嫌いも好き、好きも嫌い

いささか矛盾するようなタイトルであるが、小生はボブディランが大嫌いである。
しかし嫌いなのは、ディランの歌い方であって、その曲ではないから、嫌いであり好きなのだ。

小生が始めて聞いたディランの曲は、ディランオリジナルではなく、PPM・・ピーター、ポール&マリーのフォークトリオの「風に吹かれて」だったが、その当時はボブディランの名前も、そしてオリジナルのディランの歌も聞くことは無かった。

その後、しばらくしてから、美声フォークシンガーの元祖、ジョーンバエズのアルバム・・・(これはLP2枚組みで発売された)「バエズディランを歌う」を、入念に聞き込んでからボブディオランに興味を持ったが、ディランの歌唱法には馴染めなかった。

それは・・・どちらがオリジナルなのか分からないほどに、ディラントーン風に脚色されていて、オリジナルをカバーしたほかの歌い手の歌のほうが、オリジナルのディランと比べ、ずっとメロディアスで美しく、当時の小生には音楽的であったからだ。

言い換えれば、ディランオリジナルの、あの不完全終始的な歌唱法には、券を館さえ持っていたのである。

殆ど・・・周りの人はディランの歌が「よい」という。
しかし小生はディランの歌をディラン以外が歌ったものに、良いものは多いが、ディラン本人の歌は、長いこと全く評価していなかったのが事実であった。

ところがそのディランの歌い方が、そんなにイヤでなくなったのが、「バングラデシュ難民救済コンサート」の映像を見てからで、それはクラプトンやハリスンといったロック畑の名手達と一緒に出演し、にこりともしないそして苦虫を噛み潰したような顔と声で、しかし真摯に歌った姿を見たときからであった。

ディランの歌は、彼の単独アルバムで聞くより、ザ・バンドとの「ラストワルツ」やアルバム「偉大なる復活」での者が小生の好みに合っていて、それは多分あのいやらしい歌声が、オムニバスでは緩和され、他の歌い手の歌が一服の清涼剤となるからなのだろうと思う。

そんな中、どうしても上げておかなくてはならないのが、「ボブ・ディラン 30年記念:トリビュート・コンサート」である。

1993年に開催されたこの大々的なコンサートは、翌年NHKのBSで放送され、小生はその映像をVTRに収録し、宝物のようにしてそれを楽しんだ。

このときの出演者は以下のとおり、よくもこんなことが可能だったと思わせるような、音楽界の凄いメンバー達が、ジャンルを越え、所属の音楽事務所を越えて、ディランのために集まった。

ジョン・メレンキャンプ
クリス・クリストファーソン
スティービー・ワンダー
ルー・リード
エディ・ヴェダー
マイク・マクレディー
トレイシー・チャップマン
ジョニー・キャッシュ
ジューン・カーター・キャッシュ
ウィリー・ネルソン
ジョニー・ウィンター
ロン・ウッド
リッチー・ヘヴンス
クランシー・ブラザーズ
トミー・メイケム
エリック・クラプトン
オージェイズ
ロビー・オーコンネル
ロザンヌ・キャッシュ
メアリー・チェイピン・カーペンター
ショーン・コルヴィン
ニール・ヤング
クリッシー・ハインド
ザ・バンド
ジョージ・ハリスン
ロジャー・マッギン
シニード・オーコンナー

これだけのメンバーが時には司会をやり、時には一人で、また時にはメドレーでディランオリジナルの曲ばかりを演奏するのだ。

トラッド、フォーク、ロック、カントリー、R&B、朗読、JAZZ・・・クラシックを除くほぼ全ジャンルからそして全ジャンルの編曲によって、ディランが聞ける凄いコンサートである。

当然VTR録画の画質よりはいい、DVDで発売されていると思い、購入をと思って調べたが、発売はCDにとどまっている。
発売するとするならば、恐らくSONYだろう。
いまだにDVD化されないのは大きな損出であるから、早くDVD化し、折角の偉業を世に知らし召して欲しいものである。

このコンサートで実は、とても驚くべきことが起こっていて、以前のブログでも少し触れたが、それはアイルランド出身の、当時はスキンヘッドにしていた、超美人歌手シンニード・オーコンナーの登場のときに起こったものだった。

「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」を歌う予定だったシンニードは、聴衆から沸き起こったブーイングによって、ステージから半ば追放された。
その原因とは、二週間前にNBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ」に出演した彼女が、ボブ・マーリーの「ウォー」をアカペラで歌い、そのときローマ法王ヨハネ・パウロ2世の写真を公衆の面前で破り捨てたからというものだったという。

観客のブーイングに妙ながら、憎むべきは「幼児虐待」と彼女は叫んでいたが、ローマカトリックが堕胎禁止を宣言していたことと、幼児虐待は、突き詰めれば、同根であろうから、彼女の反ローマカトリックの原点はそこにあるのかもしれない。

しかしこの行為は、プロテストソングを多く作ってきたディランのコンサートの観客なら、理解してくれるはずと思った彼女の期待を大きく裏切ることとなり、多分彼女は以外だったのだろう、ブーイングにしばらくあっけに取られていたようであったのが印象的だった。

ディランは、もうすでに初期のディランから、本人はどうかは分からないが、大きく変貌した。

観客はあの初期のディラン信奉者だけではなかったのだ。
それほどにまで、ディランのオリジナルは、いたるところでアレンジされて、新しい生命を保ち続けていたのである。

これを幸せと見るか不幸と見るか、恐らく意見は大きく輪かけることだろう。


方々から彼女へ猛烈なバッシングが沸き起こったこ国、これぞまさしく保守の国、これがアメリカなのである。

ステージに出て手、これから歌おうとする彼女にブーイングを浴びせ、悲しそうな目をしながら、戸惑いの表情を見せる彼女に対し、クリス・クリストファーソンが、肩を抱きながら、そっとなにか一言声をかけるシーンは感動的なのだが、それでも止むところを知らない、ブーイングに耐えかね、彼女はディランの曲を歌うことを拒否するかのように(ディランにまでも抗議しようとたのか)、事件の発端となった時のボブ・マーリーの「ウォー」を歌っい、彼女の芯の強さを見せてくれた。

しかし、歌い終えた彼女は、それまで張り詰めていた緊張の糸を解いたように、ステージを降りた後、思わず泣き崩れ、それをクリストファーソンが支えるシーンが映されていて、その時のシーンは涙をそそられるものだった。

このシーンなどは、今までのHNKなら恐らくカットしてしまうのだろうが、なぜか・・・ノーチェックだったのだろうか、そのまま放映されたのにも驚いたが、コンサートのリアリティが伝わる・・・多分伝説となるようなシーンだ。

DVD化の際にはカットしないで頂期待シーンである。

数々のすばらしいシーンがあり、一つ一つ紹介できないのが残念だが、youtubeにすばらしい代表的なシーンがあったので紹介しておくことにする。


"My Back Pages" Live at the Bob Dylan 30Th Anni. Concert
ロジャーマッギン、トムペティ、ニールヤング、エリッククラプトン、ジョージハリスン・・・そうそうたるメンバーが次々と歌っていく感動的なシーンだ。ディランの調子はずれな歌い方も苦ではないし、最後のジョージハリスンと、最後の最後にニールヤングがエレキギターソロで演奏し、叫ぶように歌うのもすばらしい。

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by noanoa1970 | 2008-03-10 12:49 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)