ireland

「アイルランド」と同じ綴りだが、John Nicholson Ireland: ジョン・ニコルソン・アイアランド(1879年 – 1962年)のイギリスの作曲家でもある。
彼はスコティッシュ系のイギリス人とのこと。
アイリッシュだったらirelandのirelandとなるのだがそういうわけではない。
あくまでも「アイアランド」と発音するらしい。
「ア」でも「ル」でもどちらも正解だろうと思うのだが、国名と個人名が同じでは何かと不便なため、便宜上分けて使っているのだろう。

まぁこんなことはどうでも良いことで、この人はわずか14歳の少年期に王立音楽大学・・・(王立音楽大学(Royal College of Music)は、ロンドンにある名門の音楽学校で国立音楽養成学校(National Training School for Music)の後継校として、当時の英国皇太子(後のエドワード7世)により1882年に設立され、ジョージ・グローブ(George Grove)を理事長に迎え1883年に開校した。1894年にロンドンはケンジントン地区の現所在地に移転したが、この年にチャールズ・ヒューバート・パリー(Hubert Parry)が理事長に就任し、1918年まで職を務めた)

以上の記述のように、類稀な才能の所有者であったことを思わせるが、残念ながら、彼の名前や作品はほとんど世に知られていない。
イギリス近代音楽の祖、スタンフォードの弟子で、後に「モーラン、ブリテン」を弟子とした。

作風は一概にいえない面があって、よく「イギリス印象派」とされている面もあるが、確かにドビュッシーやラヴェル、時にはモンポウなどの響きが聞こえるも、やはりブリテン諸島の作曲家らしく、その根っこには広い意味での「フォークソング」と、「宗教性」を持っていると思われる。(音盤はそれほど多くないのと、まだ彼の全貌を聞き込んではいないのでご了承のほどを)

手始めに取り上げたのはピアノピースとして作曲され、後に様々なスタイル・・・弦楽四重奏や弦楽合奏に編曲され、アイアランドの作品の中でも短いが美しい曲の代表的存在である「聖なる少年」。

エルガーの作品に有名な「愛の挨拶」、「ため息」という小品があり、バイオリンソロ、合唱、コーラスなどに編曲され、その甘い美しいメロディを聴いたことのある人は多いと思うが、アイアランドの「聖なる少年」も同様の曲想で、とても親しみやすい曲である。

エルガーも直接民謡の主題を使っていないと思えるのであるが、アイアランドのこの曲も、あたかも民謡をモチーフに使っているようで、実はそうではないのだろう。
しかし、数々の民謡の主題を使った曲を指導してきたり、先生のスタンフォードの影響を考えれば、底辺にあるものは「ブリテン諸島」の民謡風のモチーフであったことは容易に想像可能だ。

したがってこの作品の底に流れるものは「アイアランドオリジナルの、新しくてなおかつ古い民謡風」のモチーフであるといえる。

民謡を使うとヴァリエーションに様々な工夫をすることになるのであるが、オリジナルのモチーフであれば、自然に、素直に、淡々と曲を進行させればよい。
様々な音楽技術や技法を駆使して、奇をてらうことなど何一つ必要ないのである。

エルガーの「愛の挨拶」も「ため息」も、アイアランドの「聖なる少年」も、そのような音楽である。

そのことがこれらの小品を、誰もが愛するであろうすばらしい曲としての確立させた要因ではないかとも思っている。

「聖なる少年」とは一体何を示すのだろうと、気になって調べてみたが、あいにくそのことに関する記述には遭遇できなかった。
文字通り取るべきか、稲垣足穂の「少年愛」に踏み込むのか、あるいは「ダフニスとクロエ」のようなギリシャ神話風の話・・・神話伝説に関係するのか、カトリック修道院
に関係するのかはサッパリ分からない。

がしかし、音楽を聴く限り神秘性や宗教性は余り感じられない。
むしろ「無垢で純粋なの少年」あるいは「永遠の少年」といった言葉で表現されるような、「優しい心を持っている・・・信仰心の厚い少年」・・・といってもキリスト教のそれではなく、もっと根源的な、すなわち自然神を敬える心の持ち主のような、そんな音楽イメージが沸いてくる。

今後は彼の「宗教曲」を聴く楽しみを見つけられたことがうれしい夏の一日でした。

「聖なる少年」は以下のCDに収録される。
他にイギリスのマイナー作曲家「ブリッジ」の作品が収録されていて、聞き応えがある。エルガーの「Sospiri=ため息」は特にすばらしい。

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English String Miniatures Vol. 2
指揮: David Lloyd-Jones
オーケストラ: English Northern Philharmonia
Naxos:ASIN: B000058UU1

1. Sally in our Alley - Frank Bridge
2. Cherry Ripe - Frank Bridge
3. Sospiri - Edward Elgar
4. Fantasy Concerto - Hadyn Wood
5. The Holy Boy - John Ireland
6. Charterhouse Suite - Ralph Vaughan Williams
7. Air & Dance - Frederick Delius
8. Serenade for the 60th birthday of Frederick Delius - Peter Warlock
9. Consort Music - Geoffrey Bush
10. Sir Roger de Coverley - Frank Bridge

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by noanoa1970 | 2007-07-26 17:29 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)