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「東京物語」を見る・・・「うちわ」の謎-1

この物語の季節は「盛夏」である。それは作中いろいろな場面で、「うちわ」が使われていることからも分かるが、小生は、「うちわ」を小津が何かを表現するための小道具として、一貫して使用してきたような気がしてならない。
さて、それでは「うちわ」が、どのような場面で、何を表現しているのかを例を挙げてみていくことにしよう。

久しぶりに家族が一堂に会したときに、「しげ」の使う「うちわ」はごくユックリと両親のために扇がれる。久しぶりに会えた喜びと、しばらく長男の家に厄介になる両親を見て、「しげ」はこの時点では安心しているのか、心の内が、比較的平穏である。「うちわ」の扇ぎ方と「しげ」しかうちわを使ってないことが面白い映像表現である。
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長旅をして無事東京に着いた安堵感と、少しくたびれた感じが「うちわ」に出ている。しかしここでは東京の暑さは、さほど感じない。
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長居されると困ると思った「しげ」が、夫も巻き込んで長男に、熱海行きの相談を持ちかける場面。「しげ」の「うちわ」がせわしなく、足元やすその中をも扇ぐ姿が描写される。口先では両親のためになどといいながら、その実「寄り付いてくる虫を追い払う」かのような「しげ」の心理を表現するように思う。
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by noanoa1970 | 2006-08-30 15:20 | 小津安二郎 | Comments(0)