ビギンは舞踊音楽だ

先のブログに、「黄昏のビギン」を、我がオールディーズの一つとしてエントリーし、「ちあきなおみ」のyoutube動画をリンクしておいた。

この「ビギン」とは、ダンスをやっている方、JAZZ・・・特にボーカルが好きな方なら「BEGIN」ではなく、コールポーターの「BEGIN THE BEGUIN」の「BEGUIN」であることをご存知だろう。
すなわち
「始まり」という意味の「ビギン」=「BEGIN」でなく、ダンスのリズムの「ビギン」=「BEGUIN」であることを。

「ズチャーチャズチャズチャ」というリズムパターンの4拍子で、シンコペが特徴のスローなダンスミュージックである。(ちあきなおみの動画を参照されたし)

youtubeには「夏川リミ」という沖縄の歌い手の同じ曲があるが、こちらは「ビギン」のリズムを大幅に変えた編曲となっていて、シンコペも1あるいは2拍目が常道であるのに、3拍目にアクセントを置くから、原曲の「ビギン」のよさを無視した曲となっていて、「ズーチャチャズーチャチャ」というまるで「ルンバ」のようになってしまっている。おまけに最悪なことは、中間部の大切な「ブルーノート」を全音階的に歌ってしまっている。

歌は上手いのだが、このように編曲されると折角のオリジナルの「ビギン」が台無しである。

その点、「ちあきなおみ」の歌は「ビギン」のオリジナリティを忠実に守って、しかもシットリと見事に歌っているから賞賛に値する。重要だ(と、小生が思っている)「ブルーノート」の表現も見事だ。

近年ではこのように形式と内容が全く乖離したような編曲や作曲が多い。
ちなみに、小生の嫌いな歌い手「Gひろみ」が歌った「お嫁サンバ」は、決してサンバなどではない。

もともとビギン「beguine」は、カリブ海にあるマルチニーク島やセントルシア島で、伝統的に踊られる速い2拍子のダンス音楽を指していたが、其れが欧米に入って「社交ダンス」化されたときに、スローな4拍子の音楽に変身したらしい。

JAZZでもクラシック音楽でも、その曲のルーツの重要な要素の一つが、古い伝統的な民族の踊りのパターンであることは、とても意味があり重要なことなのだと思う。

例えば、ジッターバグ=jitter bugという音楽は、虫がバタバタあがいている音であると同時に、プログラムミスやノイズをあらわすコンピューター用語の一つにもなっているが、同時に民族舞踊がそのルーツだし、クラシックの「ジーグ」あるいは「ジグ」も、そのルーツはアイルランドの民族舞踊である。

以下のような記述がある。
jitter bug:元々は、奴隷が足に鎖を付けたまま熱い鉄板の上で踊った踊りと言われています。
1920年代、ジャズが大衆化された中、女性を左右に振る「リンディホップ」というステップが流行り、段々と複雑化され、「ジッターバグ(南京虫)」という名前で踊られていた。この「ジッターバグ」が日本では「ジルバ」、イギリスでは「ジャイブ」と呼ばれたそうです。

大バッハの管弦楽組曲に代表される
クーラント
ガヴォット
フォルラーヌ
メヌエット
ブーレ
パスピエ
ポロネーズ
エール

これらは、非クラシック分野で使用されることが多い、(ボレロ)、タンゴ、マンボ、ボサノバ、サンバ、チャチャ、ワルツなどと同様、全て民族の舞踊のリズムパターンを取り入れて発展してきたもの。
クラシック音楽の中には、じっさいには踊ることのない・・・演奏会用に作曲されたものも多い。

JAZZ、そしてクラシック音楽における伝統的民族舞踊のしめる割合はかなり多く、民謡とともに小生の音楽的重点課題の一つで、この先が楽しみである。

コールポーターの「BEGIN THE BEGUIN」の歌詞は
When they begin the beguine
It brings back the sound of music so tender,
It brings back a night of tropical splendor,
It brings back a memory ever green.
I'm with you once more under the stars,
And down by the shore an orchestra's playing
And even the palms seem to be swaying
When they begin the beguine.
To live it again is past all endeavor,
Except when that tune clutches my heart,
And there we are, swearing to love forever,
And promising never, never to part.
What moments divine, what rapture serene,
Till clouds came along to disperse the joys we had tasted,
And now when I hear people curse the chance that was wasted,
I know but too well what they mean;
So don't let them begin the beguine
Let the love that was once a fire remain an ember;
Let it sleep like the dead desire I only remember
When they begin the beguine.
Oh yes, let them begin the beguine, make them play
Till the stars that were there before return above you,
Till you whisper to me once more,
Darling, I love you!
And we suddenly know What heaven we're in,
When they begin the beguine

以上の内容から、別れた人ともう一度、縁りを戻してやり直そう・・・などと読むことができ、「BEGIN THE BEGIN」・・・最初から始めよう、すなわち「もう一度やり直そう」・・・昔一緒に踊った「BEGUIN」を、ここでもう一度一緒に踊って。」
「 BEGIN」と「BEGUIN」の音の響も・・・内容もそして形式も見事にあわせた巧みの技の詩と音楽である。


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by noanoa1970 | 2007-08-31 09:01 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)