疑似ブラインドテスト

ソムリエを筆頭とする、あるいはその筋の食通、フードラーター、評論家といわれるようなプロが、自分の味覚をアピールすることは多い。

先日もあるプロのブログで、手打ち蕎麦を食して、その蕎麦の産地や銘柄を当てたというように書かれてあったから、これには驚いた。

もしこのことが真実であれば、その吾人は人間業とは思えないほどの味覚神経の持ち主ということになる。

同じ所で収穫された玄蕎麦であっても、天日干しの加減、挽き方、繋ぎの有無あるいは種類、使用する水、蕎麦粉保存の温度管理状態、いつ収穫された蕎麦かなどなどで、味が変化してしまう。

だから「すぐれたベテランの蕎麦職人でも、一度たりとも同じ蕎麦を打つことができない」
誰でも少し練習すれば、蕎麦は打てるが、このあたりが蕎麦打ちの難しさをあらわすものであろう。

ところがこの吾人、蕎麦を食して蕎麦の産地と蕎麦の種類を当てたというのだ。

小生がかつて、長野県南安曇郡奈川村で、蕎麦栽培をやった時知ったことだが、蕎麦作りの達人の蕎麦は、東京は麹町の(今でもあるか否かは未確認)・・・場所柄訪問客は、政財界の人が多いと聞く店に出荷されていた。

もし小生がその店に行って、蕎麦を食し、「これは奈川村の在来種の蕎麦だね・・・」と、さも味で判断したように見せかけて言ったらどうなるのだろう?

店の亭主は「あの人はすごい味覚を持っている、凄い蕎麦通だ」という評価を下すかもしれない。

まさかとは思うが、そのブログ主、事前に情報をキャッチしたうえで、「ヤラセ」ネタのように、自己アピールのためにそう書いたのだろうか、とかなりの疑いを持ってしまう。

通常では、蕎麦の産地や蕎麦の種類を絶対的に当てることは不可能だ。
しかし相対的に・・・比較する対象がそこにあれば話は別で、ソムリエや日本酒の鑑定評価はそんなものだろう。(それでも、有名人にワインや楽器比較させ、どちらが高額のものかを当てさせるEV番組で、ほとんど当たらないことが多いのは、相対的でも家内難しさがあることを物語ることだ)

小生はかねてから思っていることがある。
それは、その筋の食の達人といわれている、あるいは自分をその立場に置いている人を集めて、「食のブラインドテスト」を実施してみたい…と言うことにつきる。

結果はほとんど消えているようにオムのだが、それでも人間の味覚神経は、奥が深そうだから、本当の味覚神経を持つ人が存在する可能性もある。
反面、今まで「おれは味がわかる・・・しかも絶対的に」と豪語した人間が、そうではなかったということもわかるから、このことが「タブー」でないのなら、やってみると面白いだろう。

ワイン通のソムリエ、日本酒鑑定師、蕎麦通、フレンチ、イタリアン、日本食などあらゆる分野の「食」の世界に存在する、評論家、ライターなどは、そういうことで正しく淘汰されうるのではないだろうか。

このことは「食」だけではなく、「音楽」「骨董」など芸術においても、当てはまること。

その昔はオーディオの世界では「ブラインドテスト」なるもの・・・これも本当の意味ではないのだが・・やっていた記憶があって、それなりに信ぴょう性を確保できたようであった。

このことは、とりもなおさず「取り持ち評論」「癒着評論」をなくそうとする、一種の・・・見せかけ的ではあったとしても、今現在よりはましな世界があった。

前置きがが長くなったが、小生自身の「ブラインドテスト」をやってみようという気になり、購入したままほとんど聞いてなかったCD・・・「20世紀のマエストロ」というセットに着目した。

d0063263_10294024.jpg
10年ほど前にCDショップに格安で並んでいた40枚のCDに収録された、1940年代半ばから50年代終わりまでの、「巨匠」といわれる指揮者のものを集めたもの。

すべてがモノラル録音で、音質は相当悪いものだ。

このCDをランダムに取り出し、プレーヤーに乗せて、・・・もちろんジャケットは見ないようにして、音だけを素直に聞く。

そして印象に残るような・・・小生が素晴らしい演奏であると感じられるものを、メモっておく。
すべて聞いた後に、それが誰の演奏であるかを確認し、今まで自分がイメージしてきたその識者に対するものとの食い違いの有無を確認する。

そんな自身の企画を立てた。

本来のブラインドレストは、演奏を聴いてその演奏家を当てることなのだろうが、しょっちゅう聞いている音盤でやったのでは、演奏者が大抵わかってしまい、自分の実力以外の要素のほうが優っている結果であろうから、それでは意味がない。

それでほとんど初聴きのCDとして、このセットCDに着目した。
はたしてどのような結果が出るのか、楽しみである。

これで蒸し暑くて鬱陶しい7月が楽しく過ごせる。

演奏者は誰か、すぐに知りたくなる欲求を、何とか抑えることが課題ではあるが・・・・
[PR]

by noanoa1970 | 2009-07-10 10:21 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)