F・コンヴィチュニーの「ラインの黄金」

コンヴィチュニーの「指輪」とだけいえば、今や演出のペーター・コンヴィチュニーが有名になったが、これはペーターの親父のフランツ・コンヴィチュニーが、1959年9月18日から、ロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場で、「指輪」全曲を公演した時のライヴ音源から、前夜祭「ラインの黄金」の復刻盤である。

「指輪」全曲録音、残ってはいるが、今までコンヴィチュニーの「指輪」は、いわば幻となっていて、聴くチャンスはほとんどない状態であった。

小生は10年ほど前に、ネットオークションで、海賊版の「ラインの黄金」を入手したが、音源の状態に欠落やノイズが多く、ジックリと聴ける状態の代物ではなかった。

最近この時の第1夜「ワルキューレ」正規盤が発売となったので、早速入手して聴いてみたところ、音質は多少改善されていたが、イコライザーで中音域を下げた時のように、全体が詰まったような音だった。

しかしもともとワーグナーに定評のあったコンヴィチュニーらしく、1音1音に魂がこもり、確信に満ち自信に溢れた演奏で、歌い手の能力を、最も高いレベルで引き出す役割を十分担っているのが確認できた。

第3幕の前奏曲「ワルキューレの騎行」のところを聴くと、コンヴィチュニーが、いかに物語の流れを把握して音楽を作っているかがよくわかる。

歌手陣の起用は、海外公演としては(だから)豪勢な顔ぶれである。
また東ドイツと西ドイツの面々が参加しているのも、この公演に臨むものが、如何に大きいものであったかを想像させる。

戦後間もなくの東ドイツは、西ドイツに負けじと、得意の芸術領域で活発な海外へのアピールをしたという。

1962年のゲヴァントハウス管とコンヴィチュニーの来日も、そういう政府の政策の一環であったともいわれる。

「ワルキューレ」の主な出演者は
ラモン・ヴィナイ(ジークムント) 
アストリッド・ヴァルナイ(ブリュンヒルデ)
ハンス・ホッター(ヴォータン)
クルト・ベーメ(フンディング)
エイミー・シュアード(ジークリンデ)
ウルズラ・ベーゼ(フリッカ)、他
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
フランツ・コンヴィチュニー(指揮)

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本日聴いた「ラインの黄金」であるが、以下のプロフィールである。
WLCD0334 2枚組 初出
ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」
ハンス・ホッター(ヴォータン)
リフャルト・ホルム(ローゲ)
マルガ・ヘフゲン(エルダ)
クルト・ベーメ(ファゾルト)
エドガー・エヴァンス(フロー)
フランツ・コンヴィチュニー指揮
コヴェント・ガーデン管弦楽団、合唱団
1959年9月18日ロンドン、コヴェント・ガーデンでのライヴ

ワルキューレにも増しての歌手陣が揃った傑作である。
同じ音源だと思うのだが、ワルキューレよりも音質が良くなっている。
発売元は、いずれもWALHALLだが、マスターテープの保存状態が良くなく、劣化したのだろうか。

前に入手した海賊版にあった、コピーテープの音揺れや、音の欠落などもなくなっているから、細かいニュアンスが捕まえにくかったところは、かなりの改善だが、1959年録音にしては、音源そのものの録音状態が芳しくないようだ。

どうもコンヴィチュニーの残した録音に、一部を除きあまり音質が良くないものが多いのは、とても残念なことだ。

米国ではそろそろステレオ録音が主流になりつつある時代だったから、ヨーロッパの録音技術はやや遅れていたのかも知れない。

この頃のハンス・ホッターは、貼りがある朗々とした声は、ヴォータン役の定番に相応しい。

オペラ指揮者としてのコンヴィチュニーは、とにかく物語の流れをよく掴んでいて、脇役に徹しながらも、集中力が途切れる事のないように、適度な緊張感を保つために、殆どわからないほどの、非常に細かい変化をつけることにあるようで、歌手陣もコンヴィチュニーのそうした工夫と、冷めながらも熱い音魂のバックに、集中力を切らさない熱唱をしている。

海外公演で、しかも現地のオケだから、あまり練習やリハーサルなどが出来なかったであろうにも拘らず、コヴェントガーデン管は、さすがにオペラに慣れているせいか、他の指揮者とは少し毛色の違う、コンヴィチュニーの解釈にも破たんなく、その能力を発揮している。

ホルンのひっくり返りは、致し方ないことにしておこう。

噂だったヴィントガッセンの出場はこの2作にはない。
ジークムント役はラモン・ヴィナイだったが、残りの2作品のジークフリート役での期待が残される。

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by noanoa1970 | 2011-05-30 15:25 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)