興味は大きく2つあって、1つはマズアはかねてから第9の女性パートに、少年少女合唱団を、起用していて、本公演でもそうする旨伝えられていたこと、そして第2楽章のティンパニをディミヌエンドさせているのが今回見られそうなことである。
マズアは82歳という年になって、その指揮ぶり・・・楽曲解釈が変化したのではないかかと、期待と不安を持って臨んだのだが、その心配は見事に裏切られた。
やや早めのテンポで音楽を造り、ほとんど・・・かなり細かいものは見受けられるのだが、インテンポで通していた。
3楽章は指揮者によっては、抑揚をつけてオケを歌わせるものがあるが、マズアは、かなり即物的に音楽を進める。
このようなスタイルの演奏は、録音されたものを何回も聞くには良いのだが、ことライブでは少し物足りなさを感じるだろう。
30年ほど前のゲヴァントハウス管とのスタジオ録音と、さしてその解釈に変化はないようで、マズアの第9の演奏スタイルが昔と同じように、したがってその姿勢や解釈に微塵もたじろぎがないということであろう。
N響は技術的にはとても素晴らしく、世界的水準レベルに達しているとは思うが、この演奏では、かなりクール。
今の季節これだけの慣習と総勢200人以上の大舞台なのだから、もう少し熱いものが感じられてもいいのではないだろうか。
しかし言いかえれば、熱くなる心情を通り越したところにある、プロなりの客観性が出た演奏ともいえよう。
マズアの指揮ぶりは、大仰なところは一切なく、指揮棒も使わないから、派手さは全くない。
年のせいかというと、そうでもなさそうで、指揮台のバックガードからかなり離れたところ・・・オケに1番近いところに立っての指揮であった。
マズアは、口でも指揮をする。
そして各パートへの指示がかなり細かいことが特徴だが、後はほとんどオケに任せているような気配が漂う。
2楽章のティンパニは、やはりディミヌエンドしていたが、奏者はかなり苦労すると思われるが、難なくこなしていたのはさすがであった。
テーネの歌い方は「G-F」で、小生の好みの方法だ。
一番心配した邦人のソロは、全員高水準で、最初に出るバリトンは、高域に少しだけ難があるものの、最近ではベストに入る出来栄えとお見受けした。
テナーもほとんど崩れがなく、この難しいパートを高水準でこなしていた。
それに引き換え、女性ソロ陣は少々焦り気味なのか、上がり気味なのか、多分本領を発揮できずに終わった感があった。
さて総じて素晴らしかったのだが・・・
小生が1番ガッカリしたのは、せっかく起用した少年少女合唱隊だ。
といっても、彼らの技量のことではなく、せっかくの起用の意図らしきものが発揮されず、まったく効果的でなかったこと。
したがって期待した少年少女合唱の、レスビブラートの天国的あるいは宗教的静謐さの声が、大人の声に同化されたのか、あるいは埋もれてしまい、これでは非音楽的意味しかない結果となってしまった。
これは少年少女合唱隊では数が不足したので、通常合唱団に彼らを加えることでの妥協の産物なのだろうか。
それともこの大舞台を経験させたいとの思いやりなのだろうか。
この場に参加した彼らは、一生思い出として残るであろうし、今後成人しても合唱をやる人も多いだろうから、そういう意味では、良かったことになろう。
少年少女合唱を、とても期待しただけに、残念なことであった。
それにしてもマズア・・・こんなにもザッハリッヒな指揮者だったかと、これから手持ちの音盤を聴いて確認してみることにした。
# by noanoa1970 | 2009-12-26 14:45 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)