推理「神々の黄昏」の後

ご存じのとおり、「ニーベルンゲンの指輪」では、最後の「神々の黄昏」で、ブリュンヒルデは、炎に身を投げ、そしてその結果「ワルハラ」が炎上し、」神族の終焉を迎えて終わる。

神族の永遠の国は、神性をはく奪され、人間となったブリュンヒルデによって終焉を迎えることになるわけだが、このことは「オランダ人」のゼンダの犠牲による、呪われたオランダ人の救済に通じるところがあるのだと思う。

黄昏期の国を抱え、それでも今しばらく国を存続させるために、相当の苦汁をなめるであろうヴォータンとその親族たち。

ブリュンヒルデは、そんな故郷の神族の国をを見ることが耐えられなかった。

自分の手で永遠の安息を神族にあたえること・・・それがブリュンヒルデのヴォータンと神族に対する愛情の最大のお返しだったのでは無いか。

ジークフリートに裏切られたことによって、自ら死を選んだのではない。
またジークフリートが殺害されたから、後追い自殺をしたのでもない。

ブリュンヒルデの自己犠牲による死とワルハラの滅亡
これは今までのストーリーの基軸、輪廻転生の帰結とも思えるのだが、しかし

ジークフリートが薬を飲まされて、ブリュンヒルデを裏切った形で、ニーベルンク族、すなわち小人族であるアルベリッヒの子供ハーケンの義父兄弟の、ギービッヒ族であるグンターの妹、グートルーネと結婚することになるから、輪廻転生はその後も続き、ジークフリートの息子がグートルネのお腹の中にいたと仮定すると、その子は結局アルベリッヒの親戚の子孫であり、ヴォータンの曾孫でもあるということになる。

ワルハラ・・・神族は滅ぶことによって永遠の安息を得ることなったが、ヴォータンが意図した人間族との間に神族の子孫を残すという野望は、天敵小人族とジークフリートの間の子供となって、この先も歴史が続くことになる。

ジークフリートの暗殺によって、ヴォータンが人間界のヴェルゼ族に儲けさせた、ジークムントとジークリンデの双子の兄妹との間の子供による輪廻は崩れるが、アルベリッヒの子孫であるハーケンの策略によって、旧敵アルベリッヒのニーベルンク族の血が入る宿命的輪廻転生となる。

ここにようやく人間界と神界の融合の1歩が始まるともいえるのだ。

ワーグナーの脚本は、そんな推理の可能性をも残す、そういう意味でも素晴らしい。

[PR]

by noanoa1970 | 2009-06-02 16:55 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)