白鳥の肉を焼く男

ヒンデミットの「白鳥の肉を焼く男」は
タイトルからはかなり際どいものを想像させ、狩猟民が白鳥を捕獲しその肉を食べている場面を想像してしまう。

しかしこれはヒンデミットのヴィオラ協奏曲の3曲目、「あなたは、白鳥を食べる人ではないですよね」という、ドイツ民謡が使われているからだそうだ。
誰がタイトルをそう付けたのか、ドイツ民謡だそうだから北方ゲルマン民族に白鳥を食べる風習があったのだろうかなどと考えてしまった。

調べた範囲では、イヌイットにはそういう食習慣があったようだし、中国でもあったらしい。
しかし現在は禁止されているという。

音楽自体は美しいもので、民謡が土台のせいか、ヒンデミットにしては非常に聴きやすい。


追記
民謡というのが気になったのでその出自のヒントがないか、調べていたら、アイルランドの古民話に白鳥の話が出てきた。
継母が前妻の娘の美しさを妬んで、彼女たち3人に呪いを掛ける。
それは近くの湖に300年、そのあと北の湖で300年さらに南の湖に300年過ごさねば人間に戻れないというもの、本物の白鳥たちのおかげを持って紆余曲折で呪いが解ける。
ローエングリン、さまよえるオランダ人の話と少し似たところがある。

さらには、有る嵐の時に風雨を防ごうと白いエプロンを頭からかぶった婚約者の婦人を白鳥と間違えて射殺してしまい、裁判にかけられたが、死んだ婦人が霊となって出てきて、「悪いのは私です、白鳥のように白い服を着ていたことが・・・」といって、証言したので男が罪を逃れたという話。

このことが歌になっていて、「銃をもった若い鳥撃ち諸君、日暮れ時には猟に出るなよ、ぼくもむかしは鳥撃ちだったんだが、恋人を白鳥とまちがえて撃ってしまったんだ。」 という内容になっている。
以上から白鳥を狩猟の対象にしていたことがわかる。
そして、自分で食べたか誰かに売ったか、いずれにしろ食料にしたと考えられる。

英国、オーストラリア、米国でも歌われているのは、おそらくアイルランドからの移民が持ち込んだものだが、ドイツに伝わった可能セリは十分あり得る。
ベートーヴェンもアイルランドの古謡をを編曲したり曲の名称にしたところからも、ゲーテがヘルダーが採取した古謡をもとに作品を作ったりしたことから、ブロードサイド(瓦版)がイギリリスからドーバー海峡を超えてヨーロッパにもたらされたことは、事実であるから、そしてそんな話の内容は、今で言う特ダネ的なもので、異国のあり得ないような話に夢中になっていたというから、民謡のもとになった実話がもたらされたのかもしれない。

ブリテン諸島には、「殺し」・・・母親父親、子供、兄弟同士の殺人事件が多く、しかも国王が子どもや妻に暗殺されたという話が伝わるることがあった。
ブラームスに「エドヴァルト」」というピアノバラード曲があるが、これは恐らくエドワード2世のことではないかと思すいさつするのだが、これもブロードサイドによって伝えられたものではないだろうか。
音楽は運命の動機がクレッシェンドで使われる曲で、この話と同じものがブリテン諸島の古謡にもなっている。

「ヘルダー」が採取したスコティッシュバラッド「エドヴァルト」の父親殺しは、エドワード3世が母親イザベルにそそのかされて、愚か者の父親エドワード2世を暗殺。
母親の、夫殺しの手伝いをしてしまったエドワードが、母親とその愛人の陰謀に気づき、やがて二人を処刑するにいたる・・・・その辺りの悲劇を当時のスコットランドとイングランド、アイルランドを行ったりきたりしたブロードサイドたちが広めたお話であろう。
そしてヨーロッパ大陸に伝わるのは、母親のエドワード2世の王妃イザベルは、フランス王フィリップ4世の娘だから当然と言えそうだ。

音楽は母親と息子の対話の様子が、運命の動機がクレッシェンドしていおく様子で尋常ならざるものを感じる。

ブラームスは2重唱にしてもいるが、母親と息子の会話で成り立っていて、こちらのほうが劇的な感じだ。
ドイツ語の下に英語訳が出ているのでなんとかわかる。


白鳥と間違えられて婚約者に殺された「モリーボウン」
歌詞の内容は色いろあるようだが、アリソン・クラウスとトチーフタンズの歌があった。

白鳥の肉を焼く男の謎は深まるが、こういう記事も書いたので興味あればどうぞ。



[PR]

by noanoa1970 | 2012-11-17 17:43 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by Abend5522 at 2012-11-17 21:48
sawyer様、こんばんは。
直訳すると「白鳥回し」ですね。長い串に刺した白鳥を回しながら焼く者のことでしょうか。複合名詞になっているということは、それを仕事にしている者がいたことを思わせますね。
Commented by cyubaki3 at 2012-11-18 01:07 x
ヴィオラで思い出しましたが、作曲家がヴィオラ協奏曲やヴィオラ・ソナタを書くと亡くなるというジンクスがあるようですね。単なる偶然なんでしょうけど。
Commented by noanoa1970 at 2012-11-18 05:19
Abend様、おはようございます。
白鳥を食料にして浮いたという痕跡が、アイルランドの古謡にありました。追記として書き足たしました。
Commented by noanoa1970 at 2012-11-18 05:21
cyubaki3サン、お早うございます。
初耳でした。一度調べてみます。