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青髭公の城とユディット

久しぶりに「バルトーク」の唯一の「オペラ」、「青髭公の城」を聞いた。本来オペラは見るものであるが、このオペラは昔のレコードのままである。LP1枚で収まる長さの・・・本当に短いこのオペラの登場人物はたった2人「青髭」とその新妻「ユディット」だけである。「ラヴェル」の2つのオペラも非常に短いが、それよりさらに短い。

登場人物がたった二人であるがゆえに物語としては、人物の「内面性」をかなりの角度で描き出す。
政略結婚なのだろうか?青髭の元に嫁ぐことになった「ユディット」は、7つの扉の向こうにある青髭の秘密を暴こうとする。5つの扉の中の光景には全てが「血のにおい」がし、6つ目は「涙」そして最後の扉には「美しい先妻」が3人居ることが分かる。

これらの7つの扉はこの城の暗黒で陰気なじめじめとした空気の中で守られてきたのであるが、「ユディット」は青髭を愛している・・・といって鍵をせがみ、全ての部屋に光を入れて全てを見てしまう。その結果、先妻3人がそれぞれ「夜明け、昼、夕暮れ」の象徴であることを知ると同時に自分が「夜」≒「死」の象徴として7つの扉の中に入らねばならないことを知ることになる。

普通に考えると、「約束事を破ったものが罰を受ける」・・・「見てはいけないものを、見たなー」という、わが国にもよくある御伽噺のようにも思える。が・・・

しかし小生はこの物語を少し違う視点で捉えてみたいと思う。
「ユディット」という名前は旧約聖書外典に伝わる、ベツリアという町の未亡人「ユディット」は町を包囲した敵軍の将である「ホロフェルネス」を誘惑し、寝ている隙にその首を切り落としベツリアを勝利に導いた女傑の名前と同じである。

つまり敵の国に乗り込んで、敵の対象の寝首を掻く「九ノ一」忍者のような女傑、この「青髭」の物語も結婚を装った新妻ユディットが父親の支持で敵国「青髭」を暗殺す用途やってくるのだが、「青髭」の愛に惹かれるも、もともと自分は青髭を裏切る目的であったから、後ろめたさに疑心暗鬼となり、これでもかとの、「青髭」の愛情を確認する行為をしてしまい「天罰」を受けることになる・・・・そんな見方をツイしてしまう。

「グリム」あるいは「ペロー」そして脚本の「バラージュ」のオリジナルからは何が読み取れるのか知りたいところではあるが
そのよう思いで、このオペラを聞くと「ため息」は、突然妙に現実味を帯びてくるようだ。
小生のLPでは
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若き「イストヴァン・ケルテス」が絶頂期の「クリスタ・ルートビッヒ」と「ワルター・ベリー」の2人と共演する。ハンガリー語で歌う2人の歌唱力といい、同じハンガリーの出身とはいえ、この難曲をここまで見事に解釈して聞かせる若き「ケルテス」も素晴らしい。

かのモーツァルトにもオラトリオ「救われしベトゥーリア」K.74c (118)の第5.曲ジュディッタ=ユディットのアリア」 Andante ヘ長調ガ存在する
「ユディット」を題材にした美術品もかなり多い
ユディットはユダヤ教・キリスト教ともに、特異な存在であったようだ。

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「ルーカス・クラーナハ」の「ユディット」1530年頃
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「クリムト」の「ユディット」
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アルテミジア・ジェンティレスキ 「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」
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マイト (Conrad Meit, 1480頃-1550)の大理石彫刻
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「ホロフェルヌスの首を斬るユデット」「CARAVAGGIO」1599年頃

by noanoa1970 | 2006-04-18 15:01 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(1)

Commented by KawazuKiyoshi at 2006-04-20 10:29
ラヴェルは難しい技巧が多いですよねー。
いや音楽が全部素晴らしいのですよねー。
詩と音楽と数学は宇宙のハーモニー。
また来ますね。