ブログ連動企画第3弾ストコフスキーの「ブラ4」幻聴記

ブログの盟友abendさんとの意見一致のもと、ブログ連動企画という実験に踏み切るnことになって本日は第3回目。

この企画は最近発売になったストコフスキーのBOX集を共通て所有し、聴きだしつつあることから、このBOXに収録されている任意の曲を交代で指名しながら聞いた感想や想いなどをブログにUPしていくものだ。

第1弾は小生が先行し、「新世界より」。
第2弾はabendさんがブログ連動企画第2弾 ストコフスキーの「ワルキューレの騎行」 煩悩録 として、第3幕前奏曲のストコフスキー版での「ワルキューレの騎行」を投稿していただいた。
8人のワルキューレの歌声がはいっているのが特徴のストコ版は、彼女たちの声とオケを合わせてたものにすることで、劇中音楽とオケ版のデメリットをなくし、より独立性を重視する目的で、ストコフスキーは人間の声をも楽器として一体化してみたのではないかという推論であった。

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小生の番、第3弾はブラームスの4番という大物の御指名だ。
これは相当苦労する覚悟でお受けしたが、ストコ盤はまだ2回しか聞いてないので、あと数回聴いたのちに書いていくことにする。

ストコフスキーが、自ら創設したアメリカ交響楽団を辞任したのが、1973年のこと。
何があったのかは推察するしかないのだが、故郷でもあるイギリスでは、ウォルター・レッグがEMIの録音専用オケとして、それまで独裁的に運営してきた、フィルハーモニア管弦楽団の自由独立運動でレッグから遠ざかり、クレンペラーをTOPにして活躍することになった。
1964年独立したニューフィルハーモニア管は幅広い演奏活動を行い、とりわけて印象的な録音は、クレンペラーの「大地の歌」で、ヴンダーリッヒとルートヴィッヒを歌い手にし、1964から66にかけて録音された。

64年はまだフィルハーモニア管弦楽団であったが66年にはニューフィルハーモニアとなったから、音盤には2つのオケ名が記されることになった。
小生が思う音楽録音史上最高の「大地の歌」である。
いわば独立戦争的なものが恐らくあったであろう、オケの混乱を抑えての素晴らしい音楽は、クレンペラーの神業的統率力以外のなにものでもないだろう。

そんなクレンペラーだが、1972年1月、87歳の彼はさすがに体が衰えたのだろう、公式に引退を宣言、そして翌1973年7月6日死去してしまった。
それで楽団は、1972年12月に初共演を行ったばかりの新進気鋭のイタリア人、リッカルド・ムーティに常任指揮者就任を要請する。

その年1973年はクレンペラー死去によるムーティの常任指揮者就任とストコフスキーがアメリカ交響楽団を辞任しイギリス帰国したのにはなにか因果関係があるのだろうか。
小生はまだ若きムーティをサポートするための重要な地位に、密かにニューフィルハーモニアが招聘したのではないかと想像している。

このブラームスは、ストコフスキー帰国後の翌年1974年.6月17から20日にかけて録音され、同曲でのライブコンサートもやったというが、これはひょっとしたらクレンペラーの1周期記念コンサートおよび録音ではなかったのだろうか。

そして1976年、94歳の時にはCBSコロンビアと、契約満了時に100歳を迎える6年契約を結んだ。
これはお互いがもっと短期間に終わることを承知で結んだ契約と考えるべきであろうが、それにしてもこの指揮者の意欲は尋常ではなかったと思われる。

そんな風に考えつつ音楽を聴くと、指揮ぶりにおいて「テンポ」が速いとか、例によって楽譜を改ざんしたとか、音の揺れが激しいとか、予想のつかないようなアーティキュレーションだとかのことは、ほんの現象面的な捉え方ににしか過ぎないことになる。

全く理にかなってないような、いわば自由奔放、したがってオケがそれに耐えられないということは、なかったわけではないが、オケのメンバーがストコフスキーの指揮、そして解釈や表現の基本姿勢を理解した瞬間に奇跡が起きる。
レッグ独裁おから民主化したオケ、おそらく全員一致で、尊崇するストコフスキーを招いたのではないか、そうでなければこんな演奏ができるはずはない。

まず出だしのテンポは今まで聴いたブラ4の中でも相当早く、その速さだけを指摘することが多いが、その速さを、大胆な強弱によって速度が速いということを相殺している。

彼の音楽を今まで聴いてきて気が付くのは、シンコペーションを随所に入れることと、休符を付け加えたり引いたりすることだが、ストコフスキーはこのことによって、今までたぶん誰も考え付かないような新たな自分の思いを描いた。

ブラームスの4番は、R・シュトラウスが評価したのに対し、ヴォルフやマーラーは酷評している。
しかしそれらはおそらく作曲技法に重点を置いたものであり、当時の作曲技法からは斬新さがないとか、およそ聴衆の評価とは別物で、たぶんに政治的な話であったとも推測される。
反対評価の音楽をもって、そのことが特徴づけられる。

これは今でもブラームス派VSワーグナー派の対立図式として語られることが多い。

しかしその両者もこの曲の本質的なるものを掴めない上での論争であったであろうことは、その時の楽曲そのものの解釈と理解がほとんど語られなく、時代錯誤かそうでなく形式美だ、などの音楽手法の問題にすり替えられたことだが、それは不幸極まりないことであったように小生は思っている。

この曲の終楽章はハンス・フォン・ビューローがバッハのカンタータを引用して作ったらどうだという助言のもとに作られたという。
多くはこのことをブラームスのバッハ引用だというが、聞くとわかるが引用元の150盤のカンタータを聞いて、それが終楽章のシャコンヌに使われたとすぐにわかる人はいないと思うほど単純なものではない。

バッハもおそらくそうではないかと思うが、ブラームスは1つのフレーズを逆にすることで素晴らしいフレーズに置き換えることの天才であった。

聴いていて思いついたのが「ソドレミ」音型。
以前のブログでも指摘したことがあったが、例えばP5重奏の冒頭、眠りの精、大学祝典序曲の民謡風メロディ、さらにブラ1終楽章ホルンが吹く旋律こそソドレミをひっくり返したミレドソである。

ある音楽番組でやっていたことから注意して聴いていて発見したもので、このほかにもまだまだ多いが、おそらくそれはケルトかジプシーの音楽に多様される音型だったのではないかと小生は推測している。
小生は4番の交響曲を「バッハへのオマージュ」であると仮定したい。

さらにそういうブラームスの作曲意図を解したストコフスキーは、クレンペラーに対するオマージュとして、クレンペラーの周忌に当たり、この曲を演奏録音したのではないだろうか。
この曲には1974年5月4日のライブ演奏もあり、クレンペラーが作曲したメリーワルツを取り上げていることからしても、クレンペラー追悼であったことはほぼ間違いがないのではなかろうか。

やがてそうなるであろう自分をも想定した、演奏であるから、その感情の起伏を思い切り表現することになった。

ストコフスキーという指揮者はどのような曲であれ、そこに自分の想いを解釈とし、その表現法として、思いのたけのアゴーギグ・・・リズムの変化、ポルタメント、シンコペーションや緩急、静と動、休符など情念を表現できるすべての演奏技術をを使うようになったと思うが、それが往々にして作曲家が残した楽譜と一致せず、海千山千などという言葉で矮小化されることが多いのは残念なことだ。

いったい彼の紡ぎだす音楽を聴いていて、音楽が破たんしたことを経験した人がおられるのだろうか。
もしそういうことがあれば、それはオケがストコフスキーの狙いを理解しなかったことに他ならない。

そいう意味でもこのニューフィルハモニア管との演奏録音は、ストコフスキーの想いや狙いそして何よりも尊敬しよきリバルでもあったクレンペラーの、そしてブラームスがバッハへの想いをそっと塗り込めた音楽を、オマージュという同次元の意味合いで捉え解釈した演奏ではないかと思う。

でなければ常人の感性では追従することが不可能なぐらいのあのような複雑なアーティキュレーション、テンポの大胆な予測不能の揺り動かしにピッタリ着いていけるはずがない。

ニューフィルハーモニア管はそもそもフィルハーモニア時代から相当の実力があるオケと思うが、この演奏録音での過激なほどの急速リズム変化の展開でも、まったく破たんすることがないのは、ひとえにストコフスキーの想いを全員が共有し理解していたからであろう。

ストコフスキーはそういうことができる数少ない指揮者の1人であった。

自己の感性と理屈がシナジー効果が高いレベルで発揮された、指揮、演奏ともに素晴らしい録音であるといってよいだろう。

小生はブラームスの交響曲で最も聞く回数が少ないのが4番であるが、手持ちの10種類ほどの演奏中の白眉であると評価しよう。

音楽に集中でき、聴き入るごとにいつの間にか終曲になっていることが多い録音である。
終楽章が良く話題になる4番だが、小生は2楽章こそがこの曲の本質ではないかと思っている。

今回、楽曲の内部には届かないものしか書けなかったが、こんな思いのする音盤であった。
大物ゆえに都合8回聞いてしまったが、まだ足りないであろうし、引き続き聴いていきたい音盤である。

abend様
次はやはり大物、№1、ベートーヴェンの交響曲3番「英雄」はいかがでしょう。
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by noanoa1970 | 2012-03-03 22:22 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(3)

Commented by Abend5522 at 2012-03-04 22:27
sawyer様、こんばんは。
不覚にも風邪をひいてしまいました。
「英雄」、受けさせていただきます。
Commented by noanoa1970 at 2012-03-04 23:15
Abend様
体調完全にしないと手ごわいかも・・・(笑)
急ぎませんからごゆるりとどうぞ。
Commented by Abend5522 at 2012-03-04 23:30
sawyer様
ありがとうございます。一応3回聴いているのですが、なかなか手強いストコでして。