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「新世界」を聴く・・2人のドイツ人指揮者その1「カール・ベーム」

ドヴォルザークの「楽譜の版」の問題についてはまだ見確認・未確定の要素が強いので、これ以上は言及するのをやめて、あくまでも聞く側の立場で、・・・・(其れしか出来ないのであるが)・・・進めていくことにする。
ただ聞こえてくる音楽の大きな違いがが解釈の違いなのか、また楽譜の版による違いなのかは、聞く側にとっても非常に気になるところではある。

そこで、何かヒントとなるものはと、調べていたら、参考になりそうなサイトが見つかったので、興味ある方はどうぞ。

今までのことを頭に少し入れ込んで、聞いていくことにする。今日は予告では「ベーム」だったが、少し趣向を変えてドイツ音楽が得意な2人の指揮者・・・すなわち「ドヴォルザーク」には余り似つかわしくないと思われる指揮者として「ベーム」と「スイットナー」を挙げることにした。なぜかといえば、この2人の演奏は、小生の予測を遥かに超える演奏を聞かせてくれたからである。

どういうわけなのか、小生はドイツ系の指揮者による「新世界」の演奏が好きで、もちろん生まれは違うので生粋のドイツオーストリア人=ゲルマン系ではないが、長年その地で活躍し続けた指揮者、「フェレンツ・フリッチャイ」、あるいは「フランツ・コンヴィチュニー」、毛色の変わったところでは、フランスで活躍した「コンスタンティン・シルヴェストリ」、イギリスで活躍した「イシュトヴァン・ケルテス」などが好きである。・・・でも考えてみれば、いずれも東欧諸国の出身者ばかりだから、広い意味では、「チェコ」の「ターリッヒ」、「アンチェル」と同族の血脈があるのかもしれない。「セル」もそういえば非ゲルマン系の一であるから、「ベーム」「スイットナー」はその中でも特異な存在であるといえる。

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ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調《新世界より》
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
指揮:カール・ベーム録音:1978年5月 ウィーン


「ベーム盤」は当初LPで購入した。しかし余りにも印象が緊張感が無かったので・・・・当時の小生はこの曲に対してのイメージは「躍動感に満ちた、激しいもの」・・・という者が強かったので数回聴いたきりで長いことそれっっきりとなっていた。
あるとき固めて「新世界」を聴こうと思って取り出し聴いてみると、初期の悪い印象など消し飛んでしまうくらいの、ある種「すごい演奏」であった。
初回のCD復刻を見逃がして何回かの後に入手したのが上CDである。

「新世界」を聴く・・2人のドイツ人指揮者その1「カール・ベーム」_d0063263_13551586.jpg<LPのジャケットはNY辺りの風景を切り取ったもの、太陽のように見えるのは、カメラのフラッシュ、ジャケットには無いものです>

「ベーム」が84歳の録音である。多分「ベーム」はドヴォルザークの「新世界」を録音したくは無かったことだろう。DGの販売戦略にのっとって企画されたに違いないと思われる。同じオケとのライヴを除けば恐らくは唯一のドヴォルザークであると思う。

しかしながら、そこは流石「ベーム」である。引き受けたからには得意も不得意も無い。
数々の優れた演奏が目白押しのこの曲に老体に鞭打って、真っ向から勝負を挑んだ・・・聴いているとそんな気がしてくる。

ここでの「ベーム」はいつもの「ベーム」と「VPO」の組み合わせで聞こえてくるような音楽を作っていない。一言で言えば、「ベーム」がかなりの程度VPOの自立性を認めた・・・かなり自由に演奏させているように思える。そのせいだろうか、ものすごくオケが歌う、フレージングも多様で、どのような場面でも美しい響きを重視する。テンポの動かし方にも自由度が高い。VPOがノビノイ演奏していて、聴いていてとても気持ちが良い。

「ウイーンのドヴォルザーク」とでも言おうか?①・②楽章には随所に「弦の重奏」・・・(最低2人からごく少人数の)・・・が登場するのだが、そのアンサンブルの比類ない美しさは差宇賀VPO他ではなかなか聴くことは出来ないもの。

驚くのは①楽章に象徴されるユッタリしたテンポで、こんなに遅いものは他にはあるまいと思っていたら、進むにつれてリニアに加速して行き、終わってみれば9分代後半と、ごく普通の演奏時間であった。リニアな加速リニアな減速・・・わざとらしくない自然体のテンポ・ルバートなどこの辺りが決して恣意的でないこと。この辺りが「’ベーム」の音楽性の一旦であろうか?

そしてやってくる「ベーム・エンディング」・・・・最初と最後の大きな変化、中間楽章の表情付けが聴き所である「民族色」等一切無い、いわば非ドヴォルザーク的演奏で、まるで「シューベルト」を聞いているような錯覚さえ覚えるような「新世界」であった。

このような「新世界」は他には見当たらず、そしていわゆる「ベーム」に対して小生が昔から持っていたイメージからは最も遠い演奏スタイルであった。

「最も美しい新世界の演奏」・・・ベームの「新世界」はそんな形容詞がピッタリだ!

by noanoa1970 | 2006-01-06 09:00 | 新世界を聴く | Comments(0)