映画の中の音楽で考える

クリントイーストウッド出演監督作品「マディソン郡の橋」では例によって効果的に音楽が使われている。

すぐに気がつくのは「ベッリーニ」のオペラ「ノルマ」からマリアカラスが歌う「清き女神よ」である。

異教徒同士の恋と異教徒の戦い・・・そして破局。
侵略者である古代ローマの長と、非侵略者のガリアの巫女との許されない愛ふをテーマとしたこの物語が、マディソン郡の橋では、ローマ=イタリア人の人妻とアイルランド人の写真家の悲恋となって再現されるように効果的にユ変われる。

ちょうど歌劇「ノルマ」の男女の民族人種がが入れ替わったかのようだ。

また「ノルマ」がそうであるように、占領軍と非戦占領者の恋という視点では、マジソン郡の橋では、妻と夫の関係がまさにそれである。

主人公の人妻は、イタリアの田舎町の出身だから、第2次大戦でイタリア戦線に出兵していた夫と恋に落ちたと推測できるだろう。
物語では語られないが、アメリカのワイオミング州の田舎では、あの当時なら人種差別、宗教差別、敗戦国差別意識はあったであろうから、途中で挿入されるどこかの女性が不倫で、村八分にあったようなところまではいかないにしろ、そのような差別の空気は存在したのでは無かろうか。

歌劇が好きな人妻の隠れた教養を暗示しているようで、それに引き換え、娘や夫の粗忽な振る舞い・・・お祈りもろくにしない、ドアをバンと開け閉めする、聞いているラジオ局を断りもなしに変えてしまう・・・そんな日常の生活に対する潜在的不満と、幸せだったと思われる少女時代のイタリアを思い出すようなシーンでもある。

映画の中で流れるのはマリアカラスが歌う「Casta Diva 」

清き女神、あなたの銀色の光は
この聖なる老木を洗い清めてくださる
どうぞ、そのかげりない明るい面を、
私たちにもお見せください。
どうぞ、この燃える心を、
人々の興奮を、やわらげて下さい。 
天を治めるそのこころよい安らぎで、
この地上をもつつんで下さい。


聖なる老木とは古い樫の木のことであろう。
古代ケルト人は樫の木を神木として彼らの民族のトーテムとしたようだ。
ドルイド教下のケルトの民は、樫の賢者を自然神として信仰の対象にしたといわれている。

さらに挿入されているのは女性ヴォーカルと男性ヴォーカルの」
For All We Know
I'll Close MY Eyes
Easy Living
Blue Gardenia
I See Your Face Before Me
Soft Winds
Baby, I'm Yours
It's A Wonderful World
It Was Almost Like A Song
This Is Always

主に使われているのはジョニーハートマンであることはあの独特の甘ったるい声で分かるが、それは全てではないようだ。

For All We Knowをこの映画の中で最初に聞いたときは、ビリーホリデイが歌ったものだと確信したが、続いて出る女性ヴォーカルは、ダイナワシントンのように聞こえるものもあり、サラヴォーンの粘りの有る声も聞こえるから、かなりの人の録音を使用して劇伴音楽としたようだ。

For All We Knowの歌唱がビリーホリデイなのか、それともダイナワシントンなのか・・・2人のいずれかであることの推測は可能なのだが、断定は出来ない。

有る時期のビリーホリデイとライナワシントンの声も、歌い方もとてもよく似たところがあるからだ。

今日はビリーホリデイをDECCA録音盤を含めVerve録音のものを3種類聞いた。
久しぶりに聞くことになったが、実に良い・・・・
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ダイナワシントンはクリフォードブラウンとの録音を明日聞くことにした。
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by noanoa1970 | 2007-10-26 16:32 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)