コンヴィチュニーの「ワルキューレ」
タイトルから、最近話題の多い「ペーター・コンヴィチュニー」が演出したものを想起される方がほとんどであろう。
しかしそうではない、「ペーター」の父親の「フランツ・コンヴィチュニー」が、イギリスのロンドンにて公演をしたときの、レア音源が復刻されたものなのだ。
1959年、東ドイツはおそらく国の威信をかけた形で、文化芸術の担い手を、西欧諸国に派遣した。
コンヴィチュニーのロンドン公演も、其の一環であったのだろう。
そして、コンヴィチュニーは、こともあろうに、得意にしていたワーグナの「指輪」全曲を、オペラ演奏専門のオケ、コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団と、放送用に録音したのだった。
其の音源は、残されたテープの…おそらくはAM放送された音源からの録音らしく、状態が良くないためか、そのテープが個人所有にとどまったためなのか、いままでこの世に出ることはなく、「指輪」全曲を演奏ことは、コンヴィチュニー愛好家でもほとんど知らないことであった。
しかしその欲求は長い間実現することはなかった。
ただ、その間、コンヴィチュニーのレア音源が少しではあるが復刻されつつあったから、微かな期待を抱いてはいた。
そうするうち、トリスタン、マイスタージンガーが発売され、そんな折CDショップの検索欄からたどり、「ワルキューレ」発売を知ることとなった。
シャルランについては、いずれUPするつもりだ。
それにしてもこの「ワルキューレ」の出演者は凄い。
ヴァルナイのブリュンヒルデにホッターのヴォータン噂ではヴィントガッセンも・・・おそらく「神々の黄昏」に出演と思うが・・・
ジークリンデも、フンディングも素晴らしい。
ワーグナー歌手が勢揃いの、どのような経緯でこのような公演が実現したのか、興味は尽きないが、いまのところ情報は何もない。
「ラインの黄金」には、1959年9月のことと記載があるから、「ワルキューレ」演奏も、そう離れてはいないはずだ。
イギリスの放送用録音テープが残されてないのは残念で、この時期にはカイルベルトがステレオで「指輪」全曲を残しているぐらいだから、内容がすばらしいだけに、もう少し良い状態であったなら、わだいになったはずである。
しかし実に音質は醜く、SP録音からの復刻よりも状態は良くないし、所々、音量がちいさくなるところもある。
そしてテープ保存状態が良くなかったのか、ずい所からエコーが聞こえてくる。
音質が悪いから、ワルキューレのファンや、たとえヴァルナイのファンでも、相当にがっかりするであろうが、小生にとっては、コンヴィチュニーの「指輪」の中でもいちばん聞きたい「ワルキューレ」が聞けるのだから、これは堪らない。
公演前にどれだけ練習を積んだのだろうか。
歌手とオケの息は、手兵のゲヴァントハウス管弦楽団ではないにもかかわらず、見事なほどピッタリあっていて、おそらくは短時間の練習だったと推される割には、合唱人もろもろすばらしすぎる出来栄えである。しかもライヴなのだから、これはもう脱帽である。
残された録音を聞く限りであるが、コンヴィチュニーは、かなりむらっ気があるようで、ライヴではすばらしい出来のときと、そうでないときがハッキリしている様だ。
しかし、「ラインの黄金」、「ワルキューレ」を聞く限り「指輪」全曲がいかにすばらしいものかを想像するのに難くない。
決してお勧めなどはしないが、これはコンヴィチュニーが残した音源の、白眉であるといっても過言ではないだろう。
ラモン・ヴィナイ(ジークムント)
アストリッド・ヴァルナイ(ブリュンヒルデ)
ハンス・ホッター(ヴォータン)
クルト・ベーメ(フンディング)
エイミー・シュアード(ジークリンデ)
ウルズラ・ベーゼ(フリッカ)、他
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
by noanoa1970 | 2010-08-23 10:05 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)