夏に似合う音楽・・・Albert William Ketèlbey「In a Persian Market 」

「ヴォーンウイリアムス」へとやってきたからには「グリーンスリーヴス幻想曲」を聴かなくてはとまたまたレコード棚を漁って、d0063263_918832.jpg「エードリアン・ボールド」とウイーン国立歌劇場管のLPを取り出した。ついでに東芝EMIが昔「ディーリアスの音楽」と題し、シリーズで「トマス・ビーチャム」とロイヤルフィルでかなりの枚数のアルバムを出した中のものが見つかったので、次に聞くべくそれも出しておいた。

さて「グリーンスリーヴス幻想曲」は、誰もが知るところの「イギリス民謡」をヴォーンウイリアムスが思い入れタップリの管弦楽に編曲したものだ。
そして最近の傾向として「グリーンスリーヴス」とは女性が身につける「緑の袖」のことで、それを「不倫」の象徴とする、何の民俗学的解釈も、ロマンも、そしていかにも「トリヴィア」的な説得力なき通説がまかり通っているのがとても気になるところである。

小生に言わせれば「グリーンスリーヴス」はそもそも「イギリス民謡]ではない。
ある文献によると、このバラッドが採取されたのは、イギリスとスコットランドの国境近くであったというし、オールドバラッドの系譜を紐解けば、「緑」そして「小袖」は着物の上からは織る大き目のスカーフであるから、これは「ケルト」の風習である。ケルト文化では「緑」は森の「妖精」を表すのだ。

したがってこのバラッドは戦場へと旅立つ兵士あるいはもう少し身分の高い軍人が、貴族や自分の領主の夫人に寄せた愛の歌であり、女権制の伝統から「奥方様を敬う風習」があったわけで、それが淡い恋心となったこと、そして奥方は自分の着ている緑のスカーフを戦場に赴く、自分を慕う若き兵士にそっと与えた・・・そんな歌なのである。

このバラッドを「イギリス]のものであるとすると、とたんに「チャタレー夫人・・・」のように解されてしまうことになり、多くの誤解を生むことになるから困りものである。
「真実」は分からないが、少なくとも小生は「グリーンスリーヴス」を、そのようにかなり昔から解釈するようにしている。

「幻想曲」も夏向きであるには違いないが、今日メインに取り上げるのは
「ケテルビー」である。
d0063263_950656.jpgケテルビーというと、小学生か中学生の頃音楽の時間に聞かされた「ペルシャの市場にて」が有名で・・・というかこれしか有名でないというか、よほどのクラシック好きでも彼の音楽を「市場」、「僧院」以外に聞く人は稀であろう。というより、ヘヴィーなクラシックファンはケtレルビーなど聞こうともしないのだろう。
小生も40年以上彼の音楽は「市場」以外に耳にすることはなく、積極的に聞こうとはしなかった。

聞いてみようと思い立ったのは、今から15年以上前のこと隔週発行の「サライ」という雑誌が気に入って、初号からずいぶん長く読んでいたのだが、その中の音楽コーナーでどなたかは忘れたが、久々の「ケテルビー」はとても新鮮、懐かしくも新しくも有る・・・などと評した記事を読んでそういえば「ケテルビー」全く聞いてないと、早速CDを入手することにしたのが今日取り上げたものである。
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夏に何が似合うかといえば、やはり「ペルシャの市場にて」の真夏の太陽がギンギン照り付ける市場通りに並ぶ露天、その通りを行きかう様々な人の姿、そして時々木陰を思わせるような静けさがあり、そこを抜けると再び人々の声高になにやら叫ぶ声。
長い道路沿いにある露天の商店街を歩いて、いろいろなものを見聞きしているような風景がそこにある。
真夏の太陽と、豊富な野菜や果物、冷たく冷やした飲み物、灼熱の太陽と木陰のありがたさ。
そんな風情が沢山味わえる音楽で、改めて聴いてみてそのよさを認識した。
このCDには知られざるケテルビーの曲が10曲収録されているが、彼は「劇伴」あるいは「パロディ」作曲家のような・・・この世界では一段低く見られるような音楽を随所に聞かせるが、けれんみのない楽しい音楽が満載で、イギリス近代音楽の中では「異端児」といえそうだ。

彼の経歴など詳しくはわからないのだが、楽曲からはケテルビーは職業音楽家ではないような感じがする。そんな素人風の音楽風情が素晴らしく非イギリス的でよい。
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by noanoa1970 | 2006-08-09 09:08 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)

Commented by tetsuwanco at 2006-08-09 20:08
単なる偶然でしょうか。今日、8月9日は、ケテルビーの誕生日ですよ!
Commented by sawyer at 2006-08-09 20:29 x
おっとビックリ、偶然もいいとこです。今日が誕生日でしたか。イヤイヤ本当にビックリしました。これは何かありそう・・・かも。本当は「ヴォーンウイリアムス」の「音楽のセレナード」について書こうと思っていたのですが、早朝散歩中にケテルビーが脳裏をよぎった・・・これ本当です・・・ので加えたのでした。よい知らせ感謝です。明日はてつわんこさんに刺激されて「石川セリ」の「武満」UPの予定です。