クラプトンはタバコをギターヘッドに挟む

我が家の映像設備は、長いこと息子のところに行きっぱなしになっていたのだが、さすがに持て余したのだろう、自分で購入した機器をも含めたその全てを持ち帰って来た。

2DK住まいだからもっともなことで、他の荷物が増えたことの犠牲となったようだ。
それで再びそれらの装置で、映画や音楽が楽しめるようになったわけだが、どうにも腰が重くPCや通常のオーディオ装置でお茶を濁す毎日が続いていた。

その装置で映画や音楽を味わうには、少し苦労が要るのがその原因だ。

部屋を暗くしなければならないので、夜間以外には部屋の窓をカーテンで覆わなければならない。

カーテンは、このことを想定して遮光式(光を通さないもの)に変えてあったが、それでも開け閉めに少々手間がかかる。

そして投影用のスクリーンをヨイショと下ろすことになる。
100インチのスクリーンは、取り回しがそんなに楽ではないのだ。

次に各機器のセッティングだが、一番厄介なのはプロジェクターだ。
移動が楽なように三脚に載せて置いてあるのだが、移動が楽な分正規の位置がずれるから、テスト投影後に必ずといっていいほど調性をしなければならない。

要するにすぐには見ることが出来ないということで、これはアナログレコードを聞くときに似て・・・いや、それよりも相当手間がかかるから、所謂「鑑賞儀式」といっても過言ではない、一つの「お決まり」なのだ。

以前ならその「お決まり」は、これから楽しむのだから、当たり前であり、決して嫌なものではなく、むしろ神社仏閣、神棚や仏壇に手を合わせるような、・・・祈りにも似た行為であった。

それはその儀式を通過して初めて味わえる至福のひと時を予想と期待をしていたからのことであったように思う。

しかし人間というものは、楽をしたがる生き物で、同じような結果が得られるほかの手段があると、楽だから、手間がかからないからといって、すぐにそちらに走ってしまうのである。

当初目論んでいた画面の大きさから得られる情報のすばらしさや、DSPによる擬似サウンド体験などは2の次となることが多くなってしまった。

しかし映像ソースの中には、PCで見るDVDではカバーできないものがあって、その多くは昔のLD(レーザーディスク)フォーマットのものだ。

その殆どが今ではDVDに復刻されてはいるが、なかなか買いなおせないこともあるから、それらは眠ったままになっていることが多かった。

「バングラデシュ難民救済コンサート」もその一つで、学生時代映画館で見て感動を覚えたので、LDが出たときにすぐに入手したものだ。

今のように録画装置は勿論、TVでさえ学生下宿には無かった時代、このようなコンサートライブは実際に参加しない限り見ることは不可能であった。

しかしロック史上初とも言えるこのチャリティコンサートは、幸運にもドキュメンタリー風の映画収録されたので観ることが出来たのだった。

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映画を観てすぐレコード店で入手したコンサートアルバムは、箱入りの三枚組みで、学生の身分では高価であったが、バングラデシュ難民救済の手助けになるのでは・・と勝手に決めて買ってしまった。

このレコードBOX表紙の難民の子供の姿は目に焼きつくものであった。

映画は、当時の学生の間ではかなりの話題となり、小生はそれまではレコードでしか聞いたことの無かったジョージハリソンの「Here Comes The Sun」のギターを、7カポ「D」で演っていることを発見し、真似てみたことがあった。

「While My Guitar Gently Weeps」をジョージハリスンとエリッククラプトンが演るとき、クラプトンが吸いかけのタバコをギターのネックヘッドに挿して(挟んで)引き続けるシーンがあるといったことが伝説のように語られるのだった。

しかし小生は当時、その映画のシーンを見過ごしていたので、そのマニアックな言及に驚くばかりであったが、後にLDで見るとハッキリとそれが分かって安心したりしたものだ。

そのことは映画を観てから15年たってのことで、レコードを聞き映画を観たのは1970年代のはじめのことだった。

あの頃のことを思い出しながら、大きな画面で映像を見たのは、実に久しぶりのこと。

感動の質には若干の変化があったが、それでも無料奉仕でアレだけのミュジシャンたちが一堂に会した、そして4万人といわれる聴衆であふれかえるコンサート会場風景を見ると、例のヤスガズファームの「ウッドストックフェスティバル」をも髣髴させて、つくづく「時代」を感じてしまった。

映像で最初に出演する「ラビ・シャンカール」のインド音楽は当初見聞きしたときには退屈な音楽であったが、今改めて見聞きすると、これは壮大な叙事詩とも言うべき音楽、そして仏陀と人間の会話といってもいいような・・・禅問答のようでも有る、あらゆるジャンルを超越してすばらしい音楽であることの認識を新たにした。

ジョージハリスンが傾倒さえるわけが、やっと分かったような気がする。

面白かったのは、これも「時代」であろうか、演奏の前にシャンカールが、タバコは遠慮して欲しいと、聴衆に呼びかけるところがあるにもかかわらず、出演者達の殆どがタバコを口にしながら演奏をしていることだ。

ジョージハリスンとボブディラン以外のメイン・・・クラプトンも、レオンラッセルもリンゴスターもステージでタバコを喫っていた。
今ではとても考えられないことである。

100インチスクリーンを下ろすとこのようになる。
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部屋のライトを暗くするだけではこのようになってしまって、良く見えない。
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ラビ・シャンカールの熱演。
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タバコをギターヘッドに挟んで演奏するクラプトン。
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ジョージハリスンの勇士。
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レコードではジョージハリスンの比率は際立って高くは無いが、映像ではやはり主催者の重鎮ジョージハリスンが、そしてボブディランが、またラビ・シャンカールが特に強くハイライトされている。

クラプトンも、バッドフィンガーもレオンラッセルも、リンゴスターも、ビリープレストンも・・・本来ならばトリを勤めるぐらいの大御所たちが、個々では脇役で活躍する。

ドン・プレストン、ジム・ケルトナー、ジム・ホーンといった際立ったミュジシャンでさえバックに回ってジ部員の仕事をキチンとこなしているし、小生はこういう場面でのバックコーラスにいつも大きな拍手を送りたくなる、そんな癖を持っているから彼らの下支えにも感動すら覚えた。

手間暇が多少かかっても、やはり大画面とDSPによる映像と音は、他では味わえない迫力がある。
極端に録音状態のよくないものであるが、DSPでライブ感を出してやると、見違えって来て、音の悪さも苦にならない。

ピュアオーディオとは違う世界がそこには厳然としてあることの事実を目の当たりにすることとなった。
面倒がらずに今後も積極的に活用しようと心に決めた昨夜であった。

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by noanoa1970 | 2007-12-01 09:51 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)

Commented by drac-ob at 2007-12-01 23:31 x
「バングラデッシュのコンサート」は、76年のEVEの時に上映しました。個人的にはブートレッグのアルバムを持っていて、音は滅茶苦茶悪かったけど、コンサートの息遣いが伝わってきてよく聞きました。

ギターヘッドにタバコをさすのは、最初ジョージ・ハリスンが自宅でギターを弾いていたとき近くに灰皿がなかったのでネックに指したのがきっかけで、それをみたクラプトンが真似をしてあっという間に流行したと、ロックの雑学の本で読んだ記憶があります。しかし、そういうことをしてサマになる人とならない人はいますね。
Commented by sawyer at 2007-12-03 14:58 x
EVEで上映とは・・・マイフェアレディ以来でしょう。
タバコはジョージが始めたというエオイソードは当時は誰も知らなかったことだと思います。ビートルズ関連のニュースは、ほんの少ししか入ってこなかった時代でした。日本人のあるミュジシャンがまねしたのをTVで観たときには寒気がしましたね。