未完成交響曲と魔王の秘密

ブルックナーの4番を立て続けに聴いたので本当に疲れた。

この間から書いてきたコンヴィチュニー盤の、オケの取り違え事件は、どう考えても、そんなに単純なものではないように思えて仕方がない。

やはりオリジナルマスターテープの補修をして作られた、サブマスターの存在が大いに推測される。

ブルックナーの交響曲は、そのほとんどに「ブルックナー休止」と呼ばれるゲネラルパウゼがある。
したがって、テープを繋いでの補修は、他の作曲家のものより、相当やりやすかったのではないだろうか。

「パウゼ」のある個所の、1楽章2楽章が怪しいと思うが、まだそれは検証できないでいる。

長大な交響曲を、例え1・2楽章が中心だったとはいえ、3種類も聴くと、やはり精神的にも、肉体的にも疲れる。

ブルックナーの交響曲は、それでなくても、聴いた後の疲労度が高くなる音楽だ。

それで箸休め・・いや耳休めにシューベルトの「未完成交響曲」を取り上げ聞いてみた。
先日聴いたムラヴィンスキーの演奏を、リトレースする目的もあったからだ。

「未完成交響曲」は未完成であるがゆえに、古くから特別な存在の作品として扱われてきたようだし、曲想からしても魅力的な作品であることには異論はない。

この楽曲に対する思いや、曲想から想起するイメージは、千差万別である・・・というわけではない。

1楽章の暗くて地の底を這うような序奏に始まり、第1主題へ続くが、この主題をどのように感じ思うかは人によってかなり違い、また演奏によって喚起されるものが違ってくる。

小生はテンポが緩やかで、暗いトーンの演奏の場合特に、時として、血の底から這い上がり、瀕死の状態で、足取りも重く歩いて行くような感じを持つことがある。
3拍子であるにもかかわらずである。

困難な行方をなんとか克服して、やっとたどり着くと、そこに見つけることが出来たのが、一筋の光明。

それが第2主題によって表現される・・・そんな感じを持つこともある。

序奏を「墓場」第1主題を「苦悩」第2主題のテーマを「愛」とする識者も存在するぐらいである。

このように、未完成交響曲にはシューベルトの、相反する内的精神の不安定さがあるとされ、明るさと暗さそして「デモーニッシュ」:悪魔的とか、鬼神に取りつかれたようなとの意をこめて表現されることもある。

このことは、演奏によってかなり顕著に違いが出てくることが多く、ムラヴィンスキーは、まさにシューベルトの持つ暗黒面をも表出するかのような演奏であった。

この反対に位置する演奏が、ブルーノワルターの演奏で、昔からこの演奏を聞いて育ったものだ。

しかし、小生はあることを知って、しかもそれは、ものすごい衝撃だった事を覚えている。

ある外国の音楽研究者の論文に、未完成交響曲の中には、同じシューベルトの有名な歌曲「魔王」に出てくる旋律と同じものがある・・・そのようなことが書かれてあった。

同じ旋律をいろいろな楽曲に使うということは、決して珍しいことではなく、ベートーヴェンもやっていたことだから、それだけなら別に驚くことはないのだが、ワルターを聴いてきた耳の「未完成交響曲」に、あの少しおどろおどろしい・・・悪魔に導かれて子供が死に至るというストーリーの「魔王」と同じ旋律・・・そうなると、よくある旋律の流用でも、かなり趣が違ってくる。

それで「未完成交響曲」と「魔王」を何度も聴きこんで、納得できたのが、「未完成交響曲」の1楽章第2主題と歌曲「魔王」の、病気の子供を馬に乗せて医者のもとに走る時、柳の影から出現した悪魔が、子供に対し甘い言葉で「こっちにおいで」と誘惑するところ。

この2つの旋律は同一のものであると確信できた。

「未完成」は3拍子、しかし「魔王」は4拍子だから、かなり注意して聴いてないと聴き逃す・・・小生も何度か聴いてやっとわかった事だが、同じ拍子に置き換えるとほとんど同じ旋律であった。

未完成第2主題は「愛」であるとする識者もいて、そしてそれは別に否定されるべきことではないが、この事実意をもし知ったら、はたしてその後も、「愛」であると言い続けることができるだろうか。

小生はこの事実を知って以来、「未完成交響曲」は優しい美しい静かな曲としてきた既成概念から解放されたような気がした。

そしてムラヴィンスキーの演奏に巡り合ってしまったから、もう後は何をかいわんやである。

過去のブログにもこのことを若干書いたが、聴いてわかりやすいように、YOUTUBEの動画が見れるようになったから、貼りつけておくおことにした。

少し長いのでそれぞれに其の個所を示す時間を表示したから、その部分を念入りに聴いていただきたい。

はたして同じ旋律に聞こえるでしょうか。

まずは「魔王」から
開始から3:00あたりのところ、悪魔が甘い声で子供を誘惑する所だ。
演奏は、Anne Sofie von Otter Claudio Abbado Chamber Orchestra of Europe



次に「未完成交響曲」
開始1:40当たりに出る第2主題を聴いていただきたい。
そして2つを同じ拍子にすると、わかりやすいと思う。
演奏はthomas schippers


おわかりになられただろうか。
[PR]

by noanoa1970 | 2009-06-29 14:41 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)