女性ヴォーカルCD、LP聴き比べ

ドリー・パートン、エミルー・ハリス、リンダ・ロンシュタットが一同に会したアルバム「TRIO」は、ジョージマッセンバーグがプロデュース録音したもので、長い間小生の愛聴盤になっているものだ。

LP発売時にすぐに購入し、車で聞くためにカセットも購入、ついでCD復刻されると、それも入手したという非クラシック系統では珍しいことであったが、それほど気に入っていたということなのだろう。

とにかく何百回も聴いたから、隅の隅までわかっているつもりの音盤であるが、再現の難しい所があったり、ハーモニー時に少し荒れる所が散見されたりして、とにかく再生装置によってこの録音の真価は、よくも悪くも大きく左右され易いのは事実のようだ。

録音には相当神経を使ったことが予想されるのは、3人の個性的な声は、ソロの時にはそれほどでもないが、ハーモニーになると、事情が一変するほど困難を極めると思われるからだ。

さすがに彼女たちはハーモニーそのものは、かなりの水準を行っているが、あまりにも個性的すぎる3人の声質が、「調和」からは少し遠いように聴こえて仕方が無い。

たっぷりのビブラートで可愛い小悪魔のようにコロコロ転がすように歌うドリー、よく通る鼻にかけたビブラートレスで強めに歌うリンダ、美しい声だが高域に独特の掠れを持つエミルー。

ソロの時にはそれぞれの個性が発揮され、格別問題にはならないが、残り2人がつけるハーモニー、更に3人のハーモニーになると、そしてソロがリンダ以外の場合、つまりバックにリンダがいる場合には特に、高域の強い声が交じる所で、調整が良くないオーディオ装置では、歪みによるザラつきが出やすくなるからハーモニーが乱れているように聞こえることがあった。

お互いの声がある周波数領域で干渉を起こして、それが音を濁らせているのが原因ではないかと思うが、メインSPがQUADの時でも、総合調整が完全ではなかったのか、録音のせいなのか、音量を上げると高音の強い声の場面で歪が増してきて、とても聴きづらくなる経験をしたが、今回のほぼうまくいった調整下での再生ではどうなるか、さらにヴォーカルの再生にはCDとLPどちらが適するのか。

そして可能であれば、小生の持論の「ヴォーカルはアナログに限る」「アナログ録音はアナログで」「デジタル録音はデジタルで」ということが事実か否かも探ってみたいと思う。

たった1種類の音盤だが、幸いLP、CD両方所有しているし、声の質の全く異なる3人のヴォーカルと、おまけに彼女たち異声のバックコーラスまで聴くことができるから、比較には打って付けだ。

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このアルバムはCDもLPもしばらく聴いてなく、メインスピーカーをYAMAHAにしてからは、初めて聞くことになる。

録音に携わったのが、ジョージマッセンバーグだから、彼の耳と技術に瑕疵がないことを前提にすれば、良くない兆候は、すべて視聴者側の音響装置の問題であり、録音メディアに起因するものである。(自分の耳の衰えはこの際考慮しないでおく)

アナログ録音はアナログディスクで、人間の声はアナログディスクで聞くのが良いということを、経験的には知ってきていたが、よく言われる「ピアノの音」はデジタルが断然良いというのは一般論にすぎず、個別の話になると、そうばかりは言えなくて、アナログ録音アナログ再生で素晴らしいピアノが存在するのは、厳然とした事実である。

しかし小生は、何でもかんでもアナログディスクが良いという、アナログ原理主義者ではないが、「究極のデジタルはアナログである」と、勝手な格言めいたものを創作したことがあるように、音質においてデジタルがアナログの音を目指しているのは今のところ事実のようだ。

あまり詳しくはないが、オヴァーサンプリングや48bit96HZ、などもアナログに追いつきたいためのデジタル技術であるといって良いのだと思う。

前置きが長くなったが、試聴結果を記憶があるうちに書いておく。

<再生環境とオーディオ装置>
LP、CDともに国内盤を使用した。。
(オーディオ装置は、厚さ50ミリの木製ラック上部に設置)
プリアンプ:YAMAHA-C2a、フォノ端子100Ω・MC用負荷
パワーアンプ:インナーサウンドESL、8Ω片チャン300W、2Ω1000W供給
アナログプレーヤー:マイクロSX111FV、オーディオクラフトAC-3000MC、DENON-D103、針圧2.6g、プレーヤーは、TAOCの台を噛ませ設置
CD、DVDプレーヤー:パイオニアDV-AX5AVi、中間に1体対1トランスをはさんでノイズカット対策済
スピーカー:YAMAHA NS1000、TAOC2段積み台に設置、アッテネーターミッド・ハイともに-7db
装置設置場所:オーディオ専用室として作った防音と音処理をした15畳、天井高3㍍、補強した床、2重窓で音響対策済み
以上を今までで最上の状態に調整できたと思う装置を使って試聴した。

<試聴内容>
CD、LPともに通しで3回づつ。
3人それぞれのソロパートセクションを2回づつ。
3人のハーモニーが聴ける最初のトラック「ペイン・オブ・ラヴィング・ユー」を3回。
以上を聞いた結果の印象を上げてておく。

<総合インプレッション>
CD:声楽とバックそれぞれの粒立ちがハッキリしているのは良いが、空気感に乏しいので、あたかも別録音したものを合わせたように聞こえる。
音がスッキリしているのは悪くないが、音のマッシヴさに若干欠け、トーンコンのBASSをブーストしたくなる。
バックコーラスが平坦に聞こえ、メインヴォーカルとの距離感がないように聞こえる。
破綻は全くないのだが、全体に伸びやか感がないように聞こえる。
音が全体的に中央に寄っていて左右の音の広がりが狭いが、音の定位はしっかり保たれている。
3人のハーモニーは問題なく確認できるがエミルーの声が埋もれ勝ちで、多少聴きづらいことがあった。
「ワイルドフラワー」におけるオートハープの音が電子楽器のようにに響く。
フラットマンドリンのリズムが聞き取れない部分があった。
CDに於いてもリンダの最高音を長く伸ばす部分は、少し歪みっぽいが、周波数の干渉かもしれない。

LP:粒立ちはCD程はないが、すべてが一同に会した録音のように聞こえ、それぞれのパートの繋がりがなめらかで、お互いの息があっているように聞こえるが、多分独立して録音されたものを合わせたのが真実であろうから、CDのほうが事実に近いのかもしれない。アナログの欠点でもあり良さでもある。
やはり音のマッシヴ感はアナログに軍配が上がる。
CDに比べ左右の広がりは、わずかだが広い。
バックコーラスの2人の位置がわかるので、距離感奥行き感の再現性が良い。
エミルーの声はどうしても埋もれがちだが、それでも3人のハーモニーであることは分かりやすい。
「ワイルドフラワー」におけるオートハープは軽やかで明るく聞こえ、ヴィヴィッドに聞こえる。
ヴォリュームを上げた状態での、リンダの最高音で長く引っ張る声はかなりきついが、荒れる一歩手前で修まっているし、少し絞ると解決する。
このことはCDでも同様であったから、装置自体が調整でグレードアップされた結果であろう。。

ドリーの声がより可愛らしくコロコロと転がるように、そして色気と美しさがあるのはLP、CDではほんの少しフラット気味に・・・したがってわずかだが陰に聞こえる。
エミルーの最高音部と低音部で、時々顔を出すかすれた声のリアルな表現はLPが良い、かすれた声のビブラートがよく出ている。
リンダの声はやや強めに出る傾向があるから、スッキリ感があるCDに分があるようだ、しかし最強音の声はCDでもかなり再現が難しいようだ。(ひょっとすると部屋の何かとの周波数干渉が原因かもしれない)
「テリングミーライズ」では最初がエミルー途中からリンダがソロとなるが、入れ替わりがよりハッキリ分かるのはCD、誰かがソロの時、バックの2人がハーモニーパートを入れ替わるのがよりよく分かるのはLP。

聞いていて楽しく感じるのはLPで、何度でも聞きたいという欲求が高まってくる。
3人の声質はCDとLPほぼ同等であるが、奥行き感はLPに分があり、平坦ではあるが、定位感があるのはCDでソロパート時の立ち位置の僅かな違いがわかる。
一番の違いに思われたのは、それぞれのパートの融合状態で、CDは独立してそれぞれを録音して合成したかのようだが、LPではジャムセッション風にその場に一同が会して録音されたような感があった。
しかし、別録音合成が大半だから、録音状態を正確に表現したのはCDかもしれない。
CDはなんら問題がないように聞こえるが、LPと比較すると、「一味の物足りなさ」「音のマッシヴさ」この2点に不満が出てくる。
「聞いていて楽しい」ことがいつも良いと限らないが、聞いていて飽きてくるのが抑えられ、また聞きたいという欲求を満たすことは重要であるが、今回はLPの方に幾らかの優位性があった。

またリンダ以外、特にエミルーの高音部での掠れたビブラート声の再現は、LPが適していたように思う。
リンダはCDが上、ドリーは再現が比較的容易だが、彼女の明るさがよりでるのはLP、陰影が少しつくのがCDという印象であった。

「何度でも聴きたい」というインプレッションを、最大評価メジャメントとすれば、本日の実験の結果では、僅かな差ではあるが(しかしその僅かな差が重要でもあるのだが)LPと言う結果になった。
一方整理整頓された音が、大きな評価ポイントであればCDがよいだろう。

<現在の装置でのリスニングインプレッションレヴュー>
小生の以前の再生装置では、強音時と高域の長い音で少し荒れ気味だったが、今回調整した装置で聞くと、とくにLPでの再現性がUPした。

メインヴォーカルの途中での入れ替わり、バックコーラスの上下のパートの入れ替わりが、よく分かるようになったし、メインヴォーカルとバックコーラスの距離間が出てきた。
そのせいで音が立体的になってきたが、CDでは残念なことに見うけられないことであった。

ドリーの色気、エミルーの透明感と嗄れ声、そしてリンダの直線的な声と強い声力、これらが過去に聴いた時よりリアルに表現できるようになった。

過去に使っていたメインCDプレーヤーは、メリディアン207Ⅱであったが、かなり古いフィリップスの部品を使っていたためか、音の落ち着きはあったが、同じ傾向のQUADとはあわなかったようであった。
数年前にパイオニアのマルチメディアプレーヤーに替えたが、ピュアオーディオCDプレーヤーとしても十分すぎる音がするのを最確認した。(高周波ノイズ、デジタルノイズを減らすため、プリとの間にトランスを噛ましてあるが、これが意外に効く)

DENON DL-103は、安価なMCカートリッジだが、丸針の安定感と、バキューム方式のレコードプレーヤーが相まって、ディスクの撓みをほぼ完全に抑え、アームの追従性をかなりUPさせ、インサイドフォースを有効に抑え、結果内周歪が最小に収まったのが功を奏したと思われる。

アームのオイルダンプ圧力を調整しきったこと、ベスト針圧が2.6gであることに落ち着いたこと、プリアンプを修理オーバーホールし、フォノイコライザーの状態が良くなったこと、ヴォリューム、バランサーのガリオームが取れたことなどで、装置の品質が良くなったことが、過去の装置では経験したことがない音を聞かせてくれた要因であろう。

音の変化が一番大きかったのはYAMAHA NS1000、以前の未調整状態のままではヴォーカルの強音で音が荒れたし、弦の音が金鋸のように聴こえ、どうしようもないスピーカーだと思っていたが、QUADが壊れたことで使用せざるを得なくなって、試行錯誤の結果わかったことは、NS1000のハイ・ミッドのアッテネーターは、0dbがベストでなく、-5dbから-7dbが一番良い音を出すということで、このことに気づいたお陰で、NS1000が、かつて経験したことがない音色に変身した。
置き台をTAOC2段積みにしたこと、床を非常に硬く補強してあることも功を奏したのだろう。

アンプのトーンコントロールも同じ事だが、フラット位置が正解というのが、大いなる神話であり、時間と労力が必要であるが、自分の耳で確認しながら調整することが、いかに大切かを実感した。
今回のCDでの再生時には、BASSのトーンコンを上げたいという欲求に駆られて仕方がなかった。

オーディオ装置で最もその性能が発揮できるのは、アンプでもスピーカーなどの機器類でなく、「部屋」であることは、知られているようで、小生もかつてはそうであったが、それを無視して、装置ばかり変更していた時代があったように、部屋に着目し実際にアクションを起こす人は未だに少ないようだ。

賃貸マンションの方には申し訳ないが・・・・
住宅事情がよろしくない我が国では、かなり困難ではあろうが、持ち家の人は部屋を改造するか敷地があればプレハブを建てて、それに手を加えるのが良い音への最も近い道だと小生は思う。
装置の度重なる変更にかける資金で、部屋の改築増築ぐらいは可能であろうし、少し無理すれば新しく建てる(安価なプレハブで中身を改造する)ことは中級車1台分の予算で、そこそこのリスニングルームが出来るはずだ。

外国製の高級アンプ高級CDプレーヤー高級スピーカーを購入すれば、500万以上は平気でかかるから、その半分の予算で部屋を改造すれば、音の悩みなどはほとんどなくなり、機器の買い替えはしなくてよくなり、あとはソースを増やすほうに回せる。

レコーディッド音楽愛好者オーディオ愛好者であればなおさらだが、優先順位は真っ先に「部屋」、つぎにオーディオ装置であろう。
順番を間違えると、泥沼に入るか、良い音には一生巡り合えないかもしれない。
しかし残念ながら、順番を間違えている人は音楽愛好家オーディオ愛好家の中に、沢山いるようだ。

床下の補強、天井裏に吸音材をぎっしりと入れると、低音の再生に力を発揮する。
そして窓や扉を2重にする。

これだけで、あとは微調整するだけで音響効果はかなりUPする筈だ。
新築なら、天井を3M以上にすると効果的。
フラッターエコーだけ気をつければリスニングルームとして成功する。
壁の防音は出来ればしない方が良い、窓や扉を2重にすることでだいぶ稼げるし、壁の防音は音質を妨げる原因になりがちだ。


こちらはライブだが、「TRIO」にも収録されている曲が、同じメンバーによるほぼ同じアレンジの「ゾーズメモリーズオブユー」
少々音質映像は良くないが雰囲気はある。


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LPでのお楽しみ
ご覧のものはLPに入っている解説の裏面である。
イラストが3人の特徴をよく掴んでいて、着せ替え人形みたいで大変おもしろい。
こういうことが可能なのはLPのメリットで有ろう。

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by noanoa1970 | 2011-09-11 17:39 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)