サイケデリック喫茶というものがあった

1967年から8年にかけてだったか、ロック喫茶が全盛となる少し前、JAZZ喫茶と並行して、京都にはサイケ喫茶というものがあった。

河原町三条と四条の間の鴨川沿いの店に、小生は入ったことがあった。
「非合法」「淫微」「アングラ」の香りがプンプンする中で、少し時を過ごしたが、純情だった小生は、すぐにそこを逃げ出したくなった。

連れ立って行ったのは、2浪して大学に入り、同じサークルにいたMで、哲学専攻の男だった。

Mとはその当時からよく一緒に行動することが多く、時間給が高かった京都駅前の深夜営業の喫茶店でバイトをしていて、バイト代が出ると、小生を誘っていろいろなところに連れて行ってくれたのだった。

神戸の高級そうな、ディスコにも行ったことがあり、そこで金持ちそうな男女が「オブラディオブラダ」に合わせて踊っているのを、ハイボールを飲みながら恨めしそうに見たりもした。

オリジナルの、ビートルズのものとは少し違うので、レコードジャケットを確認すると、「マーマレード」だということがわかり、さすが神戸の人間はしゃれている・・・そんな印象を持ったものだった。

思えば、彼が安田講堂の攻防で、最後まで抵抗し、逮捕されるにいたったのも、当時から「意気に感ず」的な感性の持ち主であったことも、要因の一つではないかとさえ思うことがある。

当時は、ごく普通の生活をしていても、ベクトルの違う世界に行くことは、ほんの少しジャンプしさえすれば、難しいことではなかったような気がする。

いまでは当たり前の世界が、当時は未知の世界だったこともあるのだが・・・・

サイケ喫茶での音楽の印象、小生にとってそれは「ハモンドオルガン」の音であった。
精神状態がトリップ、ワープするような感じがあって、浮遊するような感覚を感じることがあったのだ。

よく耳にしたのが、「ドアーズ」。
ジムモリスンの声とハモンドオルガンの音は、小生にとってはまさに「サイケデリック」な世界であった。

さらに、マイナーな存在だったが、「ヴァニラファッジ」というグループが、「シュプリームズ」がヒットさせた「キープミーハンギングオン」という曲をカバーしたもの。

イントロのハモンドオルガンの淫微感、モールス信号のようなリズム、そして異次元からの声のようなボーカルとファルセットの合いの手、もろもろがサイケデリックだ。

ドアーズは多くの曲があるが、中でも「太陽を待ちながら」は、サイケデリックど真ん中と言ってもいいだろう。

ヴァニラファッジとは、ヴァニラ味のミルク、バター、砂糖でできたスコットランドの甘いソフトキャラメルのような歌詞のことだが、ドラッグの隠語でもあるような感じがする。

有名な話だが、ドアーズのネーミングは、オルダス・ハックスレーの『知覚の扉』によるもの。ハックスレーが、18世紀の詩人ウィリアム・ブレークの詩の一節から取ったものだそうだ。

「知覚の扉」の詩は、ドラッグ状態を象徴するかのように思うところがある。

If the doors of perception were cleansed, everything would appear to man as it truly is, infinite. もし知覚の扉が浄化されるならば、全ての物は人間にとってありのままに現れ、無限に見える。


Psychedelicについて以下のような記述があった。
サイケデリックは、幻覚を引き起こすといわれる薬・LSDの服用によってもたらされる症状に似たファッション、音楽、アート、風俗を総称して呼ばれることが多い。光や色、音などの感覚的な認識による従来の表現を打ち破り、人間の自由を得たいというヒッピー思想が各方面に影響したのだが、とくにファッションで用いられる場合は、多彩で夢幻的な感覚をあらわした蛍光色や光沢素材、極彩色の幾何学模様などをさす。サイケデリックの新造語としての起源は明らかではないが、ギリシア語の精神(psyche)、見る(eidos)、または精神に英語のおいしい(delicious)を合成したとも考えられている。1960年代のヒッピーによる発祥から、80年代にブーム再来、以降はブームではなく定着した感がある。

以上のようにサイケデリックとLSDは対となっていたようで、サイケ喫茶で「ラリって」いた人間は、大麻ではなくLSDを吸引していたのだろう。

今では麻薬として扱われているが、日本での使用禁止は1970年になってからのことであった。

小生は、もちろん大麻やLSDは経験がないが、それでも「幻覚」には興味があった。

それで当時「都市伝説」のように流布されていた「紅茶」を吸引すると、トリップする・・・という噂に乗じて、コンサイスの和英辞書の一部を破り、紅茶をまいて吸ったことがあったが、不味いだけで何も起こらなかった、という苦い経験はある。


The Doors - Waiting For The Sun



Vanilla Fudge - You Keep Me Hanging On,1967



「ハモンドオルガン」の音は、小生にとっては「サイケデリック」である。

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by noanoa1970 | 2008-09-16 10:23 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)