モーツァルト41番「ジュピター」交響曲雑感

ドイツ国歌(ドイツの歌)のおおもとは、クロアチア地方の民謡で、それにアウグスト・ハインリヒ・ホフマンが詩をつけたものだといわれている。
さらに讃美歌194番「栄えに満ちたる」のメロディーとしても使われている。

このメロディーは、ハイドンが弦楽四重奏77番「皇帝」2楽章に引用したので有名になり、現在サッカーなど開始前の儀式・・・・国歌演奏でも流されるから、世界中に広まり、メロディーを知っている人は多いだろう。

「ドーレミレーファミーレシドー」という音となるが、これはモーツァルトの41番「ジュピター」交響曲の終楽章の主題と非常に類似する。

そのフレーズは「ジュピター音型」と言われていることは、コアなファンならご存知であろう。
今は亡き掲示板「クラシック招き猫」でも話題となり、ほかの曲でこの音型が使われていると思しきものがあるか否かという設問に、小生が答えたものがハイドンであった。

ジュピター音型「ドーレファーミー」、ラララララー・・・と続く4つの音からできていて、モーツァルト自身の音楽を含め古来多くに使われたという。

ハイドンの弦楽四重奏皇帝のメロディーと比較すると。

ドーレファーミー
ドーレミレーファミーレドー
ジュピター音型には、たった1音「シ」がないだけであることがわかる。

上のハイドンおよびドイツ国歌をよく見聞きすると、モーツァルトの終楽章の主題、つまり「ジュピター音型」に非常によく似ていることに気が付く。

もっとも、ジュピター音型「ドーレファミー」は、ドレミファの4つの音の順番を、というよりミとファを入れ替えただけのものだ。

しかしこの入れ替えは、おそらくモーツァルトの直感のなせる業であろうが、このフレーズは常人ではたぶん思いつけないもののように思える。
そしてこの奇異に聞こえるフレーズだからこそ、あの壮大なベートーヴェンの「エロイカ」に勝るとも劣らない大フーガを形成するもとになれたのだと小生は思っている。

終楽章のある部分を瞬間的に聞くと、今でもベートーヴェンと混同することがあるぐらい、終楽章ジュピター音型のフーガは凄い。

最初ハイドンからの引用かと思ったが、ハイドンの「皇帝」は1797年、モーツァルトの41番は1788に作られたから、そんなわけはなく、可能性とすればクロアチア民謡(あるいは周辺諸国・民族)からの引用だが、果たしてどうだろうか。

モーツァルトは諸外国に演奏旅行を頻繁にしたことから、ひょっとすると、どこかで耳に入ったのかもしれない。
イタリアに行くのにクロアチア他異民族の文化圏を通った可能性は高い。

がしかし小生は、ジュピター音型は引用ではなく、モーツァルト自身のちょっとした素晴らしいひらめきの発想ではないかと今は思っている。
2つの音を入れ替えるだけで、元のフレーズからは想像もできないぐらいのオリジナリティがあり、単純だが常人の発想ではない。
こういうことがいとも簡単にできてしまえるところが、モーツァルトをモーツァルト足らしめる所以であろう。

モーツァルト自身このフレーズは大発見と思ったのであろう、だからこのフレーズを元にフーガにして4楽章を作り上げた。
特にフーガには作曲家の熱い心が漲ることが多いと小生は常〃感じているが、そのことは「神の後にすがる」というものから、崇高で荘厳の象徴として使われるかのようになっていったのではないかと仮定したい。
それがこのジュピター、あるいはベートーヴェンのエロイカに象徴されるのだと思うことがある。

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ただしこの曲の演奏としてはフーガといえど大仰にならず、まるでモーツァルト自身が演奏指揮したかのように、流れの中に身をゆだねているかのような演奏が好みである。

もちろんモーツァルトの音楽的特徴も、さらに典雅をも潜ませたものとして、モーツァルト演奏のリファーレンスといっても過言でない、ベルンハルト・パウムガルトナーが、ザルツブルグ・モーツアルティウム音楽院管を指揮した演奏を上げたい。

この演奏は小生が初めて全曲を聞いたものでもあるから、刷り込みだと言われても仕方ないが、1962年からCD復刻される、50年にわたって聴いてきたものだ。

ワルターも、フリッチャイも、カラヤンも、ベームも、マークもよい演奏であると思うが、何回も演奏し録音した彼らと異なり1発勝負でこれだけの演奏が可能なパウムガルトナーはモーツァルト研究家としての自身の表れであろう。

モーツアルティウム管は出来不出来が割と激しい…というのは学生だけでの編成と、社会人との混成、そして卒業生のベテランを招集した時ではまるで違う。

幸いにこの録音は、パウムガルトナーが乾坤一擲で録音したものと思うほど、演奏の質が良いから、優秀な卒業生で編成したものであるとの想像ができる。

パソコンDSPでは「パ」と「バ」が似通っているせいか、そもそも知られてないせいか、今でもルドルフ・バウムガルトナーと混同するものを見ることがあるが、困ったものだ。


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by noanoa1970 | 2012-07-07 21:00 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(1)

Commented by Abend5522 at 2012-07-11 22:16
sawyer様、こんばんは。
ジュピター音型は、モーツァルト35年生涯のモティーフというべきで、作曲家多しといえども、このような例は他にマーラーしか知りません。まこと、希有のことと思います。ジュピター音型は耳になじみやすいので、他の作曲家の作品にそれを聴取できるかを大いに期待させてくれますね。