ウインナーワルツを踊る指揮者

d0063263_17462889.jpg
一昨日録画した、カルロス・クライバーがバイエルン国立管弦楽団を指揮した、ベートーヴェンの4番と7番の交響曲を観た。

4番も7番は、LPとCDでかなり聴いてきたが、今回は1968年の来日公演ライブ映像だから、期待値は非常に高かった。

会場は昭和女子大学人見記念講堂で、1986年5月に開催された。

10月にはサントリーホールが完成するが、聴きにに言ったわけでもないのに、こんなことをいうのはおかしいが、出来れば新しい音響のよいホールでこの映像を残して欲しかった。

と言うのは、録画で見聞きする限りであるが、バイエルンの音が、中抜け・・・つまり金管楽器がやけに前に出ていて、しかも中低域の弦の音が引っ込んでしまい、したがって高域の弦と金管がやけに前に出る音だったので、はじめは録音のせいだと思ったが、後半の1996年ドイツのホールでのブラームス4番を聞くと、やはりこれはホールの音響環境のせいなのだろうと思った次第。

4番も7番も、数少ないクライバーの録音の中で、かねてから評価が高かったものだ。

というより、クライバーの録音はおしなべて高い評価が与えられている。

しかし小生は、並み居る手放しの高い評価に、少々異論を唱えるものである。

もちろん、評価と好みは分けて考えるべきであろうが、好きでないものに高い評価をつけるわけにはいかない。

クラシックのあらゆる場所と機会のほとんどすべてで、高い評価が与えられ、多くのファンを惹きつけてやまないクライバーだが、小生の好みからはその距離を遠くする。

今回録画した映像を観て、今までボンヤリしていたクライバーの、何が小生にとって良くないのかがはっきりしたようだ。

たしかに彼が創る音は、コン・フオーコ(熱烈に、火のように)で 、そしてクレシェンドしながらスフォルツァンドに至る劇的な音あるいは、音量の変化は、聴くものを惹きつけるのに十分である。

曲によっても違うのは承知の上でだが、そしてそのことが概ね、彼の音楽的特徴の大きな1つでもあるようだ。

こんな音楽を演られたら、聴く側は心臓の鼓動が高まりを覚えて、ハラハラドキドキし、そして聴き終えたときには、スカっとするのではないだろうか。

そんな彼の音楽が、かなり最初から翔ばしているにもかかわらず、ココぞというときには、さらに速く強くなり、まるでアクション映画や戦争映画の戦闘シーンを見ているようで、かなり小気味よく気持ちが良いことは確か。

こういう演奏スタイルは、実に格好が良く、多分多くの・・・初心者からベテランまでの、クラシックファンに好まれるだろう。

d0063263_17471357.jpg
d0063263_1748834.jpg
おまけにライブを観た方は、その指揮ぶりの見事さにも、これぞカリスマ指揮者と、感嘆し尊敬の念さえ抱くことになるであろう。

作られる音楽こそ違うものの、第2のカラヤンと言っても過言ではないのが、カルロスクライバーという指揮者である、そう思うところ大である。

4番も7番においても、何故にあのように極速のテンポ設定をするのだろうか。

スピード狂でもあるまいが、そういえば彼は無二の車好きだとか。

指揮台の上で、ウインナーワルツをはじめとする、様々な種類の社交ダンスを踊っているかのような指揮ぶりは、時々垣間見せる、これ以上はないほど細かい指示とは正反対の姿を見せてくれるが、微細な指示は、ぎりぎりでその指示に追従するオケの限界点を見せられるようで、多分そのことが原因で、オケに余裕がないところから、音楽そのものの勢いはあるのだが、萎縮してしまっている感がある。

テンポを速く取る要因は、オケの限界点を誘引し、オケが限界点に到達する、その時のエネルギーを、音楽のパワーへと変容させることにあるのだろうか。

PPPからFFFへのリニアとは言えない、急激かつ劇的な変化は、変化前の音量と変化後の音量の大きな差によって、ダイナミックでアグレッシブに聞こえることが多いが、しかし、音楽の重みと音の厚みに乏しいように聞こえ、したがって、小生の脳を刺激するような、ジワジワと湧いてくる音魂に乏しい。

言い換えれば、音楽あるいは音が表面的に響いてきて、聞いている最中は良いのだが、聞き終えると、結局心の奥に残らない。

少々厳しい表現になってしまったが、いつも小生が演奏比較の際に、リファーレンスにしている、コンヴィチュニーとゲヴァントハウス管弦楽団の演奏は、クライバーとは対局にあると言ってよいだろう。

同じようにブラームスにおいても、小生が求めるブラームス演奏からは少し遠い距離にある。

小生が特徴だと思うブラームスは、旋律線を和製が包みこむような音楽だ。
つまり言いたいことをズバリと言えない。
そんな音楽がブラームスの一番の特徴・・・特に大編成の音楽では・・のように小生は思っている。

クライバーの4番の演奏は、旋律線を鮮やかにクッキリと表面に出しすぎの嫌いがあるから、小生のブラームス観からは遠い存在になるわけだ。

テンポも小生には速すぎだが、これはなにもコンヴィチュニーと比較していうのでなく、コンヴィチュニーのテンポ設定はかなり柔軟なのが事実である。

先ほど試しに、クライバーの指揮ぶりをじっくり見るために、スロー再生した。

こうしてみると、やはり彼は、指揮台で踊りを踊る。

ワルツ (スローワルツ)、タンゴ (コンチネンタルタンゴ)、スローフォックストロット、クイックステップ、ヴェニーズワルツ (ウィンナワルツ)といった、あらゆる種類のダンスを、優雅にそして時にはシビアに踊り続けるクライバーがはっきりと、目に焼き付いた。

[PR]

by noanoa1970 | 2011-04-04 14:22 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(2)

Commented by cyubaki3 at 2011-04-06 09:43 x
本記事の写真を見て気がついたのですが、クライバーはちょっと雰囲気がデニス・ホッパーに似ていますね。

http://bit.ly/eZtiQU
Commented by noanoa1970 at 2011-04-06 17:10
cyubaki3 さん
>デニス・ホッパーで、スピルバーグの「激突」が浮かんだのですが、あれはデニスウイーパーでした。ホッパーさんはイージーライダーでしたね。晩年の白髪頭とヒゲは、たしかに似ていますね。クライバーも相当な役者だと小生は思います。