もうすぐ9月、ヘレン・メリルを聴く

ヘレン・メリルといえば、あまりにも有名な、クリフォードブラウンとのアルバム「Helen Merrill with Clifford Brown」だが、あと少しで9月になるから、9月そして秋にちなんだ歌を多く集めたアルバムをとり出した。

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日本ヴィクターが1967年に録音したものを、KATARYSTレーベルが米国で発売したLP。

ヘレン・メリルは日本で生活していたそうだから、日本での録音となったのだろう。

アルバムは、やがてくる季節に因むスタンダードナンバーばかり集めたもので、いずれもヘレン・メリルらしいハスキーな声でしっとりと歌ったものになっていて、心が洗われるようだ。

バックが日本人ということも、録音が日本で行われたことも、当時は気が付かないまま聴いていたが、この猪俣猛/ウエスト・ライナーズのバックが実に良い。

ヘレン・メリルも収録曲がスローバラードが多いせいか、かなりのびのびと歌っているようで、かつての名盤と」比べ、声の伸びは断然こちらの方が良い。

20年ほどたっていて、もう若くもないのに声の伸びがよく聞こえるのは、with Clifford Brownの録音の仕方が原因ではないかと思えて来た。

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ジャケット写真でも分かるように、with Clifford Brownでの録音は相当なオンマイクだから、サシスセソの音を含むハスキートーンが強調されて録音されたのではないだろうか。

今聞くと相当意識して造られたトーンであると言えそうだが、しかし其れがまたなんとも言えぬGOOD FEELINGを醸しだしたことは間違いないと思う。
50年、60年代のJAZZ録音には、人工的な録音が多かったが、そのことが却ってリアルさをうむ事に繋たものが相当数有った。

生に忠実な録音が、必ずしもリアリティーが有るということには繋がらないという証明のようなもので、レコーディッドミュージックのレーゾンデーテルの重要な要素であることを知らされたことになった。

with Clifford Brownは1955年録音だから、ヘレン・メリル23歳の録音、本アルバムは13年後のものになるから彼女はまだ36歳。

声の衰えなどはない、油の乗り切った絶頂期と言っても過言ではないと思うが、55年の録音はいかにも円熟した歌声のように聞こえて仕方が無い。

プロデューサー、録音エンジニアの意図的なものと思うが、なぜそういう録音にしたのかは不明のママになっている。
収録楽曲は、20代の女性には似つかわしくないから、彼女のハスキーヴォイスを最大限に生かして、つじまを合わせたのだろうが、それにしても、ヘレン・メリルは20代の若さで、40代以上のの歌手が持つ熟れた雰囲気を持っているのに驚きだ。

青江三奈もそうだったが、ハスキーヴォイスは、大人びて聴かせることが可能な声質なんだろう。


Personnelは
確認は出来なかったが、同じメンバーで割と長く続いたことから、多分以下のメンバーであろう。
猪俣猛 ( Takeshi Inomata ) (ds)
伏見哲夫 ( Tetsuo Fushimi ) (tp)
鈴木重男 ( 鈴木重夫? ) ( Shigeo Suzuki ) (as)
三森一郎 ( Ichiro Mimori ) (ts)
今田勝 ( Masaru Imada ) (p)
滝本達郎 ( Tatsuroh Takimoto ) (b)
中牟礼貞則 ( Sadanori Nakamure ) (g)

曲目
1-1 ニューヨークの秋
1-2 ノー・アザー・ラブ
1-3 グッドバイ
1-4 九月の雨
1-5 サムワン・トゥ・ウィッチ・オーバー・ミー
1-6 ローマの秋
1-7 セプテンバー・ソング
1-8 ラウンド・ミッドナイト
1-9 トゥ・スリーピー・ピープル
1-10 枯葉
1-11 コード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
1-12 酒とバラの日々

演奏:猪俣猛/演奏:ウエスト・ライナーズ

You'd Be So Nice To Come Home toは、with Clifford Brownに比べると、掴みと聴かせどころが少しものたりない。
やはりClifford Brown があってこそ、ヘレン・メリルが生きた録音である。

1-3 グッドバイは、ショパンのエチュード Op.10-3 ホ長調 「別れの曲」である。

1-8 ラウンド・ミッドナイト、マイルス、マッコイタイナー、クロードウイリアムスン出はよく聞くのだが、ヴォーカルで聴くのはひさしぶり、この曲はヘレン・メリルに良く似合っている。

9月&セプテンバーの各曲、聴いていて染み染み感が高まって来るヘレン・メリルの真骨頂。

日本は、まだまだ残暑がきついが、NYやRome、PARISの9月はどんなものだろう。
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by noanoa1970 | 2011-08-30 17:24 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(10)

Commented by こぶちゃん at 2011-08-30 19:47 x
こんばんは。未だ暑いですね。
本アルバム全く知りませんでした。当時の日本の相当良い面子を揃えた感じですね。今田勝は20年ほど前、六本木のサテンドールに息子と自身のグループで頻繁に出演してました。36歳ならボーカリストとして全盛期。何故日本に?という疑問はありつつも良い録音を残してくれていたならGoodです。
Commented by Abend at 2011-08-30 20:49 x
sawyer様、こんばんは。
メリルと聞けば、バリトンのロバート・メリルが真っ先に浮かんでしまうような私ですので、ヘレン・メリルの歌では、コール・ポーターの"You'd Be So Nice To Come Home to"しか知りません。TVCMにも使われていましたね。様々な歌手がカバーしていますが、私はビョークが歌ってくれないかと思っています。

曲目の1-4『九月の雨』とは別物ですが、太田裕美の『九月の雨』は好きな曲です。秋の曲はたくさんありますが、晩秋が好きな私には、多田武彦の男声合唱組曲『雨』の第4曲「十一月にふる雨」がベストです。歌詞にある言葉の関係で、現在発売されているCDでは別の曲に差し替えられていますが、YouTubeでは聴くことができます。
Commented by noanoa1970 at 2011-08-31 08:26
こぶちゃんさん
おはようございます。
このアルバム、実は小生も忘れかけていた物です。
極初期の録音か、最近といってももう20年以上前ですが、ギル・エヴァンスをバックにした『コラボレーション』を良く聞きます。
ザ・ニアネス・オブ・ユーも好きですが、やはりトドメはwith Clifford Brown でしょうね。
今田勝は浅川マキのバックで初めて知った人でした。
Commented by noanoa1970 at 2011-08-31 08:47
Abend さまおはようございます。
"You'd Be So Nice To Come Home to"は名曲だけに多くの人が歌い演奏していますね。
アルトサックスの名手Art Pepperも良いです。
リズミカルなサラヴォーンとクリフォードブラウンのアルバムを聞き比べると味付けの変化とクリフォードの旨さが良く分かります。

多田武彦さんの人気、特に関西では絶大のようですね。「雨」に因む曲が多いのはなぜでしょう。。
Commented by Abend at 2011-08-31 21:40 x
sawyer様、こんばんは。
『雨』は、関学グリーのLPと京産大グリーのCDを持っていますが、どちらにも多田武彦自身の同じ解説が載っています。雨という鬱陶しい自然現象は、昔から人間に孤独感や悲哀感を与えてきたが、同時に、雨があがるときの清々しさも人心に伝えてきた。そういう様々な雨と、その時々の人心の交流を主題にして作曲した、というのが要旨です。
今、ジョー・スタッフォードの歌う『雨の九月』を聴いていました。明日からの九月は、台風の影響で早速雨模様となるようです。
Commented by k_hankichi at 2011-09-01 07:24
学生時代に愛聴していました。どの音盤かはわかりません。しかしやはり耳に残るは、『ユードビーソーナイス・トゥ・カムトゥ』です…。
Commented by noanoa1970 at 2011-09-01 08:09
Abend さまおはようございます。
>雨という鬱陶しい自然現象は、昔から人間に孤独感や悲哀感を与えてきたが、同時に、雨があがるときの清々しさも人心に伝えてきた。

これは日本人の感性そのものですね。
こういう感性の横溢は、楽曲からも大いに聴こえてくるように思います。
彼がチョイスした数々の「詩」にも、そういった感性が表現されてているように思います。
彼の曲は、決して斬新的ではないですが、伝統と近代を合わせ持ているようで、尾高尚忠さんのフルート協奏曲2楽章のように、心がゆさぶられます。
高度経済成長下の日本が失いつつ有るものを、惜しむようなところも多分に未受けられます。
今までほとんど聴いてきませんでしたが、今後は積極的に聞こうと想います。
Commented by noanoa1970 at 2011-09-01 08:15
k_hankichiさんおはようございます。
もし今はその音盤が無いのであれば、是非」「Helen Merrill with Clifford Brown 」を。
クインシージョーンズの編曲も見事、クリフォードブラウンのTPも天才的です。
Commented by Abend at 2011-09-02 21:40 x
sawyer様、こんばんは。こちらは台風が接近中です。
今日、行きつけのレンタル屋さんで『Helen Merrill with Clifford Brown』のCDを借りて来ました。今回、sawyer様からご縁をいただき、このCDを体験できることをうれしく思います。

多田武彦の『雨』を聴いたのは、私が高校時代コーラス部にいたことによります。男子校でしたので男声合唱曲に関心があるのですが、クラシック以外のジャンルのヴォーカルは女声が好きです。倍賞千恵子の声が一番好きといえば、ご想像いただけるかと思います。
Commented by noanoa1970 at 2011-09-02 22:50
Abend さまこんばんは
>『Helen Merrill with Clifford Brown』のCD
昨日はニアネスオブユーとwith Clifford Brownを聞きなおしてみました。
ついでと言っては失礼ですが、サラヴォーン、クリスコナーも。
これから聴こうと思っているのは、ダイナワシントンで、ダイアンリーブスも間に挟んだのですが、クロスオーヴァー気味で余り好きにはなれません。
昨日今日とアナログ(しか持ってないので)で、女性JAZZヴォーカル三昧でした。
多田武彦さんは昔掲示板で、熱烈なファンがいて、名前は知っていたのですが、今までは「月光とピエロ」ぐらいしか聞いたことが有りませんでした。
今回Abend さんがお上げになったのを切っ掛けに、youtube
でかなり聴いてみました。よいですね。

倍賞千恵子とはマニアックな。
積極的には聞きませんが、音楽番組に頻繁に登場していたことがありましたね。「下町の太陽」は憶えています。
ヴェルヴェットヴォイスで高音が伸びきる所、確かな音程がよいですね。