残っていた音楽の精神性・・・メニューインのバッハ

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少し朝寝をと、簡易ベッドの上で横になった時、何を聞こうかと選んだのが、イエフディ・メニューヒン・・・小生はユーディ・メニューインという呼び名を長いこと使用してきた・・・の、「バッハの無伴奏バイオリンソナタとパルティータ」をとりだした。

この録音、もう10年余り聴いたことが無かったが、なぜ聴かなくなったかといえば、何かのついでになど絶対に聴いてはならないもの。
すなわち
ある意味において、別格の存在であったからである。

世の中には、対峙して聴くべき音楽とそうでない音楽があるが、これぞまさに、禊までは必要ないだろうが、姿勢を正しくし、キチンとスピーカーに向かって聴くべき音楽そして録音の数少ない1つであった。

ところが…かつて持っていたそのような気持ちをどこかに追いやって、何を思ったのか、BGM的に・・・
聴きながら心地よく眠りに就こうと考えたのがそもそもの過ちだった。

最初の音が出た直後から、CD1枚が終わるまで、眠るどころか、思わずベッドから起き上がって真剣に聴いてしまったほどの、やはりすごい音楽、そして演奏なのだということを再認識させられてしまった。

メニューインが残したこのバッハの曲は、戦前1934年5月~1936年2月、戦後に録音したモノラル盤そして比較的近年1973年3月~1975年7月のステレオ盤があるが、小生は1956年9月&1957年5月録音のもので聞いた。

メニューインは、 1916年4月22日ニューヨーク生まれとされるから、この録音はメニューイン40歳当時の録音ということになる。

10歳で神童と言われ、18歳でバッハの無伴奏バイオリンソナタとパルティータ全曲録音までしたメニューインについて、彼の音楽以外の世界についても語られているものを発見した。

ラビ・シャンカールやグラッペリとの共演の話はかなりわれわれの間でも有名になったが、正直彼について、あるいは彼の音楽についてはあまり詳しくは無く、他にはフルトベングラーとの共演でしか知らなかったが、下の記事を読んで、さまざまなことが分かった。

「ある自由人の死/ユダヤ人メニューイン逝く」と題された翻訳家萩谷良氏の文章。をネット上で発見したので参照ください。

好不調の差が激しい演奏家であるということだが、このバッハは彼が絶好調時のものであろう。

3種類ある録音の中では、世間の評価は低いほうであるが、小生の耳には決してそうでなく聞こえるのだ。

恐らくこの評価は録音にかなり依存するものではないだろうか。

戦前の録音は、音の悪さは推して知るべしなのだが、18歳という若さと、戦前の録音にしては音が良いというところから、これを第1位に推す人がいる。

70年代のステレオ録音はその逆、音もまあまあ良いし、バイオリニストとして一般的には脂がのってくる50代後半60代の録音だ。

その中間となる・・・モノラル録音で、しかも並みの装置と耳では、その良さが伝わらない可能性が高いと思われる録音が犠牲になってしまった。

よく観察すると、曲の後半・・・特に2番のソナタ2.3楽章になると、それまで張りつめていた・・・精神的なものが一瞬無くなって、情感が激しくほとび散るようなところが散見される。

感情の起伏の軌跡が感じられて、小生は好ましく思うのだが、恐らくはこのあたりが「波」とされてしまうのだろう。

メニューインのバッハを寝ころんで聴こう・・・そんな大胆不敵な試みが、もろくも崩れ去った瞬間であった。
しかし小生は、それで良かったと思っている。

音楽に精神性を求めて、それを得ることができる下地が、まだまだ残されていることに感謝の日曜の朝であった。
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by noanoa1970 | 2009-06-14 13:53 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by 東北のバイオリン好き at 2012-11-22 22:26 x
メニューインのバッハ演奏についての記事を拝見して、大変共感致しました。
確かにBGMにこれほど不向きなCDもないでしょう(笑)。またフレージングが滑らかで無いだけに、できるだけ良い装置で、上手く音色を出してやらないと鑑賞に堪えなくもなりかねません。そうして心静かに対峙して、謙虚に音楽が何かを語り出すのを待っていると、何物にも代えがたい体験をさせてくれる演奏です。大自然の恩恵に浴するような、極めて稀なバイオリンだと思います。
補足ですが、2012年9月にEMIから発売された国内盤の音色は、見違えるほど滑らかで、音の深みがよく分かります。騙されたつもりでお聴き下されば幸いです。
Commented by noanoa1970 at 2012-11-23 11:12
東北のバイオリン好きさん、コメント有難うございます。
おっしゃるとおりヴァイオリンの再生は難しいと、小生も思います。
スーク/カッチェンのブラームスのソナタでも、再生装置に寄っては倍音成分のに無機質な音に聞こえますが、spの調整がきちんとできると、素晴らしい音色に変身します。
ご教示いただきました、最新リマスターリング盤検討したいと思います。ありがとうございました。
Commented by 東北のバイオリン好き at 2012-11-24 00:38 x
お返事を載せて下さりありがとうございました。
仙台市にて「弦楽器工房Watanabe」という店を営んでおります。ホームページや仙台なびっく情報ステーションの他に、店名にてブログを二種類開設しております。もしご興味がおありでしたら、暇つぶしにでも御覧くださいませ。
Commented by noanoa1970 at 2012-11-24 05:18
東北のバイオリン好きサン、HPのご紹介ありがとうございます。
大震災は大変だったと思います。その日は息子がサッカーの試合を見に行った前日のこと、産み方面に行って回線を食べるか、のんびり温泉に行くか迷って、結局山側の温泉に行ったので難を逃れました。そんなことと、仙台フィルの関係者だと思いますが「おやじの部屋」という音楽ブログを読まさせていただいてます。
バイオリンの音色をより聴くためにQUAD63というSPを使っています。