Tom Dooley、何故バンジョーの弾き語りで

1958年、それはキングストン・トリオが歌ったTom Dooleyが全米で大ヒットした年であった。

それまで「フォーク部門」が存在しなかったので、第1回グラミー賞で、ベスト・カントリー&ウェスタン・パフォーマンス賞を獲得した。
しかしその後、1962年に「ベスト・パフォーマンス・フォーク」部門が設立され、アルバム「The Kingston Trio At Large」で2回目のグラミー賞を受賞しというからものすごい人気があったわけである。

当然日本にも彼らの歌は輸入され、PP&Mやジョーンバエズを聞く少し前には小生も少なからず彼らキングストン・トリオを聞いていたのである。

Tom Dooleyもその中の1つであったが、当時小学生の高学年ではあったが、その歌の意味するところなどは、少しも理解しようはずもなかった。

「ポ・ボーイ」「バンツゥーダイ」の個所の、どこか侘しげな雰囲気を感じてはいたが、バンジョーの軽快なピッキングのせいで、明るい歌と思っていたのだった。
Hang down your head, Tom Dooley・・・でだしのところ、当時は「ヘダン・ヨーネック・トムドゥーリー」と聞こえていた。

当時TVで最も人気の高かった、三菱電機提供のプロレスの解説などで、「ヘッドダウン」という言葉が耳にあったので、小生はてっきり「頭を下げる」ということ、挨拶でもしているのかと、勝手に解釈したものだった。

あれから50年の現在・・・そして今から15年ほど前、小生の音楽的興味は、クラシック音楽とJAZZに加えて、ブリテン諸島・・おもにアイルランド、スコットランドのトラディショナルフォークとオールドバラッドへと向かうこととなった。

そんな中、アイルランド、スコットランドの恐慌・・・農作物飢饉時代に、海を渡って新大陸に移住してきた移民たちが、アパラチア山脈の麓に住みつき、故国の伝統歌やワークソングを歌い、語ることで、貧しい生活の活力としていったことを知り、それらがルーツで、アメリカンフォーク、そしてブルースが生まれたことを知ることになった。

「アパラチアンバラッド」と呼ばれるものの多くは、ブリテン諸島の伝統歌を、色濃く受け継いでおり、本国オリジナルが既に失われてしまったが、アメリカで残されているものも少なくない。

Tom Dooleyは、そのようなブリテン諸島のオールドバラッドの4行詩スタイルを受け継いで、そしてオールドバラッドでよく語られる「マーダー」:殺人事件を話題にしたものだ。

キリスト教徒の彼らにおいて殺人とは、神にそむく罪悪行為であるから、まして移民たちの集団では、出身地によるアイデンティティや差別などもあったろうから、そんな事件は、瞬く間に広がったことであろう。

本国においては、そういう話は「ブロードサイド」という瓦版屋たちによって、すぐさま全土に広まったという。

アパラチア山脈という、いわば録の孤島に封じ込められた移民たちにとって、殺人事件はあっと驚く非日常の出来事、彼ら移民たちの興味を、ものすごく引いたことであろうことは容易に推測可能だ。

Tom Dooleyは、そんな中、伝説化されたほど有名な話である。

南北戦争時代の南軍の兵士、トム・デューラという男が犯したとされる、人妻殺人は、ノースカロライナ州のウイルクス群、ヤドキン河が流れるハッピーバレイという町で1868年に実際に起こった事件である。

伝説になってしまい、数々の説話があるから、真実はなかなか見えてこないが、おおよそは以下の通りだと、小生は考えている。

トムには恋人が2人いて、彼女たちは「従妹」とも「姉妹」とも両方の説があるが、それはこの際どうでもよいが、アイルランドのオールドマーダーバラッド「クルエル・シスターズ」の例は、姉妹で、妹が恋敵の姉を川に投げ込んで殺した事件である。

片方の女は、トムが戦争に行っている間に、(トムを慕いながら)、他の男と結婚した。

トムは残った片方と恋仲になったが、結婚した片方はトムをあきらめきれなかった。

トムは、両方から愛されてしまい、困ったが、どうも人妻のほうに魅力を感じるようになっていた。

自分と結婚すると思っていた片方の女性、そして妻の浮気を知ったもう片方の彼女の夫。

真相は彼らのいずれかが、人妻の彼女を・・・浮気、あるいは恋敵で、殺したと思うのだが、成り行きはそうではなく、結局トムが殺したということになった。

たぶん「デューラ」を「ドゥーリー」と、愛着をこめて呼んでいるところからは、そのような、真相は冤罪事件だったという推測が可能だし、冤罪はいつの世も多かったし、あの時代のことであるから、捜査も正確さを欠き、冤罪に一層拍車がかかったことだろう。

人妻の夫は、保安官だとも言われているし、教師だとも言われている。
どちらかはともかく、両方共に、当時は権威の象徴であったろうから、ひょっとしたら、権威と権力によって自分の犯行を隠せたのかもしれない。


Hang down your head, Tom Dooley,
Hang down your head and cry.
Hang down your head, Tom Dooley,
Poor boy you're bound to die.
I met her on the mountain,
There I took her life;
Met her on the mountain,
Stabbed her with my knife.

Hang down your head, Tom Dooley,
Hang down your head and cry.
Hang down your head, Tom Dooley,
Poor boy you're bound to die.
This time tomorrow,
Reckon where I'll be?
Hadn't a been for Grayson,
I'd a been in Tenessee.

Hang down your head, Tom Dooley,
Hang down your head and cry.
Hang down your head, Tom Dooley,
Poor boy you're bound to die.
This time tomorrow,
Reckon where I'll be?
Down in some loneome valley,
A hangin' from a white oak tree.


当時の処刑は、白樫の木に下げられた縛り首のロープによる絞首刑であった。

マウンテンはブルーリッジマウンテンという言葉もあるように、キリスト教徒の間では
おそらく聖地の山。

その聖地である山の中腹で、女性刺殺したというのだから、話題にならないはずはなかった。

Graysonというのが、人妻の夫の名前。

彼の手から逃れることができたなら、テネシー州で暮らすことができるのに・・・
とあることから、この歌の背景には、トムに対する憐れみと同情があるようだ。

周囲の人たちは、真犯人が存在するということを、感じていたのかもしれない。

バンジョーの弾き語りで演奏されることが多いのは、トムが兵役の際に、バンジョーを持って行って、よく歌っていたという逸話から来ているものと思われる。

キングストン・トリオのオリジナルは下記にある。
The Kingston Trio - Tom Dooley (1958 Capitol records) Lyrics

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by noanoa1970 | 2008-08-19 17:21 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)