ブリテン諸島の近代音楽

秋になったら、イギリス近代音楽を聴こうと決めていたのだが、いつの間にか「浅川マキ」シリーズになってしまった。
しかしそれとて浅川がインスパイアされたと思える「ロッド・ステュアート」を通じて、実はイギリスの・・・というよりブリテン諸島の古い民謡につながるから、浅川とイギリス近代音楽は決して無縁ではない。
小生は「ケルト」の音楽が各方面のジャンルの音楽に与えた影響・・・・は、決して少なくないと思っているから、イギリスの近代音楽の中にひょっとしたら、その手がかりを発見できることになるかもしれない興味を抱いている。

ケルト音楽に代表されるアイリッシュ音楽は、海を渡ってアメリカのアパラチア山脈のふもとの移民たちに引き継がれ、それがトラッドフォーク、ブルーグラス、そしてホワイトブルーズやロックンロール、フォークロック、所謂ロックですらその恩恵を受けたようなところをいくつかの曲の中に発見することができた。

今のところはそれらを科学的に結びつける根拠をしっかりとは持たないが、それらサンプルをより多く収集するうちに、何かしららの手がかりが、確かなものになってくるのではあるまいかと思うことがある。
その瞬間を期待しつつ聞いていくことにしよう。

今日取り上げたのは
「BAX」の「黄昏に」
タイトルも今頃の季節に似合っていて、昨今の夕焼けを見るとき、そしてそれが夕暮れに近づくくとき、海沿いの北陸の町で暮らしたことのある「浅川」は、それを「夕凪の時」で歌った。
d0063263_16261756.jpg

「BAX」はいったいどのような音楽に仕上げたのであろうか。

クラリネットの哀愁あるメロディが、非常に小さい打楽器の上に載って奏される・・・バスーンが重なるようにして重苦しいが美しいメロディを奏で、それが黄昏の始まり。
今さっきまで周囲はまだ明るく、ハイランドの山々も、ローランドの湖も見えていたが、それもすでにボンヤリするほどあたりは薄暗くなりつつある。

冷たい空気が一面を包み込み、それにつれられたかのように、古いこの地方(スコットランドあるいはアイルランド)の伝統歌のメロディが漣のように沸いてくる。
この演奏ではこのときの弦楽器の響きが特筆ものである。

ここで使われる「伝統歌」のメロディは、どこkで聞いたことがあると、思い出そうとしたところ、それは「武満徹」が作ったPOPS調の音楽・・・「石川セリ」の「翼」の中にある「小さな空」・・・
「移動ド」で申し訳ないが

ミーミーソーミ・ドーソードー・ ミーミーソーミ・レードーレ
ミーミーソーミ・ドーソードー・ レ・ミードー・ラーソーラー
「青空見たら、綿のような雲が悲しみを乗せて飛んでいった
いたずらが過ぎて、叱られて泣いた、子供のころを、思い出した」

この部分とまったくといっていいほど同じである。

「武満」もまた、BAXが引用したアイルランドの伝統歌と同じものをを引用している・・・・
偶然の産物であるにしては、あまりにも似すぎている。
武満の「子供のためのアルバム」のようなところがある曲集だから、いずれかのときに聞き覚えがある、懐かしいメロディがつい出てきた可能性も、なくはないが、やはりここは武満が、アイルランドの伝統歌からインスパイアされたもの、と考えたほうがよさそうだ。

武満とBAXの関係がわかれば、BAXからの引用とも考えられるが、やはり「伝統歌」からなのであろう。
ともあれ、武満でさえ引用するほど、すばらしい伝統歌が、BAXの「黄昏にて」でも引用されている事実を、お伝えしておこう。

「BAX」は、斬新な手法を何一つ用いるること無しに曲を仕上げたが、しかしそれは単なるロマン派の延長にはとどまらず、バイオリンのソロパートなどをよく聞くと、バルトークのような「組みなおし」のように聞こえるところ、変拍子の工夫した使い方、巧妙な転調、不協和音が和音のように響き聞こえる技など、素人の小生が聞いても「凝り方が自然」な・・・一瞬で好きになる作品であり、作曲家であることは間違いないであろう。

「ラター」、「ハーティ」、「スタンフォード」、「ドッド」、「テイラー」、「バターワース」を聞いたときにも感じたことだが、彼らに「気負い」はまったくない。
ブリテン諸島の伝統、気候風土の中で培われたものを、素直に表現した音楽であるところが気に入る原点なのかもしれない。
このあたりは、有名どころの・・・・あえて名前を挙げないが・・・作曲家と少々異なる点なのかもしれない。

ドイツのあるいはフランスのだれだれに・・・誰かと誰かをMIXしたような音楽・・・とされることもあるが、それでは表面的すぎてはいまいか。

BAXの「黄昏に」を聞くと
アイルランドの自然賛歌でもなく、単にアイルランドへの憧れでもなく、
そこにあるのは、アイtルランドという島および島人への敬意と尊崇、そして土着の神々への「夕べの祈り」があるように感じられるのである。

BAXはアイリッシュではないようだが、「外から見えるアイルランド」をおそらくは一番よく表現しているのではあるまいか。
アイルランドに憧れを持つものとして、小生は、BAXの作品をすべて聞いてみたい欲求に強く駆られるのである。
[PR]

by noanoa1970 | 2006-10-02 15:46 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)