60年代初期のレコード全集の内容

前回なつかしの全集を、オークションで落札したことを書いたが、当時の全集にどんな曲が入っていたかを紹介したいと思う。

クラシック初心者向け、あるいはファミリー向けといったコンゼプトで編集されたと思われるが、当時のプランナーがどのような曲を、50枚という枠組みの中」に押し込めたのか、其れを探って、其のころのクラシック音楽事情を推し量ることもできるはずである。

また今ならどんな選曲がふさわしいか、はたしてほぼ同じようになってしまうのかも、ついでに考えてみたいと思う。
そしてさらに、皆さんならどういう選曲をするのかも知りたいところです。

本全集収容曲
交響曲編
ハイドン:驚愕、太鼓連打、軍隊。モーツァルト:35、36、40、41番。ベートーヴェン:3番、5番、6番、9番。シューベルト:未完成。メンデルスゾーン:イタリア。ブラームス:1番。ドヴォルザーク:新世界。チャイコフスキー:5、6番。
使用されたLP14枚28%

管弦楽曲編
ヘンデル;水上の音楽、王宮の花火。シュトラウス:ウインナーワルツ集。ワーグナー、ヴェルディ:タンホイザー、オランダ人、トロバトーレより抜粋。ロシア音楽名曲:スラブ行進曲、1812年、中央アジア、韃靼人の踊り。グリーグ:ペールギュント1.2組曲。チャイコフスキー:くるみ割り。近代音楽名曲集:ボレロ、パヴァーヌ、牧神、オレンジ。オーケストラの玉手箱:マドンナの宝石間奏曲1.2番、ハンガリア舞曲2.6番、狂詩曲2番、ウイリアムテル序曲。
使用されたLP枚数9枚18%

協奏曲編
ヴィヴァルディ:四季、バッハ:ブランデンブルグ協奏曲3.4.5番。ハイドン&ボッケリーニ:チェロ協奏曲。モーツァルト:ピアノ協奏曲20.23番、ヴァイオリン協奏曲5番。ベートーヴェン:ピアノ協奏曲5番、バイオリン協奏曲。メンチャイ:バイオリン協奏曲。グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲。ブラームス:バイオリン協奏曲。チャイコフスキー:ピアノ協奏曲1番。ドヴォルザーク:チェロ協奏曲。ガーシュイン:ラプソディーインブルー、パリのアメリカ人。
使用されたLP枚数13枚26%

以下室内楽編
ハイドン&モーツァルト:弦楽四重奏セレナーデ、皇帝、狩、アイネクライネ、ベートーヴェン:バイオリンソンタ・クロイツエル、ピアノソナタt:月光熱情悲愴、シューベルト:鱒、死と乙女、シューマン:子供の情景、謝肉祭、チャイコフスキー:弦楽セレナード。
使用されたLP枚数10枚20%

声楽編
ヴェルディ:椿姫ハイライト、ビゼー:カルメンハイライト、ウエーバー:魔弾の射手ハイライト、シューベルト:美しき水車小屋の娘全曲
使用されたLP枚数4枚8%

交響曲と協奏曲、管弦楽と室内楽がほぼ同じ比率。
声楽は予想通り低く、8%だ。

監修は堀内敬三、志鳥栄八郎、藤原あき、村田武雄が推薦の言葉を書いている。

LPレコードの収容時間からいっても、当時で50枚は多いように見えるが、実際の時間は少なく、2000分から2500分ぐらいだろうから、この時間内になにをチョイスするかは、苦労するとともに、プロデューサーの手腕が発揮されるところだろう。

必用なものは、コンセプト、つまり誰に対してなにを提供するのか、なぜ其の曲を選択したのか、その理由はどこににあるかと言った事象がハキリしないと、音楽史的に見た有名曲を時間内に収めると言うか、既存の音源を使うのだから、時間との駆け引が優先してしまう要素が強くなるだろう。

オーソドックスな選曲だと思うが、本全集でも盤面にアキがたくさんあるものと、余裕が無いものがあり、選曲組み合わせなど、数学的困難が一番あるような予感もする。

オーソドックスで入門編としては悪くない選曲だが、オムニバス盤が6.7枚あるのはもったいない。

ハイドンから1曲モーツァルトから1曲、ベートーヴェンから1曲、チャイコフスキーから1曲抜いて、ベルリオーズ幻想、マーラー巨人、ショスタコーヴィッチ5番を入れたいところ。
管弦楽そのほかのオムニバスをやめて、ドビュッシーの海、リストのレプレリュード、ストラヴィンキー春さい、ムソルグスキー展覧会かリムスキーコルサコフ:シェエラザード、プロコフィエフ:ピーターかロミジュリ、そして宗教音楽に1枚モツレクかフォーレクを入れたい。
イギリス近代音楽が全くないのも気になるところだ。

同じ作曲家の交響曲、協奏曲、管弦楽はダブらせないで、違う作曲家のものをとり入れるほうがよいと言うのが小生のスタンス。
ある程度の音楽史的順序は必要だが、こだわる必要はない。
それでどうしてもほかに入れたいものがあるはずだから、見本盤をつくり、さわりを紹介すればいいと思う。
レコード1枚50分あればかなりの楽曲が紹介できるはず。
其の中で聞きたいと思えば、別に買えばばすむ。
作曲家層が幅広いことは必要条件だろう。
後期ロマンや新古典主義、近代音楽と現代音楽の橋渡しシェ-ンベルク、リヒャルトシュトラウスが全くないのはおかしいしマーラーもブルックナーも聞かせどころを見本盤に入れてもよいだろう。

この全集を聴けばクラシックのなんたるかが理解できるなどと言う、完結された事実誤認の考え方のもので無く、次に聴くための基礎として捉え、今後つながっていくための基礎であるというと言うコンゼプトが強く必要なように思う。
そうでないとすれば、近い将来の購買層が育たないだろうから、クラシック音楽レコード販売上に影響が大きく出ることになる。

これだけ聴けばいい、こう言う錯覚は現に小生の家で起こり、月に1回LPを送ってくる、コンサートホールソサエティという会員制組織をやめてしまうが、その切っ掛けがこの全集であった。

どちらがよかったかは微妙だが、評価の高い演奏家が揃っていたのは、コンサートホールだろう。一度に50枚そろえるより、毎月1枚ずつ60枚になるが、5年かかって揃えその間じっくりと聴くほうがよかったかも知れないが、一概には決め付けがたい。

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by noanoa1970 | 2011-10-21 06:38 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by Abend at 2011-10-21 20:51 x
sawyer様、こんばんは。
声楽編に、『冬の旅』ではなく『美しき水車小屋の娘』が収録されているのがおもしろいですね。約50年も前の全集ですから、今では有名でも、当時の日本で知名度が低かった作品は収録されていないのは当然でしょうが、「菩提樹」を含む『冬の旅』は当時も『水車小屋』より知名度が高かったはずですから、不思議なことですね。収録時間や法的なことが絡んでいたのでしょうか。
Commented by HABABI at 2011-10-21 22:07 x
sawyerさん、こんばんは

私は、中学生の頃、あてがいぶちの演奏(録音)ではなく、それぞれの曲の一番いい演奏を聴こうと思っていたので、この手のシリーズものは購入しませんでした。なけなしの小遣いで、推薦盤を求めていました。
今は、それらのシリーズものより広い範囲の音楽を聴くようになり、演奏も一番いい演奏というものがなくて、それぞれいい演奏があることを知り、かつての“それらのシリーズ”にもいい演奏があることも知りました。
当時のシリーズものの価値が、改めて評価されるように思います。廉価盤も同様ですね。
Commented by noanoa1970 at 2011-10-22 03:09
HABABI さんおはようございます。
中学生時代は、曲目と平行して、演奏者が誰かというのが、ごく少ないクラシック音楽好きな仲間の間で話題になった時で、といっても音盤になったものは、今考えると超有名な人ばかりだったわけですが、そんな中、廉価盤というものが発売さtれる5年以上前に、メジャー路線から1歩2歩外れたとはいえ、中には新譜にち買い物まで寄せ集めた全集は、未だ復刻されてないものがありますから、ものすごく貴重です。小生自身はこの全集のせいで、脱会することになった、コンサートホール。著名な演奏家の音盤を購入することができなくなったため、いやだった時がありました。しかし、今のところ聞いていて嫌になる演奏がないはうれしいことで、近年復刻されたオイロディスクヴィンテージもこの全集には多く含まれています。これから未復刻盤を中心に感想を書いていこうと思っています。幌内敬三さんの挨拶が記載されていますが、やはり「常識」という言葉が出ていて、「啓蒙」「教育」「教養」という考え方がコンセプトにあったことが分かりました。
Commented by noanoa1970 at 2011-10-22 03:37
Abend さまおはようございます。
「冬の旅」なく「水車小屋」、そうです、小生もなんで冬の旅じゃないんだろうと不思議に思っていました。演奏はギーゼン伴奏盤でなく、ブンダーリッヒ/シュトルツェ盤1957年録音、最近復刻されたブンダーリッヒ最初の録音でした。
少年ながら、ブンダーリッヒの美声に聴き入った覚えがあります。
ダスボンデルイスダスミューラーズルストと音だけで意味もわからないまま憶えてしまいました。ブンダーリッヒはすごい歌い手だという認識はこの頃に授かった物でした。その後冬の旅は、ディスカウでなくホッターを購入しましたが、十字屋に勤務していた出谷敬が、プライやディスカウでなく、ホッターの冬の旅ありますかといったことに、珍らしいものを聴くねと驚いたので、そのまま訂正スルことをしなかっただけのことでした。本来プライというところをホッターと間違って言ってしまっただけのことでしたが。
冬旅も水車小屋もLPレコード1枚に収録できますから、時間的な問題では無さそうです。安く使えてそこそこの演奏としてモノーラル録音のブンダーリッヒ旧盤の水車小屋に落ち着いたたのでしょう。