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スタバ

「スタバ」といっても「スター・バックス」のことではない。最近のクラシックファンの間でも、略語が流行しているらしくて、「スターバト・マーテル」を「スタバ・・・」と略すのだそうである。
さてこの、「スターバト・マーテル」は「悲しみの聖母」と訳されているのがほとんどであるのだが、実はそうでないことにあるとき気づいた。それはシューベルトの宗教曲全集を手にしたとこのことであった。サヴァリッシュの手になるその全集の中に2つの「スターバト・マーテル」が録音されていて、1つが割りと良く聴かれるD-383、もう一つがD-175の作品である。このD-175の存在をこの全集ではじめて知ったのであるが、なにより驚いたことに、、シューベルトの2つの「スターバト・マーテル」の典礼文が違うことであった。通常はラテン語で歌われるこの「スターバト・マーテル」をシューベルトはD-383では「ドイツ語」に置き換えて歌わせているのだ。D-175では「ラテン語」であったのだが、シューベルトは「ドイツミサ」も書いているから、ありえる話だと納得したものである。
そんなことに興味を持ちながら調べているうちに、とても面白いことが分かったのである。
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もっと驚いたのは、「スターバト・マーテル」には、「ラテン語の異なる2つの歌詞」があることである。その2つとは
「Stabat mater speciosa・・・」幼子「イエス」の傍らに寄り添う「マリア」への賛歌
「Stabat mater dolorosa・・・」おなじみの、イエスの処刑に臨む「マリア」の悲しみに満ちてたたずむ姿を歌ったもの。・・・ほとんどがこの歌詞を採用している。
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「キリストの幼時」期にやさしく見守る母親「マリア」」の美しさを表現したもの、やがて処刑されえるわが子を涙ながらに見守らなければならない「マリア」の・・・あまりにも大きく異なる、「スターバト・マーテル」である。いずれも「マリア」はひたすらわが子イエスの傍らに佇んでいるばかりである。

この曲は「悲しみの聖母」という訳が使われ、其れはそれでよいと思うのだが、、stabatが「立っていた」materがmother「母」であることから、「スターバト・マーテル」は「母は佇めり」という意味となる。
余談であるが、「アヴェ・マリア」もそのまま約すとかなり、世俗的な意味合いとなるらしい。

by noanoa1970 | 2005-09-12 10:52 | 宗教曲を聴く | Comments(0)