アルゲリッチのリストを聴いて

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ピアノ・ソナタ ロ短調を聴いて
白秋の「邪宗門」の一説と妙に交差すると思った。

邪宗(じやしゆう)の僧ぞ彷徨(さまよ)へる……瞳据(す)ゑつつ、
黄昏(たそがれ)の薬草園(やくさうゑん)の外光(ぐわいくわう)に浮きいでながら、
赤々(あか/\)と毒のほめきの恐怖(おそれ)して、顫(ふる)ひ戦(をのゝ)く
陰影(いんえい)のそこはかとなきおぼろめき
まへに、うしろに……さはあれど、月の光の
水(み)の面(も)なる葦(あし)のわか芽(め)に顫(ふる)ふ時。
あるは、靄ふる遠方(をちかた)の窓の硝子(がらす)に
ほの青きソロのピアノの咽(むせ)ぶ時。
瞳据(す)ゑつつ身動(みじろ)かず、長き僧服(そうふく)
爛壊(らんゑ)する暗紅色(あんこうしよく)のにほひしてただ暮れなやむ。

さて在るは、曩(さき)に吸(す)ひたる
Hachisch(ハシツシユ) の毒のめぐりを待てるにか、
あるは劇(はげ)しき歓楽(くわんらく)の後の魔睡(ますゐ)や忍ぶらむ。
手に持つは黒き梟(ふくろう)
爛々(らん/\)と眼(め)は光る……

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by noanoa1970 | 2009-01-14 15:08 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by HABABI at 2009-01-15 06:34 x
おはようございます。
これらアルゲリッチの演奏録音の5枚をLPで持っていて、それぞれ素晴らしいと思いますが、特に印象に残っているのはラヴェルの「夜のギャスパール」です。鐘の音を模した部分で、元の鐘の音と、どこかで響いてはね返って来る(木霊する)の音を、ピアノで音量音質を変えて引き分けているところなど、テクニックの凄さに感心します。それ以上に、この不思議な、ちょっと不気味な雰囲気を持つ曲を、月明かりが速く流れる雲に映って碧白くなった夜にも相応しく、異常な感覚で聴くような経験をさせてくれたことを思い出します。
Commented by noanoa1970 at 2009-01-15 10:18
>鐘の音を模した部分で、元の鐘の音と、どこかで響いてはね返って来る(木霊する)の音を、ピアノで音量音質を変えて引き分けているところなど、テクニックの凄さに感心します。
そうですね。小生はこの部分は「水滴」「雨」などと思っていましたが、アルゲリッチの音はもっと硬質でトーンが鮮やかですから鐘の音のように響きます。ラカンパネラなど聞いてみたいですね。ラヴェルは小生大好きですがアルゲリッチの録音が少ないのが残念です。
Commented by noanoa1970 at 2009-01-15 15:05
ひょっとして鐘の音を模したところ・・・絞首台でしょうか?オンディーヌの最初と勘違いしたようです。
Commented by HABABI at 2009-01-15 20:40 x
説明不足で、失礼いたしました。
ご指摘のとおり、「絞首台」のところです。別な鐘が鳴っているようにも聴こえますが、アルゲリッチの音色を変えた演奏からは、反響音として解した方がいいと、何となく思っていました。とにかく、これだけコントロールされた演奏をしていて、異様なまでの雰囲気を表現することが出来るとは。先ほど久しぶりに聴き、改めて感心致しました。