ヴォータンは何故片目なのか・・・最終章

「ワルキューレ」物語中の種族には・・・「神族」=「ワルハラ族」、「ヴェルズンク族」そして「フンディング族」が登場する。
ヴォータンは別名ヴェルゼであるから、出自はヴェルズンク族であるのかもしれない。
そうだと仮定すると、彼は「神族=ワルハラ族」に入り婿で入った人物で、最初は神族の「エルデ」と結びつき「ブリュンヒルデ」他7人のワルキューレをもうけたが、神族の跡目相続で、エルダとフリッカが争い、フリッカが勝利したため、エルダからフリッカに乗り変えたのではないだろうか。

神族は母系相続であるから、母親の血筋が家督を引き継ぐ、しかし外敵から守るためには、武力に優れた「男の力」が必要であった。
ヴォータン=ヴェルゼの出自の「ヴェルズンク族」とは、「狼族」でもあるから、もともと集団の仮、攻撃が得意な種族。「狼」をトーテムとしていたのであろう。
ヴェルズンク族の権力者の血筋を引くものが「ヴェルゼ」=ヴォータン」であったのではないだろうか。

彼ら「ヴェルズンク」が、体制に「纏ろわぬ者」の象徴であるのに対し、「フンディング族」とは、「ブンディング」=「犬族」と考えられるから、こちらは「纏ろう者」としてよいのだろう。
ジークリンデを娶ったフンディングをフリッカが助け、ヴォータンにジークムントがトネリコから抜き取った強者の剣「ノートン」から魔力を奪わせることになったのも、フンディングがフリッカの権力に纏ろう者の証拠のように思える。
事実物語中には、フンディングに対して、ヴォータンが、「フリッカの奴隷め!」と言い捨てるシーンがある。

フリッカに対して頭の上がらない「ヴォータン」は入り婿であり、結婚という契約によって現在の地位を気づいたわけだから、フリッカの束縛からは逃れられない立場に在った。

父ヴォータンと母エルダとの子供ブリュンヒルデは、フリッカをもともと良く思っていなかった。
しかるに、やむなくフリッカの言うことを聞いた父ヴォータンの隠された気持ちを察して、フンディングと対峙するジークムントを助けようとした。

纏ろわぬ者の種族と纏ろう者の種族の対立・・・権力者による代理戦争の構図が「ヴェルズンクとフンデイング」の抗争である。
このような構図はわが国の歴史の中でも頻繁に見ることが出来る。
親、子供、兄弟同士の争いの構図も、見ることが出来る。
わが国の3大英傑は、すべて自分の身内を殺害しているから、まさに歴史は、ワールドワイドで繰り返す。

ワーグナーの巨大な楽劇「ニーベルングの指環」の第1夜、「ワルキューレ」を見聞きするうちに、このような妄想が沸いてきたが、学生時代そうであったように、この物語をを単なる「神話」あるいは「御伽噺」として読むよりは、「ハイネ」が、・・・・わが国では学会からは異端視される在野の民俗学研究者達の多くが語るような「隠された歴史」が見えてくるから、異なる次元の世界に入れるような気がして面白い。

以下は、「ウォルフガング・サヴァリッシュ」とバイエルン国立歌劇場管弦楽団1989年
レヴァイン盤にも出演した「ヒルデガルト・ベーレンス」が同じブリュンヒルデ役で出演しているのが注目される。美声が最後の最後まで破綻しない「サヴァリッシュ盤」での「ベーレンス」に、一日の長があるように思う。

「ベーレンス」も良く歌っているが、「ブリュンヒルデ」の、明るさの中の影と苦悩を併せ持つ性質を表現する、声の質と歌い方として、小生は「カラヤン」盤の「クレスパン」をより好む。

演出:ニコラス・レーンホフ
ブーレーズ盤ほどではないが、やレヴァイン盤に比べ、時代背景はより新しく設定され、16・7世紀ごろのような雰囲気がある。
斬新なアイディアがところどころ見られ、前奏の開始早々幕が開いて、出演者が無言で演技する。「ノートン」が最初に現れ、ジークリンデが、トネリコから剣を抜き取る英雄の出現を待ちわびる様子が強く演出される。

ブリュンヒルデ:ヒルデガルト・ベーレンス
ジークリンデ:ユリア・ヴァラディ
フリッカ:マリアーナ・リポフシェク
ジークムント:ロベルト・シュンク
ヴォータン:ロバート・ヘイル
フンディング:クルト・モル

英雄を待つジークリンデ
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フンディングは近代的な成をしている・・・市民社会に溶け込んだ、体制派=纏ろう者の象徴のように見える
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フンディングの前で、今までの生き様を語るジークムント
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狼の毛皮を纏うジークムント・・・ヴェルズンク=「狼族」の象徴のようだ
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フンディングとの戦いを前に、強力な武器「ノートン」を探すジークムント
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トネリコに刺さったノートンを発見
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父ヴェルゼ=ヴォータンが残したノートンをトネリコから抜き取る
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ワルハラで、ジークムント救済のヴォータンの命を受けるために出現するブリュンヒルデ
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ヴォータンの妻フリッカが現れ、ヴォータンの意向を撤回させる
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フリッカは、しつこくヴォータンに、ブリュンヒルデへの命令の撤回を求める
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上着を脱ぎ捨ててまでの強い口調に、ついにヴォータンはフリッカの願いを聞き届け・・・誓わされることになる
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ブリュンヒルデに先の命令を撤回する。このときのフリッカがブリュンヒルデに勝ち誇ったように言う言葉が「女の戦い」を連想させる。
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by noanoa1970 | 2007-01-13 09:30 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)