ビリーホリデイとレナードバーンスタインの不思議な関係

小生はJAZZも聴くが、とりわけて好きなのは、女性JAZZヴォーカルだ。

ハスキーで、フレージングが素敵なヘレン・メリル、粋なノンヴィブラート唱法のクリス・コナー、スキャットの妙サラ・ヴォーン、ブルージーなダイナ・ワシントン、鯔背なアニタ・オディ、クールなジューン・クリスティ、バラードの女王カーメン・マックレー、ハスキーなエラ・フィッツジェラルド、そして最近で好きになったナタリー・コールなど、特に往年の名歌手を好んでいる。

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しかし、ビリー・ホリデイは今まであまり聴かなかったというか、聴けなかった歌い手で、彼女の音楽に手を出さなかった理由は、他にこれといったものが思い当たらないから、それは多分彼女の栄光から悲惨への悲しい生涯のことを耳にしていたからだと思う。

耳にした彼女の唄声は、人生の暗黒面を感じさせ、気分が滅入ることがあったが、その頃小生はそのような傾向の唄として、浅川マキをもっぱら聴いていたので、ビリーホリデイを積極的に聴くことはなかった。

しかし女性JAZZヴォーカルで、ビリーホリデイを聽かず仕舞いでは、勿体無いと思っていた所、「ディーヴァ」特集として、ビリーホリデイが取り上げられたTV番組を見て、大きな刺激を受けたこともあって、あまり聴いてなかった彼女の米DECCA録音を、この際聴いてみることにした。

DECCA録音は、CD2枚に収録され、彼女がDECCAとの契約期間、1944年10月4日から1950年3月8日まで、が録音順に、50曲余り収録されている。
別テイクも収録されており、おそらくはDECCAに録音したものは全て収録しているものと思われる。

この期間中に、彼女は恋愛に疲れ果て、麻薬に手を出したといい、このCDに収録されている後期の彼女の歌は、麻薬のせいで歌唱力が衰えたとも言われている。

音程が狂うことが多くなり、それをごまかすためにヴィブラートを多用したことに、そのことが表れているというから、それを確認してみようとする誘惑もある。

アルバムのはじめの方に「ビッグ・スタッフ」という曲があり、別テークを含め彼女はこの歌を、都合5回も録音した。

「虹の彼方へ」に少し似た感じのするブルージーな曲で、youtubeで検索してこの動画を発見した時、正直驚いた。


以上のようにバーンスタインの顔写真があり、「FOM FANCY FREE」としてあったからだ。

ということは「ビッグスタッフ」は「FANCY FREE」という、レナード・バーンスタインの作品と関係があるのかもしれないと思いつつ、曲目のプロフィールをよく見ると、写真のようにL・BERNSTEINという表記があるではないか。
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これはもう間違いなく、ビリー・ホリデイがバーンスタインの作品を歌ったということで、思いがけないことにめぐり逢うことができた。

それでは「FANCY FREE」とは何者で、「ビッグスタッフ」「BIG STUFF」とは何であろうか。

スラングかも知れないが、とにかく辞書によるとFANCY FREEとは、恋を知らない、恋にとらわれない、自由奔放な,勝手気ままな、悩みのない,気楽な、という意味であるらしいが。

データに乏しいが、1944年にバーンスタインが作曲した、バレー組曲であることがわかった。
しかしその内容はわからなかった。
オリジンルの音楽は、バーンスタイン交響曲全集の中に収録されているらしい。

BIG STUFFは、調べてみたが意味不明。
偉大な仲間と訳せそうだが、多分そんなに単純ではないと考えたほうが良い。
STUFFは「ぶつ」でもあるらしいが、まさか麻薬のことではないだろう。

なぜビリーホリデイが、BIG STUFFを、5回も録音し直したのだろうかという疑問が湧いてきたが、歌を聴く限りでは、ファーストテイクに瑕疵はないから、不思議に思っていたところ、次のような事がわかった。

バレー組曲FANCY FREEの場面に、酒場の場面があるらしいのだが、このシーンで流れるのが、ビリー・ホリデイが歌うBIG STUFF。

つまりバーンスタインの頭の中には、ビリー・ホリデイが存在していたことになり、自作のバレー組曲の1シーンに、自作のBIG STUFFを挿入歌のようにビリー・ホリデイに歌わせたということになる。

ビリー・ホリデイは、このことを知っていて、5回も別テイクヴァージョンを歌い、その中からバレー組曲の中の挿入歌として、相応しいものを選択させる意図があったのかも知れない。

バーンスタインは、クラシック畑の指揮者兼作曲家でもあるが、JAZZに造詣が深く、自信の作品にはJAZZテイストの強いものが相当ある。

また楽天主義をテーマとした、ミュージカル「キャンディード」や、ご存知「ウエスト・サイド物語」などの作品は、いずれもJAZZのテイストとクラシックの手法を巧みに織りまぜたものである。
「キャンディード」と「ファンシーフリー」には、共通のテーマ「気楽にいこう」が潜んでいるような気がするが、多分バーンスタインの心情とは逆なのではないだろうか。

話がバーンスタインの方に行ってしまったが、ビリー・ホリデイの歌については、もう少し聴きこんでから、いずれ書くつもりだ。

本日はビリー・ホリデイとレナード・バーンスタインの、思わぬ音楽的関係を発見したので、これでよしとしよう。
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by noanoa1970 | 2011-06-03 10:36 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(4)

Commented by cyubaki3 at 2011-06-06 01:10 x
ジャズでテイク5というのは決して多くはないと思います。二桁もざらですから。

閑話休題。ケンペ指揮BPOのブラームス交響曲全集を久々に一気に聴き直しました。以前このブログで好きな順番を話題にされていましたが、私的には1>2=4≧3という感じです。ありがちですね。
Commented by noanoa1970 at 2011-06-06 06:34
cyubaki3さまおはようございます。
>ジャズでテイク5というのは決して多くはないと思います。二桁もざらですから。
文字通りTAKE FIVEというタイトルありますね。
ただ小生は、このDECCA録音で、この曲だけ5回もやり直しをしていいることに、何かがあるのではと思った次第でした。もし単なるやり直しとすれば、それらすべてを音盤化したことに、製作者の強い意図を感じます。残されたもの全てをというだけのことかもしれませんが。
>・・1>2=4≧3の順位ですが、たった4つしかないので、同一ん順位はどうしたってありがちですが、2=4≧3、=と≧をつかったものは、あまり見受けないですね。ある意味斬新です。
小生の場合、演奏者に良いものがでると、順位が変化することがありますが、しかし順位をつけるのは多分ナンセンスで、其々に良い所が沢山あるのが、ブラームスだ、ということも言えるでしょうか。
Commented by cyubaki3 at 2011-06-06 21:16 x
>小生の場合、演奏者に良いものがでると、順位が変化することがありますが、

上記ランクは曲の優劣ではなくてあくまで好みですので、私もしばしば変ります。

>文字通りTAKE FIVEというタイトルありますね。

デイヴ・ブルーベックですね。あれは五拍子だからTAKE FIVEだったと思います。洒落のようなものなのでしょう。
Commented by noanoa1970 at 2011-06-07 08:22
cyubaki3 さま、おはようございます。

「TAKE FIVE」・・ cyubaki3 様がおっしゃるとおり、5拍子と5分の休憩あるいは5分待て、そして5回目など多くの意味を掛けた言葉ですね。JAZZにはこのような洒落言葉が多いのも特徴的で、「トゥーベースヒット」Two Bass Hit とtwo-base hitを掛けた洒落ものもありました。
ブルーベックは、5.7.11拍子の曲がありますね。
小生は「アンスクエア・ダンス」が好きです。