北斎「神奈川沖波裏」にあった習作
ドビュッシーの1枚の写真
掲示板「猫」でまた面白いテーマが建てられた。
北斎の有名な版画「神奈川沖波裏」と「ドビュッシー」のかかわりについての内容である。
中でも昔から有名なのは、「ドビュッシー」の交響詩「海」が北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」によって影響を受けた。インスピレーションを得た。インスパイヤーされた。などというもので、ブーレーズのレコードジャケットにも使用されている。

原画は以下の通りである。

国内外ともに、大変評価が高いものあるが、大変変わった版画でもある・・・と小生は思うのであるがいかがでしょう。大波とその下の中波と遠くの富士山の三角形の形が「遠近法」的でない「遠近法」・・・表現が難しいのだが、西洋絵画の遠近法とは趣の異なる、・・・・自然のままに見せるというものでなく、まるで黄金比率の構図ように、意図して描かれているように思う。
日本画に遠近法が入ってきたのは、オランダの絵画からだといわれており、「司馬江漢」などもその洗礼を受けたという。
そして北斎も実は「遠近法」によって、この「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の制作以前に、「習作」らしき物を作っていた。其れが以下の2作品である。
下図2つのうち上の作品、
葛飾北斎 「神奈川沖本杢之図」では
洋風画風を積極的に取り入れ「遠近感、立体感、明暗」を意識して描いており。左側の崖の遠近感、浪、水際のラインなど、西洋画の表現方法を取り入れているといえないだろうか。額縁に飾ってあるような書き方も、西洋的である。
下作品は
「おしおくり はとう つうせんのづ」という作品
右上、まるでローマ字のようにひらがなを使ったことに驚く。北斎の風景版画の中でも最も洋風的なものされているのもうなずける。
いずれも構図は「神奈川沖浪裏」と同じであり、「おしおくり」とは「魚を運搬する船団」であるということから、「神奈川沖浪裏」の3隻の船も漁港から市場に向かう・・あるいは帰るところなのであろう。、「おしおくり」は「魚=うお 仕送り」が変化したものであろう。


さてそれではドビュッシーはこの「神奈川沖浪裏」の何に興味を持ったのだろうか?「刺激を受けた」「共感した」「インスピレーションを得た」「影響を受けた」などという言葉はとても都合が良い言葉で、小生も使うことが多いのだが、ここは少し突っ込んで考えなければならない。
しかし長くなりそうなので本日は、北斎の「神奈川沖浪裏」には元図があり、其れはたぶんに西洋の遠近法を模倣していた。ということを提起するだけにしておこう。
小生は「神奈川沖浪裏」の「波」でなく「波裏」というところにそのヒントが隠れているように思う。
by noanoa1970 | 2005-10-12 09:34 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)