ベリオ「フォークソング」

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以前のブログ2007-10-04 「ドビュッシーとブリテン諸島 」で、FERRIER,Kathleen: Songs of the British Isles :英国諸島の歌(1949-1952)とともに、ベリオの「フォークソング」は、聞いておくべきだということを述べた。

本日改めて聞いてみたので、それについて書いてみることにした。

ベリオというと現代音楽の筆頭者としてその名が知られている。
2003年彼が亡くなった直後、京都で開かれた大学時代のサークル、DRACのOB会出席当日、ベリオの「セケンツァ」全曲コンサートが、京都左京区内の3箇所の寺院で順次開催されることを知った。

小生はOB会開始前のひと時を、OB会開催場所から一番近いお寺の本堂で聞くことにしたのだった。

前日の夜京都に到着し、昔よく通ったクラシック喫茶「柳月堂」に行くために、大学前の京都御所の北、今出川通りを歩いて出町柳に向かった。
秋の月が街路の木々をを照らしていて、まるでシェーンベルクの「浄夜」を思わせたので、店に入ってすぐに、あの素晴らしく美しい・・・京都の秋の夜にふさわしいとリクエストした。

その昔ここで聞いたことの有る「浄夜」だったが、「あいにくその曲はございません」というメモが渡された。
そんなはずは無いと思ったが、個々はそのままにしておこうと、ちょうどかかっていたシュバルツコップのモーツァルトのオペラの歌曲を聴いた。

多分「浄められた夜」といえば見つかったのだろうと少し悔やんだが、京都はそのような些細なことをすぐに忘れさせてくれる何かを持っている。

・・・そんなことを思い出しながらベリオの「フォークソング」を聞く。
この曲集は愛妻だったキャシーバーベリアンのために作られた歌曲集だそうだ。
なるほど全ての収録曲には、その頃かなり彼女に無理強いして歌わせた、奇声やうめき声、ヴォーカリーズなどの非人間的で人間的な・・・実験音楽的な前衛歌曲の姿はどこにも無い。

美しい声を存分に発揮して、それぞれの国の古い歌を、「詩と音楽」そしてその歌の歴史背景をも見通すように歌って欲しいといわんばかりの曲が集められている。

ベリオのオリジナルもあれば、古くから歌われてきた歌・・・文字通りフォークソングもある。

何気なく聞くと何気なく聞こえるのがフォークソングであるが、聞いていて思ったことがある。

それはこの曲集、ベリオは何気なく曲を集め、または自ら書いたのではなく、この背景にあるのは、ベリオの音楽の原点としての民族性・民俗性・宗教性への回帰ではないかということだ。

ベリオは人間の声にしても、楽器にしても、本来「そうである」という既成概念を、感性というより、理性を持って打ち破ってきたようなところがあったように思う。
キャシーバーベリアンはその手助けをやってきた歌い手であった。

しかし面白いことにこのように前衛的だと言われていた人が、突然古いものに回帰することは、他の作家において経験することは少なくない。

「回帰」と簡単に言ってしまうことも出来るが、小生はこれらは「回帰」では無く、彼らが本質的に持っていた・・・例えば幼い時母親が歌っていた子守唄や、冠婚葬祭時にだれかが歌っていた歌、お腹の中で胎児が聞くように、それらがある日突然塊となって押し寄せてくる・・・

そんなことがあったのではないかと想像してしまう。

フォークソングの語法は、どこのものを聞いても、底の部分でつながっているようなところがある。

クラシック音楽の歴史を見ても、自国の民謡は勿論のこと、異国の民謡に着眼してきた例は数多く存在する。
ベートーヴェン、ブラームスなどなど、数え上げたらきりが無いほど多くの作曲家が、積極的に異国の民謡を取り入れて、それを上手く使いこなしている事実がある。

異国の珍しい音の響きに着目しただけの人もいるが、中にはその歴史風土民族宗教に関心をもつ人もいた。恐らくベリオはその一人ではないかと思われる。

アイルランド、アゼルバイジャン、アルメニア、シチリア、サルディニア、オーベルニュの民謡を、余り極端に変化させること無く、あくまでもエキスを限りなく残した姿で、再構築している。

第1曲目のBlack is the Colour を解説の殆どがアメリカ民謡としているが、このオリジナルはアイルランドの民謡である。
「黒い髪は私の恋人の証」という恋の歌であり、トラッド、フォーク、JAZZで歌われる。

youtubeからピックアップした「Black is the Colour」

Judy Collins Black is the color

Nina Simone's Black is the Color

The Corrs - Black Is The Colour

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by noanoa1970 | 2007-10-30 10:29 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)