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第9いろいろ・・・クルト・マズア

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ゲヴァントハウス管弦楽団の音が「コンヴィチュニー」時代の音色からどのような変貌を遂げたのかに興味があって入手したベト全中の1枚。
小生は「コンヴィチュニー」時代のゲヴァントハウスの音色が妙にすきなのである。

余り変わっていないことを期待して聞いてみたが、やはり「コンヴィチュニー」時代の其れとはかなり異なっていた。しかしこれはいたし方あるまい。いかに伝統ある旧東ドイツのオケとはいえ、新しい時代に即した音、まして指揮者もメンバーもコンヴィチュニー時代とは違うのだから当たり前であろう。コンヴィチュニーの時代からほぼ20年以上経っている。

しかしながらところどころに当時の面影は残っており、弦のボウイングに余りヴィヴラートを掛けていないことや、木管楽器の音色は昔をしのばせるものがあった。
そしてマズア盤の第9のソリストは録音当時では世界のベストメンバーといっても良いほどの人たちであるので改めて驚くとともに期待して聴いた。

マズアの棒捌きは文句のつけようの無いものであり、それなりに良い音楽を聞かせてくれているが何か一味欠けているような感じが否めない。
其れは何かと問われると良く分からないものがあるのだが、・・・・思い切りに少々欠けること、手綱捌きは上手なのだが、八方美人的というか、意志薄弱というか、これぞマズア・・・というもの希薄のようにどうしても思えるのだ。
一体何が原因なのだろう。

反面面白いと思ったのは2楽章のティンパニの連打の部分で、ティンパニに強弱の表情を意識的につけていること、そして合唱に少年合唱団を起用していることである。
第9のティンパニに表情を与える=だんだんデクレッシェンド(ディミニュエンド)していく・・・なんていう発想は他の指揮者では余り見たことが無いし、合唱の恐らく高域部分に何らかの意図を持って・・・(推測であるが)、女性コーラスのヴィヴラートを拒否したのではないだろうかと考えるのである。

オケにかなり苦心して表情を与える努力の跡が伺える。マズアは昔のゲヴァントハウスの音色を意識していたのであろうか?
1楽章冒頭の漣のような弦の強弱ははコンヴィチュニーの表情付けに良く似ている。
それならいっそうのことコンヴィチュニーのように「ノンヴィヴラート奏法」で演奏すればよいのに・・・などと思ってしまう。

独唱陣はいずれも優秀、これは大成功である。しかし少年合唱団の起用は、少し不安定なところが聞こえてきて着想は良いのだがやはり難しい問題が残る。しかし狙い通りなのかとても清清しく聞こえ、宗教性をも感じることになう。

逆説じみた表現だが、マズアがコンヴィチュニー時代のゲヴァントハウスの音から完全に自分を開放することが出来たとしたら、一皮も2皮も剥けたマズアの音楽が可能だったたのではなかろうか。
楽譜の詳細な研究の成果が齎すオリジナリティは評価できるけれど、優等生的で、今ひとつ音楽に勢いがないのが残念である。

マズアにとっては余りにも重たい「ゲヴァントハウスの伝統」であったのかもしれない。

by noanoa1970 | 2005-12-08 09:05 | 第9を聴く | Comments(6)

Commented by 2楽章のティンパニの連打の部分 at 2009-12-22 10:16 x
「2楽章のティンパニの連打の部分で、ティンパニに強弱の表情を意識的につけている」
↓ ↓ ↓
プロイセン国立図書館に残っている自筆スコアがそうなっていて、それをそのまま生かしているとのこと!
Commented by noanoa1970 at 2009-12-22 18:54
コメントありがとうございます。
そうするとマズアは、様々な版の楽譜を十分検討したということになるかと思います。自筆スコアを見たことがありませんで、機会があれば見たいと思っています。情報ありがとうございます。
Commented by たくぽん at 2009-12-25 11:42 x
確かにこの人は、スタジオ録音だと非常に地味~な演奏ですね。
しかし、ライヴだとそれなりに力のこもった(熱演とまでは・・・)演奏をしてくれます。特に、1981年10月8日の新ゲヴァントハウスこけら落としライヴの第9は、非常に安定した優れた演奏です(隠れ名盤としてよくあげられます)。独唱はソプラノとアルト以外は貴殿のCDと同じです。
このライヴでは、児童合唱が絶妙な神々しさを発揮しており、私の知る限りではもっとも崇高な合唱です。この合唱がなければ、正統派ではあるがいまいち特色のない演奏、として通り過ぎてしまったかもしれませんが、私にとって第9のBest盤のひとつです。暖かく心が満たされていきます。
Commented by noanoa1970 at 2009-12-26 07:36
たくぽんさんコメントありがとうございます。

1981年10月8日の新ゲヴァントハウスこけら落としライヴの第9ぜひとも聴いてみたいと思います。
スタジオ録音とライブでは相当違う演奏をすることがあるので、期待しています。
また今年はマズアがN響を古第9があり、―そこでも少年合唱を起用するという話ですから、こちらも見ものですね。
Commented by たくぽん at 2009-12-26 20:09 x
本日26日、その第9聴いてまいりました。
予想通り、すばらしい演奏でした。初日にはトラブルがあったそうなので、最終日を選んでやはりよかったと思います。
マズアには、N響でも読響でもいいので、日本で重厚な音楽をまた聞かせてほしいと切実に願います。
Commented by noanoa1970 at 2009-12-27 11:03
生を聞かれたとのこと。
それは良かったですね。
なまですと感動もひとしおのことでしょう。
初日のトラブルとは、3楽章の出だしをストップさせたということですが、TVではそのことがまったくわからないようにカットされていました。
ただ3楽章の開始からしばらくは、同館ゲ手も速すぎのテンポだったので、不思議に思っていましたが、多分トラブルの影響があったのでしょう。小生の印象は、思いのほかザッハリヒであったということと、少年少女合唱がうまく生かされてなかった・・・CDではその特徴が出ていただけに、残念なことでした。