A Little Touch of Schmilsson in the Night

普段何気なく使う音楽関連の言葉に「スタンダード」というものがある。
以前、あるところで、小生のJAZZ「スタンダード」の概念と、相手の概念に大きな隔たりがあって、議論が前に進まなかったことがあった。

恐らく皆さんそれなりに、一応らしきものは、朧気には掴んでいると思われるが、確固とした「定義」があるのか、調べてみると、かなり大まかであることが分かると共に、小生が抱いたイメージと、そんなにも距離が離れてないことを知り、ややホットしたことがあった。

しかし、いい加減なところもあり、諸個人の把握の仕方にはかなりのバラツキがあることを思わせるから、概念認識に相違があってもおかしくはない。

「スタンダードナンバー」という言葉は、このような状態のまま、昔から使われてきたようである。

いまさら何故「スタンダード」を持ち出したかというと、小生が好む昔の録音に「ニルソン」という男が1973年に出したアルバム「夜のシュミルソン、ニルソン」があって、当時その解説には、「ニルソンがJAZZのスタンダードナンバーを歌った・・・」としてあったからである。

ご存知の方も多いと思うが、「ニルソン」というと、「噂の男」あるいは、バッドフィンガーのピートハムのオリジナルをカバーして、大ヒットさせた
「ウイズ アウト ユー」で有名な、風変わりな曲を書いて歌う・・・ファルセットボイスが美しく、恐らく3オクターブは出るというベルベットボイスの持ち主。

小生が現役時代の1997年だったか、あるとき、会社の女子社員が「ウイズ アウト ユー」が大好きで、今覚えているというので、まさかとは思ったが、バッドフィンガーを知ってる?、ニルソンは?と問いかけるも、いずれも答えはNO。

何故この曲を知っている?との問いに、「マライヤキャリー」が歌っていたからとの答えで、時代の流れを再確認させられたことがあった。

「マライアキャリー」までもがこの歌を・・・以外であったが、さもあり何。

彼女によく似合うところもある、広域が伸びきる、美しいメロディのバラードなのだ。

少し前・・・1970年だったか、同様の・・・どちらかというとロック系の(分かりやすくあえてジャンルを固定すると)ビートルズの「リンゴスター」のファーストソロアルバム(だったかな)「センチメンタル・ジャーニー」というアルバムも、スタンダードナンバーを集めたもので、これもよく聞いたレコードであった。

しかし同じ「スタンダード」でも、ニルソンのアルバムとリンゴでは、相当違い、リンゴのそれでは 、殆どが、今まで何回も耳にしたものばかりであったのに、ニルソンでは、初めて聞くものも相当数有ったのだ。

リンゴも、同じように、1920年台~1950年代付近までの、舞台音楽、映画音楽、ミュージカル等から、スタンダードナンバーとされる、下記の曲を取り上げているのに対し、

センチメンタル・ジャーニー
夜も昼も
ウィスパリング・グラス
バイ・バイ・ブラックバード
アイム・ア・フール・トゥ・ケア
スターダスト
ブルー・ターニング・グレイ・オーヴァー・ユー
慕情
ドリーム
あなたはいつも
愛していると言ったっけ
レット・ザ・レスト・オブ・ザ・ワールド・ゴー・バイ


ニルソンでは、「ラグタイムの子守歌」と最後の「時の過ぎ行くまま」しか耳にしたことが無かったので、小生には「スタンダードナンバー」とは思えないところが有った。

スタンダードとは、一般的には長くいろいろなジャンルで演奏され、歌い継がれてきたであろう曲をさすことが多いから、ニルソンの選曲は、過去に聞いてきた所謂スタンダードナンバーからは、少し距離の遠いところがあったわけだ。

しかしこれらの曲は、やはり昔懐かしい雰囲気をこれでもかという具合に味あわせてくれるし、何しろ、ニルソンの歌唱力と、バックの「ゴードン・ジェンキンス」のアレンジがすこぶるよいから、スッカリ小生のお気に入りとなって久しい。

中にはミニ解説にもあるように、出自のハッキリしないものもあるようだが、それはそれ、素晴らしいこれらの曲、そしてこのアルバムの価値とは関係がない。

ヘリンボーン柄のハンチング帽子と、ツイードの上着を着て、・・右手の親指から炎が出ている・・・暗闇あるいは夜の帳の入り口を照らす、炎のような感じでジャケット写真に写るニルソン、当時はデモーニッシュな感じがして仕方が無かったものだ。

35年の歳月を経て、一息つきたい夜には、今もなおプレイヤーに乗せ、針を静かに下ろせる、音盤なのである。

ジャケットも気に入っていて、裏面は、各曲目のミニ解説を、1曲づつオリジナルデザインジャケットのように、イラストされた者が記載されている。
余りにも見事なので、切り取って、1枚づつ貼り付けておくことにした。

英文のミニ解説があるが大体のことは分かると思う。

「ラグタイムの子守歌」はジェンキンスの「オーバーザレインボウ」のメロディがさりげなく挿入されるアレンジが特によい。


「時の過ぎ行くまま」のニルソンの歌唱力にはしばし圧倒される。

「レイジームーン」はジェロームカーンの曲とだけは、分かったが、出自は不明であるのが残念。

d0063263_8461696.jpg
d0063263_8483353.jpg



1. レイジームーン( W.Donaldson / G.Kahn)
d0063263_18163256.jpg


2. フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル
d0063263_18333945.jpg


3. もしあなただったら
d0063263_18171857.jpg


4. オールウェイズ
d0063263_18173542.jpg


5. メイキン・フーピー
d0063263_18174944.jpg


6. 恋のとりこに
d0063263_1818720.jpg


7. ラグタイムの子守歌
d0063263_18181874.jpg


8. 誰とキスしているのかしら
d0063263_18183445.jpg


9. どうしたらいいの
d0063263_181923.jpg


10. ネヴァーザレス
d0063263_18191667.jpg

ショパンの幻想即興曲のメロディがコールアングレで奏でられる冒頭のアレンジ・・・いい。

11. 願いのすべて
d0063263_18194267.jpg


12. 時の過ぎ行くまま
d0063263_18195889.jpg

[PR]

by noanoa1970 | 2008-06-02 18:30 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)

Commented by drac-ob at 2008-06-02 23:17 x
シュミルソン3部作の中でも一番落ち着いたアルバムですね。僕も好きで良く夜遅くに聞いています。ニルソンは過小評価されすぎてるなといつも考えているのですが、最近ようやくCDも再発になり徐々に再評価されつつあるのかと思います。このアルバムのCDにはボーナストラックが6曲も入ってるのでお得です。

そうそう、先日渋谷毅、さがゆき、潮先郁男のライブを見てきましたが、彼らのアルバム「We'll meet again」の選曲もなかなか素晴らしいので、是非こちらもお聞き下さい。
Commented by noanoa1970 at 2008-06-03 10:10
渋谷毅は、浅川マキの「ちょっと長い関係のブルース」でバックをやったピアノマンですね。「本田」は好きではないが、「渋谷」は好きです。80年代の浅川マキのCD全部オークションに出してしまって、失敗でした。もう入手できない・・・・

「プシーキャット」は小生、いまいちで、余り聴くことがありません。「ココナツ、ドクター」を聞いたとき、こいつはなんておかしな歌い手だろうと思った記憶がありますが、後に出るウイズアウトユーで完全にはまりました。しかしなんといっても、「夜の・・」が、小生にとっては最高のアルバムです。