人気ブログランキング | 話題のタグを見る

フォーレのレクイエム

フォーレのレクイエム_d0063263_18594692.jpg
フランスの伝説的録音技師アンドレ・シャルランが興したレーベルCHARLINレコードをご存知だろうか。
シャルランといえば「ワンポイントマイク」録音によってなされた優秀録音で1960年代当時名をはせたものであった。このCDは1990年代だったと思うが、見覚えにお有る懐かしいジャケットのCDがあったのでよく見ると、なんとシャルランレコードのCD復刻、其れも1枚1000円と超安価であった。東京の「ヴィーナスレコード」というところからの発売である。

シャルランの録音したものはほとんどがその演奏者は知らない名前が多かった、このレクイエムの演奏もご多分に漏れずである。小生はむかし1枚だけシャルランレコードを購入したことがあり、それは「ヴィヴァルディ:四季」で「アルド・チェッカート」指揮「ミラノ・アンジェリクム室内合奏団」、「フランコ・グッリ(Vn)」、・・・ヴァイオリンのグッリ以外は無名に近い人たちであった。グッリは「ストラディヴァリウス」の「マレシャル・ペルティエ」を用いているといい、「クレモナの栄光」というアルバムを出していた人である。「イ・ムジチ」の演奏しか知らない人が気の毒なほど、この演奏は優れた録音に支えられて生命の息吹をも感じさせてくれるほど素晴らしい。
最上のLPが持つ倍音成分を思う存分聞かせる録音であり、ヴァイオリンもチェンバロの音も筆舌に尽くしがたい。
フォーレのレクイエム_d0063263_1849543.jpg


CDに復刻されたレクイエムを聴いて正直ガッカリした・・・というのは、かって聴いたシャルランの鮮烈な録音の姿かたちもなかったからである。
ヴィヴァルディを引っ張り出して聞いてみたが、LPでは鮮烈な音と、奥行きが感じられこの技術者・・・いや録音芸術家の録音再生音楽への強い意志を感じさせるものであることを再確認したのである。
しかもこのCDは確かにスクラッチノイズを拾っている痕跡が聞こえる。・・・・なんということか、マスターテープからではなく、LPからCD復刻したものではないだろうかという疑問が、そのとき膨らんだ。

有る記事に以下のような記述があるのを発見した。
『シャルランが制作した音楽録音史上に残る貴重なマスター・テープは、なんと「無知なフランス税関吏の手によって「無価値」と判定され、他のゴミとともに海洋投棄」されてしまったらしい・・・。そのため現在のCDはそのサブ・マスターからのコピーということになる。』

サブマスターならまだしも、LPの音源を復刻したこのCD、10点ほど出ていたが、1枚で購入をやめた。マスターテープが喪失してしまったことは、いくらレマスター技術が進んだ今日とはいえ、致命的である。
であるからLPが数万円で取り引き去れるのだろう。フルベンの第9の例もあるようだから、もう少し良い状態のLPで優れた芸術的技術者によって今一度復刻していただきたいと切に願うものである。
LPで聴きたい録音である。CDでは奥行きも、鮮烈な音も聞こえてこない。フォーレの香りがどうしてもごく普通のものになってしまっている。至極残念だ。人の声の深さ、凄さをもっと味わうことができるのはやはりLPなのであろう。

アーン・マリー・ブランザ(S)
ピエール・モレ(Br)
エミール・マルタン指揮
ラムルー管
聖エスターシュ聖歌隊

by noanoa1970 | 2005-09-19 10:10 | 宗教曲を聴く