こんな天気だから

なぜかベートーヴェンの「田園交響曲」が聞きたくなった。
さて誰の演奏にしようと迷うこときり、少し変わった「田園」が聞きたいと思って取り出したのが「ヘルベルト・ケーゲル」が指揮する「ドレスデンPHO」の録音。

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「田園」に何を求めるかによって、好みは分かれるようで、小生はここ最近10年ほどは、「ペーター・マーク」と「パドーヴァ・ヴェネト管弦楽団」の透明感にあふれる・・・まるでターナーの水彩画のような演奏を好んでいて、往年の「ブルーノ・ワルター」や敬愛する「フランツ・コンヴィチュニー」よりも「マーク」を聞くほうが多かった。

といっても「田園」をジックリ聞いたことは、ここ最近では無いに等しかったのも事実であり、かつて松本音楽祭で小澤の「田園」を生で聞いてからというもの、クラシック音楽を聴き始めた頃から馴染んできたはずの「田園」が、なぜか遠い存在に思えて、真正面からこの曲を聞くのをためらってきたような気がしている。

確かにこの長い曲のすべてを、途中でだれることなく、したがって聞くものを飽きさせることなく集中力を持続して終焉まで行くことの出来る力を持った演奏は、めったに無いのも事実のように思う。

この曲の持つ魅力とは一体何であろうか?
美しいだけでは、そして激しさだけでは語れないものがあるようだ。
5楽章形式だとか、ずべての楽章に表題が付けられているとか、自然の描写・・・特に鳥達の鳴き声の擬音が入るとか・・・確かにそれらも特徴ではあると思うのだが、小生は「ケーゲル」の演奏を聴いていて気づいたことがある。

ケーゲルの「田園」は、今まで聞いた恐らくどの録音よりも、アップテンポで一楽章からグイグイとオケを引っ張り倒していく。
2楽章では少しテンポを落としてはいるが、それでもかなりのハイテンポ、これが終楽章まで持続していくのであるから、聞いていると自然に心臓の鼓動が激しくなってくるのが分かる。

時々息を殺す自分を発見して、驚くことがあったのだ。

こんな「田園」は初めての経験であるから、・・・

通常は、自然の美しさと穏やかさ、優しさ、それらが急ににやってくる雷鳴とともに打ち消されるが、やがてまた再び穏やかになって農民や牧人性質が喜びに溢れる・・・そんな自然と人間賛美の曲で、「序・破・急」のような展開、音響的には「嵐の」激しさがこの曲の特徴でもあった。

勿論ケーゲルの「嵐」の表現はすさまじいものであるのだが、そんなことより、小生はケーゲル盤で一楽章冒頭の第一主題に・・・今まではメロディーが先に来てしまい気づかなかった音型に、「運命の動機」が潜むことを発見させられたのである。
そしてその「運命の動機」は、少しメロディを変えながら互いに呼応し、発展していくのだ。

これは小生にとっては大発見で、この1点だけでもケーゲル盤をチョイスした甲斐があったというもの。

ケーゲルがそのことを意識したか否かは分からないが、ケーゲルのテンポ設定の賜物であった。
さらにケーゲルの演奏で気づいたことは、各パート・楽器の受け渡しが非常に巧みであるということ。
「田園」では各楽器が互いに呼応する演奏箇所が多いが、そのときの受け渡しタイミングが実にすばらしい、といっても、これを単に技術的にとすばらしい言うわけでなく、その微妙なところが、「アーティキュレーション」というか、「アゴーギグ」というか、ケーゲル特有の固有な感性とでも言うか、時にはシンコペーション、時にはフェルマータをたくみに自然と使いながら、音楽のつなぎ目をリニアなものにしていく。

チョット聞くだけではザッハリッヒに映る演奏だと誤解を生じそうであるが、通常なら余り注意を払わないような・・・それが「音」に反映するかしないかとても微妙なところでさえ、キチンとこなしているように見える。

「ドレスデンPHO」のノンビブラートに近い絃のボウイングによるオケの音色も、思いっきりビブラートを掛けた演奏に比べるとごまかしが利かないが、十分その力を発揮している。

これは稀に見る「田園」のすばらしい演奏である。
40分間釘付けの「田園」聞いたことがあるでしょうか?
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by noanoa1970 | 2007-07-09 11:25 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(3)

Commented by Abend at 2011-08-01 13:56 x
sawyer様。
私は『田園』が苦手です。初めて買ったこの曲のレコードはフルトヴェングラー/VPO(1944年録音)のもので、コンサートではベーム/VPOとブロムシュテット/SKDでも聴いているのですが、苦手感は抜けませんでした。コンヴィチュニー盤でも第2楽章には瞠目させられましたが、全曲となると寝てしまうのです。そういうわけで、ベートーヴェンの交響曲の中では、『田園』は第2番とともに様々な演奏を聴いたことが最も少ない曲になっています。
Commented by Abend at 2011-08-01 14:16 x
続きです。
ケーゲル/ドレスデンPO、リンデンベルク/ウィーン・フォルクスオパーO。私が一気に聴けた『田園』の演奏は、この二種類だけです。ケーゲルとリンデンベルクはアプローチが全く異なりますが、推進力の逞しさという点で共通していると思います。リンデンベルク盤のタイムは、10:57/12:35/05:30/04:25/10:40 Total44:07と、ケーゲル盤に比して3分近く遅いのですが、そう体感出来ないのです。どうやら、私を寝かさない『田園』の演奏とは、そのイメージとは離れた、交響曲第6番としての演奏のようです。

Commented by noanoa1970 at 2011-08-01 15:55
Abendさま
HABABIさんにもこの投稿内容を見ていただきたいので、場所を移します。こちらのも残しますので宜しくお願いします。