パウムガルトナーのハイドン

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103番「太鼓連打」、100番「軍隊」のカップリング。
見事なリマスターで、音の隅々まで見通せる。
優雅で、美しいそして透明感のあるハイドンである。
太鼓連打の出だし太鼓の音は<   >遠くから聞こえてきた太鼓がだんだん近づき、目の前を通り過ぎていく、そんな動きのあるような音作り。

最近流行の・・・まるで「驚愕」Ⅱ楽章のようにドンと大業にぶちかますよな事はやってないところに、パウムガルトナーの、そしてその時代を感じさせる。

どうも最近の演奏の多くに見られるような、太鼓をバンバン鳴らす演奏に、小生は奇異なものを感じてしまうのだが、これはランドンの新解釈によるものを踏襲する演奏が多いためであろう。

ハイドン時代のオーケストラと聴衆の関係は、C.F.ポールによれば、ザロモンのオーケストラは27~32人の弦楽器に管とティンパニが加わって、およそ40人であったと伝えられ、ランドンによれば、オペラ・コンサートのオーケストラは、60人の大編成で木管はクラリネットを含め各4本であったと言われるようだ。

はたしてこの後期交響曲の演奏会が、どのような形式で行われたかは、正確にはわからないが、この時代はいまだ市民革命がなされていないとき。
聴衆の多くは貴族階級、あるいは金持ちの一部の市民であっただろうから、一般大衆が音楽界に参加することはなかったと推される。

比較的小さな会場での演奏会であったろうから、太鼓連打といって、太鼓を冒頭からドンドンやるのはいかがなものか。
いくら「驚愕」で眠る貴婦人をビックリさせるためといっても、それはそれ。

同じようなことを「太鼓連打」に求めようとするのは、いかにも下世話な話である。
音楽的品位が遠のいてしまうように感じるのは小生だけだろうか。
ユーモアだけの人がハイドンではない。


以下のハイドン時代の聴衆についての言及は、楽譜出版の多さと、大衆市民社会の音楽文化への参加について、批判的なことを述べていると思われる。
筆者は、購入された多くの楽譜が、総譜ではなくパート譜であったという事実から、以下のように言及している。

≪ハイドン交響曲の聴衆のほとんどが教養階級であったという推測は出版の多さによって変動するものではないのです。(大崎滋生:「文化としてのシンフォニー」「オーケストラの社会史」「音楽史の形成とメディア」同じく未出版論文「ハイドン同時代の出版」≫

つまり演奏者として楽譜が購入されたことが正しく、後の時代のように、市民社会が今日教養として、趣味としてピアノを習うようになり、楽譜が売れたのとは違い、貴族社会における宮廷音楽家の増加と、一部市民社会において、出現し始めたプロ音楽家について言及したものと思われる。

当時のオケは、貴族が雇う宮廷オケであろうから、やはり数十人程度だったのであろう。
ランドンのいう、60人規模のオペラコンサートにしても、はたして正しいのだろうかという疑問が膨らむのである。

その観点から、小生はここ最近流行の古楽器による古楽奏法を、現在のような広いコンサート会場で演奏することに、いささか懸念を持っている。

またオケの配置に関して、クラシック愛好家の中に存在する両翼配置信奉者は、「左右のバイオリンの音の掛け合い」が特徴的な曲を例に出して、これを絶対視する傾向があることが多いが、これもまた時代背景・・・聴衆、楽器、コンサート会場などの要素を無視した、いわば宗教的とも取れる人が、かっての巨大クラシック掲示板でも存在していた。

パウムガルトナーは、ハイドンにおいても、モーツァルトにおいても、モダン楽器によるモダン奏法で通している。

ただオケの人員は、恐らくは当時の成員に、より近いものを採用して、中規模以下のホールで演奏をしていたと思われるところがある。
事実、残された録音の殆どが、ザルツブルグモーツァルティウム音楽院内のホールである。

パウムガルトナーの音楽は、そのような音楽的環境にも支えられて、より輝きを増し、精彩を放つヴィヴィッドな音楽を与えてくれた。

ハイドンでは、それに優雅さが加わり、気品あふれる演奏が聞こえてくるのである。
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by noanoa1970 | 2008-04-23 12:27 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by HABABI at 2008-04-25 00:16 x
パウムガルトナー、探したらやっぱりLPを持っていました。ハスキルのピアノで、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番です。オーケストラは私の大好きなウィーン交響楽団です。一体感のある演奏で、深い陰影も感じられ、素晴らしいものです。1954年録音です。
Commented by noanoa1970 at 2008-04-25 09:11
昔フィリップスから発売されたものですか。これは聞きたいものです。手兵以外のオケのパウムガルトナーはとても興味がわきます。
Commented by HABABI at 2008-04-27 05:25 x
私が持っているのは、fontanaレーベルの廉価版で出ていたMONO録音です。B面に23番(ザッヒャー指揮)が入っています。
Commented by noanoa1970 at 2008-04-27 09:36
fontanaは小生にとっても懐かしいレーベルです。最初のコンヴィチュニーのベートーヴェン交響曲全集LPは、このレーベルの廉価版で購入しました。LP1枚にちょうど収録可能だったからでしょうか、20番と23番のカップリングは、何故か昔から定番だったようですね。