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ブログ連動企画第2弾「私の愛聴盤」ベートーヴェン交響曲9番

いよいよベートーヴェン最後の交響曲にして大曲である。
この曲には、数々のの思い出がある。

生まれて初めて全曲を聴いたのが、アルテュール・ローターがハンブルグ国立管を指揮したものだった。
自分で購入した初めての音盤は、グラムホンがドイツ直輸入と宣伝し、おまけにそれまで2枚組がほとんどであったものを1枚に収録した新譜だった。
記憶では3500円だったと思うがLP2枚に収録されたものに比べると随分安かったし、新録音でしかもカラヤン/BPOだから満を持して入手した。
1964年か65年のころで新譜だったから、録音された1962年から、国内ではかなり遅れての発売だったようだ。

レコードの側面がきれいに面取り取されていて、尖りが無いから指がまったく痛くないので、これがドイツの工業力なのだと感心したものだ。

録音状態は当時としては、すこぶる良くて、低弦の箱鳴りが聞こえてきて大変感動を覚えた。
学友教会合唱団の出来をうんぬんする人が多いが、其れよりソロの歌手陣、特にグンドラ・ヤノヴィッツの美形と美声にすっかりまいってしまった。

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大切にしていたLPはどこかに行ったままになってしまい、仕方なくCDを3枚購入したが、最新のHQCDよりは、OIBPのPOCG-3587のほうが小生のオーディオ装置にはあっているようだ。HQCDは低音部を膨らませ過ぎてしまっていて、アナログオーディオ時代には良かったが今では、少しやりすぎの感がある。

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しかしHQCDのジャケットは完全オリジナルを再使用したものだ。

というわけで、カラヤン/BPOの1962年録音は小生にとって記念碑的存在。
カラヤンの第9の場合録音が新しくなるにつれ音楽がつまらなくなってくるよな感じがして仕方がない。

カラヤンの対抗馬としてDGが売出に力を注いだフリッチャイ盤は、力尽きや矢折れという感じが良くもあり悪くもある。小生はここでのディス7カウには疑問が大いにあるが、お亡くなりになられたばかりのディス7カウが歌った唯一の第9という価値は高い。

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ここ数日モントウ盤を聴いているのだが、リハ風景が収録されていて、打ち上げに「ラ・マルセイエーズ」が奏されるのだが、ここにモントウの想いが集約されているのが感じられ、本番の大きな下支えになっていることが良くわかる。

またモントウの録音は低弦が強く出るものが多いようだが、このウエストミンスター盤でも同じようだから、録音のせいではなく、なにかしらの意図があったものと思われる。
低域の支えが強い音楽は安心感がある。

他の演奏では問題が無いが、第9になると極端にあらが出る指揮者も少ないくないが、モントウはそれらとは違う。
おそらくはオケとの信頼関係を常日頃から築いてきた歌証拠であろう。

オケとうまく言ってない指揮者の第9は、どこかで「やはり」という感じがするが、モントウは素晴らしい音楽をオケや合唱、そしてソロの歌手陣から引き出している。
人気のラトルなどはその典型に思う。
過去から評価が高いフルヴェン/バイロイト、何度も聞く音楽ではない。
クレンペラーに至っては音楽破綻の一歩手前だ。

第9は絶対ピリオドアプローチ、ベーレンライター版ではいけない。
これまで聞いたものに良いものは1つたりとなかった。
アバド新盤もジンマンも、ガーディナー、ブリュッヘンも情けない演奏だ、実験しているわけじゃないのだからいい加減にしていただきたい。
独自の版のマルケヴィッチは悪くはないのだが、バランスが少し良くない。

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意外だがものすごくよかったのが、レオポルド・ルービッヒがベルリン交響楽団を振った1960年あたりの録音のもの。
ローターもそうだが、意外に名の知れてないもので名演奏がある典型だ。

モントウと同じように、オケの全信頼を集めた結果の音楽を、満足度の非常に高い演奏で提供してくれたのが、ペーター・マークである。
小集団ながら、有名1流オケ以上の力量を発揮させているし、ソロも合唱も秀逸だ。
これが生録音であることが信じられ無い。

上記以上の小生の一押しはというと、おおいに迷ったが、コンヴィチュニー盤(ポリスキーリマスター盤)をほんの一歩の差で、カール・シューリヒトがパリ音楽院管弦楽団を指揮したステレオ盤になった。
その差は殆ど小生の中にはないが、コンヴィチュニー盤の継ぎ足し録音が、強いて言えば難であるぐらいで両者のアプローチ解釈は相当の開きがあると思われるが、いずれも小生にとっての名盤である。

またシューリヒト盤がもし1980年代半ばにステレオでマスターテープが発見されなければ、有無をいわずにコンヴィチュニー盤にしたと思う。

両者に共通点を挙げるなら、トータルバランスがすこぶる良いことに尽きること、両者ともに解釈は異なるように思うが、シューリヒトがやや早め、コンヴィチュニーはやや遅めのインテンポであることだ。

数る楽曲の中でも、特にこの第9は、指揮者と合唱指揮、そしてオケとソロ、合唱団のベクトル方向がピッタリとあってなければ音楽が成り立たない。
したがって、合唱をコントロールできずに合唱指揮者に頼っている指揮者の第9が、つまらなくなってしまうのも少なくはない。

シューリヒトが他国フランスのオケと合唱団を御して、見事に操ったからには、相当の訓練と信頼がもたらした賜物であろう。

「なにも引かない、なにも足さない」ウイスキーのCMではないが、シュートヒトの演奏はいつもそんな感じを受ける。
がしかしベートーヴェンの、しかも第9だからだろうか、楽章に1個か2個思い切ったことをやっている。
こういう所を聴いて確認するのも、シューリヒトの頑固なまでのザハリッヒ、インテンポから、足を踏み外した瞬間を味わえるチャンスでもあろう。

パリ音楽院管の技量はいつもながら素晴らしく、特に木管金管は素晴らしい。
シューリヒトが普通は入れないところでティンパニーを1発入れるのもビクッとさせられる。
凡庸のようでありながら、こういう仕掛けをこっそりとやってくれるから、シューリヒトは面白く凄い。
サーやるぞ、と構えるところが一切ない自然体の美があるようだ。

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ヴィルマ・リップ(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
マレイ・ディッキー(テノール) 
ゴットロープ・フリック(バス)
エリザベート・ブラスール合唱団
パリ音楽院管弦楽団
カール・シューリヒト指揮
録音:1958年3月4&5日、5月27~29&31日、サル・ワグラム(ステレオ)HMVC-7001

これは以前はモノラルでしかはÞる倍されてなかったが、最近ステレヲ盤で発売されたもの。
1958年録音だから疑似ステの可能性もなくはないが、そんなことよりも演奏の素晴らしさのほうに注目すべきだろう。

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どうしても挙げておきたいのはコンヴィチュニー盤。
全集盤と全く同じ録音だが、マスターリングが異なり此方のほうがリアリティがある。
ゲヴァントハウス管弦楽団の渋さのみならない、上手さがよりよく伝わるものだ。
たぶん廃盤になって知っているが、コンヴィチュニーファンは中古で見つけたら購入しておいて損はない。


by noanoa1970 | 2012-05-19 16:10 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(3)

Commented by Abend5522 at 2012-05-20 15:40
sawyer様、こんにちは。
ヤノヴィッツの声は、天空から覆い被さるヴェールのようですね。
ルートヴィヒ盤は隠れた名演だと思います。ズートハウスがテノールを歌っているのも魅力的です。
Commented by noanoa1970 at 2012-05-20 16:36
Abend様、こんばんは
ルートビッヒ盤ソロの実力がそろった良い演奏だと思います。焼成はズートシムズしか知りませんが、他の3人もなかなかのもののだと思っています。先ほどまた聞いてしまいました。ヤノヴィッツは第9もさることながら、R/シュトラウスの「4つの最後の歌」が素晴らしすぎです。

Commented by noanoa1970 at 2012-05-20 16:50
HABABIさんの記事を読んで、今初めてモントウ盤の解説を見ました。白内障で読むことができませんでしたので・・・・
クルト・リストさんのものを訳したものが記載されていますのに、改めて驚くとともに地9っ栗読んでみようと思います。
またオケの配置図が記載されているのも初めて知って驚いています。
解説やブックレットは最近は非常につまらなくくなりましたが、過去には素晴らしいものがあったことを実感しました。

次回からは正統派ブラームスという事に致しましょう。
これも番号順に行くことにします。
なにが出てくるのか楽しみです。