ブリテン諸島の近代音楽

サミュエル・コールリッジ・テイラーという作曲家は、イギリスでは始めての黒人の血が入った音楽家である。小生はそのことをまったく知らなかったが、彼の「アフリカ民謡による交響的変奏曲op63」を聞いていて、なぜアフリカ?と疑問に思ったので調べると、彼の出自が明らかになった。
なるほどそうだったか、しかし小生の好みの、「バラードイ短調op33」を聞く限りにおいては、まったくそのような生い立ちが有ることなど感じさせなかった。

フランスにも黒人の血を引く作曲家「ジョゼフ・ブローニュ・サン=ジョルジュ」がモーツァルトと同時代に存在して、その音楽を古いレコードで聞いたことは、以前のブログでも書いたが、、イギリスにおいても、時代は新しくなるが、そのような音楽家がいたことは非常に喜ばしく、そしてその音楽に興味がわいてくる。
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本日は
「バラードイ短調op33」を聞くことにする。
ブリテン諸島の、いずれかの地に生まれた、音楽家の作品とばかり思って聞いていたが、この曲はそれほどまでに「黒人の血」を感じさせない。
小生はこの曲の主題らしき旋律に、アイルランドの伝統歌「素早き戦士」をみることができた。
この「素早き戦士」は、アイルランドの伝統歌の伝道者として、世界的に有名な「チーフ・タンズ」のアルバム「ロング・ブラック・ベール」で、「ポリス」の「スティング」が古代アイルランド語で歌う。勇ましいアイルランドの兵士を歌ったもので、恐らくくは、戦士が戦場に向かうときの、「行進曲」であろう。

余談であるが、「ロング・ブラック・ベール」とは、おそらく「婦人の喪服」を指しているものと思われ、ローリング・ストーンズの「ミック・ジャガー」によってアルバムの中で歌われる「バラッド」は、夫以外の男を愛した女が、夫を殺害する。そして愛した男が死んだ後にも、「ロング・ブラック・ベール」を身に付け、墓の中の男に会うために、夜な夜な男の墓を訪れる・・という「ほかの男を愛した女の夫殺人」の実話を歌ったもの。
小生は、このアルバム以前に「ザ・バンド」の「レヴォン・ヘルム」が歌っているのを覚えていたが、これも素晴らしい演奏。
ドラムをたたきながらの彼の声は、おどろおどろした詩の内容ピッタリである。

この伝統歌を「テイラー」は編曲して使ったものと小生は推測している。
その性であろうか、この曲の中間部までは、勇ましい曲調で突き進む。去年の暮れ、TVがスペシャル番組ばかりとなった時期に、有るTV曲のクイズ番組の合図に、この曲の冒頭が突然鳴り響いたのには少々ビックリした。
しかしまだまだ作者も曲も無名に近い。
中間部は勇ましさが消えて「牧歌的」な局長となる、このオーケストレーションは、アルバート・ウィリアム・ケテルビー(Albert William Ketèlbey, 1875年 - 1959年にそっくりのところが有る。テイラーは、1875ー1912、若くしてなくなっているしケテルビーの有名作品は彼の死後のものだから、参考にしたのはケテルビーなのかもしれない。

簿家的な中間部を過ぎると再びあの「素早き戦士」の編曲らしき、勇ましい音楽となって終わる。12分ほどの曲だが中身は濃いものがあり、小生は好きである。
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by noanoa1970 | 2006-10-12 09:00 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)