人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「新世界」を聴く・・ややこしくて良く分からない「版」の問題

どうも有名な作曲家の有名な曲には楽譜の「版」の問題がつき物のようである。
このことは作曲家自信の自筆の楽譜の紛失、出版社に出すときの写譜時のミス、そのほかいろいろなことで起こったと思われる。中には作曲家自信の誤記もあるという。
「版」の問題がとりわけ取りざたされるのは、のは、およそ後期ロマン派時代まで連綿と続くことになる。

ベートーヴェンにも「ブライトコップフ」と「ベーレンライター」という楽譜があるが、これらはいずれもが出版社の名前である。

ドヴォルザークの楽譜のことは詳しくは知らないのだが、8番の交響曲「イギリス」はイギリスの出版社から楽譜が発売されたことによるネーミングという。

初回に挙げた「ホルン」の入り・・・2拍目か3拍目かは、指揮者の解釈でなく、どうもこの「版」による結果であるという指摘があるようだ。
それによると3拍目で入るものは、小生が古くから聞いてきた長い歴史を持つ楽譜による演奏スタイルで、2拍目で入るほうはその改訂版ということらしい。そして其れを「スプラフォン・プラハ版」というそうである。またこの「版」を「原典版」と呼ぶ人も中にはい入るようなのだ。

話はややこしいのだが、「原典版」とはブルックナーの場合でもそうだと思うが、今まで長い間用いられてきた「版」を、「残された資料や、新発見の資料、そしてその解釈など、新たな視点で見ることにより、音楽性にてらし合わせて再度見直し、改定したものということになる。

小生は「原典版」だから古くからある楽譜のこと・・・と思っていた時期があったが、どうもそうではないことが有る時期分かった。
ベートーヴェンにおけるデル・マールによる「ベーレンライター版」も、もう少し評価が定まれば「原典版」だといえなくも無い存在となるかもしれない。

さていろいろな演奏を聴いての「新世界」の1楽章の演奏のもう一つの違いについて触れると、これも前回の「ホルンの入り」同様、聴けばすぐに分かることなのだが、フルートが奏でる第2主題そしてその後弦楽器が追従していくのだが、そのフルートの第2主題の第2メロディのところ「レ・ミ・レ・ド・シ・レ」ド・レ・ド・ラ・ファ・ミ・レのところの吹き方が、2種類、小生のニックネームは。

①レー・ミ・レー・ド・シ・レーと吹くもの=「優雅」な吹き方=(旧)
「新世界」を聴く・・ややこしくて良く分からない「版」の問題_d0063263_1572116.jpg
②レ‐・ミ・レ‐・ド・シ・レーーと吹くもの=「クッキリ」した吹き方=(新)
「新世界」を聴く・・ややこしくて良く分からない「版」の問題_d0063263_1575226.jpg


分かりにくくて恐縮だが、フルートの吹き方に以上の2つ有るということである。実はその後に同じメロディを奏でる弦パートの弾き方や「提示部」「再現部」での「リズム」にも差異があるのだが、指揮者の解釈と楽譜の教会が難しく、余りにもややこしくて、小生には理解し辛いいことなので、ここでは話題にはしないでおく。
有る情報からはこの部分の違いも楽譜の「版」の違いによるものだという。

大変大まかで、演奏する人から顰蹙を買いそうだが、大胆にかつ分かりやすく整理すると

(旧)「ホルン」3拍目入り+フルート「優雅」が長い歴史の楽譜・・・出版社「ジムロック?」
(新」)「ホルン」2拍目入り+フルート「クッキリ」が「原典版」=「改訂版」の楽譜


ざっとこのような仕分けになる・・・のだが、実際はそんなに簡単・単純なことではないことは多くの演奏を聴けばよく分かる
なぜならばそこにウエイトの非常に大きい指揮者の「解釈」が厳然として存在しているからである。
しかしこういう点に少し注意を払って聞くと、新たな発見や、楽しさも味わえることになるのである。「新旧」の楽譜をミクスしたり、楽器を重ねたり、ティンパニーの音を付け足したり、さまざまなことをやっていることが、(楽譜が読めなくても)見えてくることは多いものである。

「新世界」を聴く・・ややこしくて良く分からない「版」の問題_d0063263_15183774.jpgいろいろ書いていたら演奏について書く余裕がなくなってきたので、其れは次回に。
次回は「新世界」に最も似つかわしくない指揮者「ベーム」を取り上げる予定です。
「ベームの意外性」に期待してください。

by noanoa1970 | 2006-01-05 08:20 | 新世界を聴く | Comments(0)