ベートーヴェンの秘曲を聞く

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秘曲とされるものの多くは、実際に聞いて見るとさほどよろしくないものが多い。
しかしあのベートーヴェンさんならどうかと、数年前に入手した秘曲全集を取り出し改めて聞いて見ることにした。


モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」の「もし伯爵様が踊るなら」による12の変奏曲ヘ長調(12 Variationen uber das Thema "Se vuol ballare...")WoO.40(1793/1793出版)[vn,p]

モーァルトのフィガロで歌われるおなじみの曲を、ベートーヴェンが、どのように料理しているか、これは大変興味がある。

曲はまず、弦のピチカート(にも聞こえるがピアノフォルテかもしれない)であのメロディが奏され、次にピアノが加わる。
少し変化させた繰り返しを行い、印象付けガ終わったあと、
3曲目になると、今までの基本メロディラインから、ベートーヴェンの真骨頂ともいうべき、大胆な変奏曲となる。

第5変奏を過ぎると、短調になって、曲想を変化させていき、チェロとピアノが活躍する終盤に入っていく。

ピアノは中期のピアノソナタをも思わせ、ヴァイオリンが活躍するヴァイオリンソナタの体をも見せながら、ピアノが主導権を握るピアノとヴァイオリンのためのソナタ風に変わっていき、締めはまたあのピチカート(ピアノフォルテ)でモーツァルトのメロディが再現されて終わる。


2・3曲目は、ピアノとマンドリンのためのアダージョそしてソナチネ。
ベートーヴェンが、マンドリンという楽器のための曲を作っていたことは余り知られていないし、ましてその曲を聴いたことのある人は、相当のクラシックファンでもそう多くは無いと思う。

これは聞いていてとても楽しい楽曲。
ナポリなど地中海の雰囲気を強く持ち、時にはヴィヴァルディを髣髴させるようなところがある。

ベートーヴェン臭さが全く無い能天気な音楽だが、小生は気に入ってしまった。


4曲目に収録されるのは、またも変奏曲。

ヘンデルのオラトリオ「ユダス・マカベウス」の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲ト長調(12 Variationen uber ein Thema "See the conquering hero" aus "Judas Maccabeus" von G.F.Handel*)WoO.45(1796/1797出版)[vc,p]

この曲もおなじみ、表彰式などでよく演奏される昔は「ユダ・マカウベス」と呼ばれることが多かった曲。
オラトリオ事態を全曲聞くことは無かったが、この曲だけは別格。
昔から耳に馴染んでいた曲だ。

「ユダ」とはあのイエスを裏切った「ユダ」とは異なる人物だと知ったのは、そう昔のことではない。

一つ一つが物凄く短い変奏曲なので、アッという間に終わってしまうが、チェロで奏される主メロディは、とても高貴感が漂い、ベートーヴェンは、それをさらに崇高のレベルにまで引き上げている。

5曲目は、音楽時計のための5つの小品(5 Stucke fur eine Flotenuhr*)WoO.33(1799/1902出版)から3曲を、パイプオルガンが演奏する。
ハイドンは、交響曲第101番のメヌエットと交響曲第99番の終楽章を、1793年に音楽時計のためのものに編曲しているから、ベートーヴェンが、それに習ったものなのかもかもしれない。

またコダーイは、 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」の中で「ウィーンの音楽時計」という曲を作っているから、当時は音楽時計は相当有名で、感嘆すべき名物の一つだったのではなかろうか。

音楽時計とは 、一言で言うと、オルゴールつきの時計ともいえるもののようだ。

ベートーヴェンの作曲になるものは、当時実際に寺院等の建物に有った音楽時計が歌ったメロディを借用したものなのかは、定かでないが、パイプオルガンの高い音で奏されるこの曲を聞くと、いかにもオルゴール風に聞こえてきて、当時ドイツやオーストリアの人々が聞いていたことを想像させる。

後に続くのはオーボエとイングリッシュホルンのための、モーツァルトのドンジョバンニによる主題と変奏、そしてピアノとフルートそしてファゴットのための3重奏曲でこのアルバムが終了する。

殆ど聞かれないこれらの曲だが、さすがにベートーヴェンともなると、侮れないものを十分に持っている。

この全集は全9枚のCDで構成されており、ヴァイオリンをピアノに置き換えた協奏曲や、オリーブ山のキリストなど、秘曲ともいえないものも収録されるが、今後もまた何か新しい発見が出来そうで、楽しみである。

ベト7の終楽章がアイルランド民謡から借用したことも、ベト8に引用されたのが、カノン「タタタ」であることも、横丁のサリーを編曲していることも、すべてこの全集で知ったことだ。

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by noanoa1970 | 2008-04-04 08:37 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)