金の糸車

昨日の交響詩「水の妖魔」のヴォドニークは同じドヴォルザークのオペラ「ルサルカ」の父親であること、西スラブ地方では「河童」あるいは「人魚」であるとされることもあることを付け加えておきたい。

本日は、エルベンのバラードに基づく4つの交響詩より「金の糸車」。

エルベンの原詩より一部を抜粋する。
ヘルダーの「オルフ殿」と似通った雰囲気のあるバラッドである。

森をとりまく、野や畑
来たぞ、ほら、来た、一人の紳士
黒き悍馬に、打ち乗って
ひづめの響き、軽やかに

小屋をめざして、まっしぐら
小屋のまえで、馬から飛ぴおり
小屋の扉を、トン、トン、トン
さあ 開けたまえ、みなのもの

いち早く、わが目のまえに
わが喜ぴを、示したまえ
いで来たりし老婆は、骨と皮
こりゃ、なんと、貴人のお出まし

おまえの家には大変化
所望いたすぞ、わが嫁に
おまえのうちの、まま娘
これは、びっくり、旦那さま

正気でそれを、お望みで
そりゃ、大事なお客だ、大歓迎
とはいえ、あなたは、どなたさま
そもそもわが家に来られたは、なにゆえに

われ、この国の王にして、領主なり
偶然、昨日、選ぱれた
おまえに、銀でも金でも遣わそう
おまえの娘、くれるなら

かわいい、糸つむぎの娘をぱ
おお、なんと、これは王様、おったまげ
こんなこと、誰が夢にも望みましょう
たとえ、あなたさまの慈悲深い

思し召しとは申せども
わたしどもは、それに値するものではありませぬ
それでもしかし、ご進言、どうかお承りくださいませ
よその娘はやめにしてわたしの娘、さしあげます

それはそっくり、瓜ふたつ
お顔の両の目、そのように
その糸、紡ぐは絹の糸
ぱぱよ、そなたの進言、怪しからぬ

余が命ずるままに、するがよい
明日、日が高くなるまえに
おまえの、まま娘をぱ連れて来い
王の城まで、わかったな

以下にはこのような物語が続く。

継母は、自分の実の娘を国王のもとに嫁がせるため、まま娘を森の奥で、実娘といっしょに殺害してしまう。
そして国王のもとには、義姉が嫁ぐことになった。

これを憐れんだ森の魔法使いは、八つ裂きにされた娘の死体を蘇生しようとするが、義姉が隠し持っている手足がないために蘇生させることはできない。

魔法使いは一計を案じ、金の紡ぎ車と交換することを条件にこれらを義姉が成り済ましている王妃から入手する。

王妃に成り済ました義姉が金の紡ぎ車で糸を紡ぐと、紡ぎ車は継母と義姉の悪事を歌い出した。

そこで国王は森へ急ぎ行き、魔法使いが蘇生した娘と再会することとなる。

・・・・これは昔話によくある継母と異父兄弟姉妹の間の争いの話である。
たまたま国王に見染められたことが悲劇となるが、最後は「めでたしめでたし」で終わる。

娘を助けようとする森の魔法使いの存在は、非キリスト教的なものであると思われるから、この話は古代スラブの民話がそのままの形で伝わったものかもしれない。

お金に目がくらんで悪いことをするとバチが当たる
何も悪さをしなかった正直者はきっといいことがある
そんなお話である。

音楽は国王が狩猟をしているようなファンファーレ、森を馬で駆け抜け、娘の家まで急ぎやってくる様子で始まり、一目ぼれを表すのか、切なく甘ったるい旋律もある。

ただこれは、聞かせどころが分散していてかなり長く感じられることもあるから、メリハリの強い演奏が求められる気がする。
しかしさすがはドヴォルザーク、耳になじみやすいメロディと緩急のリズム処理は途中で飽きるようなところがない。
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by noanoa1970 | 2009-01-23 15:15 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)