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復刻まで35年・・ヨッフムの「グレイト」

1960年代の終わり頃だったと記憶するのだが、その当時「ドイツグラモフォンのクラシックレコード業界での力は相当なものがあった。「カラヤン」を始めとするクラシックのスターたちを起用して、レコードを数多く出していた。ビクターRCA、コロムビアCBS、東芝エンジェル、キング・ロンドンなども活躍はしたが、やはりあの金色の額縁に刻まれた演奏家の名前のジャケットは、そのジャケットの持つ高級感や、ある種の権威が感じられ、憧れのレーベルであったことは多分間違いないことだろうと思う。

1960年代初頭からの家庭用「ステレオ装置」の普及に伴ってレコード会社が考えた戦略の一つが「廉価盤」というもので、これは演奏の良し悪しはまったく別で、録音が古いもの、そして旧盤の復刻、非スターの演奏などによるものが多く、その中でグラモフォンからは「ヘリオドール」というレーベルが出ることになった。当時レコードが1枚安いもので2300円、新譜だと2800円の時代にこの「ヘリオドール」は1200円という価格で、かなり多くのレコードを出した。

その一つが「オイゲン・ヨッフム」と「バイエルン放送交響楽団」の「シューベルト」の「グレイト」であった。「未完成」の次に聞く「シューベルト」の交響曲として小生はこの「廉価盤」を選んだのだ。
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後に「シューリヒト」、「ワルター」、「コンヴィチュニー」、「ケルテス」などなどを聞くに至るまでの間、この「ヨッフム」を何回聴いたことだろう。のっけからの「ホルン」に衝撃を覚え、静謐な美しさの中に、ベートーヴェンの「第9」の影を見出したのもこの演奏であったし、この曲が「9番(7番)」であることを知ったいたのも、この音盤であった。「バイエルン放送交響楽団」の存在と名前、そしてその演奏を初めて聴いたのもこの「ヨッフム」盤、この音盤が小生の「グレイト」の原点となったというわけだ。

1980年代から今日に至るまで、どれだけCD復刻を待ち続けたことだろう。それはレコードの溝が減りつつあること、溝に傷がありノイズが出るようになったこと、さらに途中でレコードをひっくり返すことが、この「グレイト」に限って、興ざめしてしまうものが有ったからである。
(他の音楽では、ちょうど休憩時間的なブレイクとしてよい面が多かった)(1面に収録された第9を例外として)

このヨッフムの演奏は思い込みを差し引いても「素晴らしい」者で、音が全てにわたり美しく響く、良く歌う、フレージング処理が大胆で、しかし自然に聞こえる。1楽章の「コーダ」では全楽章の終わりのように、壮大だが、其れもこの指揮者の特徴だと、納得して聞いていた。

昨年何気なしニ大手CDショップのネットカタログを見ていると、「ヨッフムのグレイト」とあるのが目に付いた。小生はてっきり復刻希望の録音であるはずが無い・・・今まで全く無視してきたのだから・・・とそれでも気になって詳細を見ると・・・・万歳!!で、思わず有頂天になった。去年のクリスマス前である。
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雪で到着が3日も遅れたことも手伝って、到着が待ち遠しかったが、到着すぐに聞いてみると、紛れも無い「ヨッフムのグレイト」がそこにあった。
CDとなって輪郭がハッキリした感じがするが、レコードよりもディテールがしっかりとわかってさらに面白い発見があった。

1958年録音ステレオであるが、当時のドイツの優秀な技術力は、リマスターによって完全に甦っている。カップリングの「未完成」が聞けるのもありがたい、LP、CDともに小生の「宝物」となった。

by noanoa1970 | 2006-02-05 17:10 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)