昔懐かし
正しくは「へぎ餅」というらしいが、小生は小さいころから「おへぎ」と聞いて育った。
「おへぎ」は、正月のおもちが無くなったころに現れて、火鉢であぶって食べるのが大好きであった。
中でも少し甘い味を付けた桃色のものは、桜の香りがし、焼くと倍の大きさに膨らんで、しかもサクサクしていてとても美味しかった。
ほかには「海苔」と「よもぎ」「胡麻」がある。
昔は黄色のものがあった記憶があり、たぶんそれは粟餅をうすく切ったものだったかもしれないが、今ではなくなってしまったようだ。
「かき餅」というところもあるらしいが、やはり「おへぎ」という呼称は懐かしい。
鏡餅を割った後、細かくしてから油で揚げたものも良く食べさせられたが、小生はあまり好きではなかった。
幼年期はやはり、甘いもののほうが性に合っていたのだろう。
「かきもち」は、「欠き餅」と書き「おかき」ともいう。
『物類呼称』には
「掻餅・・・鏡餅に刀剣をいるるを嫌って、手以ってかく故に、かき餅という。
今刃物を以ってへぎたるを、へぎ餅という」とあるから「おへぎ」とはもともとは、そこから来ていると思われる。
「おへぎ」を焼くのにはかなり注意が必要で、そのまま放っておくとすぐに黒焦げになるし、中途半端に仕上げると、」硬くて歯がたたない仕上がりとなってしまう。
始めストーブに乗せたが、火力が弱く全く焼けなかった。
それでオーブントースターではと、やってみるが、網目が広すぎてウカウカすると、網目から「おへぎ」が下に落ちてしまう。
だから、つききりで見張ってなければ、きれいに焼くことができないから、本当は火鉢が一番なのだ。
今では火鉢を使っている家は皆無であろうから、「おへぎ」は、そのようなこともあって一般的な食品ではなくなってしまったようだ。
でもこれはものすごく美味しい。
小生は大好きである。
今年は1度も囲炉裏に火を入れなかったが、来年は「おへぎ」と「餅」を焼くのに、必ず囲炉裏を活用するつもりだ。
良い炭を手に入れないと!
by noanoa1970 | 2009-03-11 15:54 | 「食」についてのエッセイ | Comments(2)
胡麻は入ってましたが特別な味付けはなく、火鉢であぶると香ばしい素朴な味がしました。油で揚げて作り置きしたものも学校帰りの空腹を満たしてくれました。
よく縁側にムシロを敷き写真の三倍くらいの厚さの「おへぎ」をカルタのように並べ日干ししたものでした。
今は寝たきりで記憶も無くなってしまいましたが、ひととき若かりし頃の母に想いを馳せることができ嬉しかったです。
ありがとうございました。
「猩猩めった」の風習は両方にありましたから。