かびます。最近あらためてオペラをよく視聴しますが、オペラ的要素はバロックが根源ですよね。ご承知のとおり私は今スピーカー検討中ですので、今日は昨日友人から薦められたサントリーホール収録の『パーセルの主題による変奏曲とフーガー(ブリテン)』を視聴していました。数多くの楽器の音を聴ける曲なのでとても参考になりました。古いオペラはまだ聴いていないものもたくさんあり、結構今後オペラを聴くことについては楽しみにしています。