シューベルトの鱒あれこれ

フライフィッシングをやらなくなってからもう10年ほどたってしまっているが、今もなお小生は時々渓流にいる自分の夢を見ることがある。

GWには渓流を求めて、友人と連れ立って中部地方の渓流に遠出したものだ。
魚の姿を見ることができなくても、その土地土地の名物や山菜などにお目にかかれるし、たいていの場合温泉が近くにあることが多いから、釣り紀行というよりも他の楽しみのほうが多かったのだが・・・

渓流が禁漁となった秋に聴く音楽というと、やはりシューベルトのピアノ五重奏「鱒」がふさわしい。
シューベルトの「鱒」の種類を、小生は通常言われるような「ブラウントラウト」ではなく「アルプスイワナ」であると推理した。

狡猾な魚とり専門の業者が、捕獲した魚を売ってお金に換えるには、その美味しさと希少価値から、高額で取引される、美しい姿の高級魚でなくてはならないと考えたのがその理由であった。

そんなことも思い出しながら、本日は「鱒」を聴くことにした。

小生の所有する音盤は以下の4種類
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①イングリッドヘブラー(P)
アッルテュールグルーミオー(Vl)
ゲオルグ・ヤンツェル(Vla)
エヴァ・ツァコ(Vc)
ジャック・カッツオラン(Cb)

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②ギレリス/アマデウス弦楽四重奏団
ライナー・ツェペリッツ(CB)

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③ズスケ四重奏団/ペーター・レーゼル
ペーター・レーゼル(P)
カールズスケ(Vl)
ディートマルハルマン(Vla)
ユルーンヤコブ・ティム(Vc),
ライナー・フッケ(Cb)

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④ベルリン・フィルハーモニー四重奏団(ボリス/キルヒナー/ポゼッガ)
オスカー・ローテンシュタイナー(P)、クルト・ワルナー(Cb)

①はすでに廃盤のようだが若々しく活気にあふれるような演奏で、鱒が水中できらめきながら泳ぐ様子がよく表現される明るめの演奏でかなり気に入っている物。
招集メンバーの割には呼吸がぴったり合っているのもいいところだ。

②シューベルトの音楽にしては、端正過ぎた演奏で賛否両論がありそうな演奏だ。
ギレリスのピアノは「アルプスイワナ」というより「ブラウントラウト」のように、やや野性的で男性的に聞こえる。もう少し前に出るのを抑えてくれたならいいのにと思うことしばし。

③これは小生が最も気に入っているもの。シューベルトの音楽の陰陽をよく表現している。
ズスケは固物のような演奏家だと思われる節もあるが、ベートーヴェンやブラームスのズスケとは違う意柔軟よく表情を見せる。レーゼルのピアノの音は素敵で、鱒が女性の象徴であることを思わせるのに十分だ。
録音も素晴らしくこれは隠れた名盤ではなかろうか。

④フルトヴェングラー時代のBPOのコンマス「ジーグフリートポリス」が率いるベルリンフィルのピックアップメンバーは流石にすべてが統率のとれた演奏を聞かせてくれる。
室内楽団のスタイルには、最初から四重奏団として形成されたもの、オケのピックアップメンバーからなるもの、そしてそれぞれのソロで活躍するメンバーを録音のために招集したものがある。
都度招集型の集団は善し悪しが極端にバラツクことがあるが、そのほかのスタイルの集団にはそれが少ないようだ。本メンバーもご多分にもれずピタリと息があっていて、流石BPOメンバーだけのことはあることを思わせる。

Vnのジークフリート・ポリスはソロ演奏家としてもよい録音を残しており、フリッツリーガーが指揮をしたベートーベンの協奏曲でも卓越した腕前を披露してくれた。
「鱒」は残念ながらモノラルだが、録音自体はよい。多くの演奏を聴きたい方は外せない演奏で世界初CD化として近年復刻した。
晴れわたってはいないがこの連休に聴くのには、明るい感じが漂う①が最もふさわしい。
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by noanoa1970 | 2009-05-03 10:45 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)