よる年波に勝てはせず・・「浄夜」をめぐって

「クラシック招き猫」掲示板で、シェーンベルクの「浄夜」のお薦めは?という投稿があった。
小生は、「名演、名盤、を教えて」・・・という類の投稿にはレスをしないでおくことが基本的スタンスである。他人の評価を気にしてCDを購入し音楽を聞くなど、小生はマッピラご免で、他人の「感性」ほど当てにならないものもないし、まして自分でも昨日良かったのに、今日は悪い・・・なんてことはしょっちゅうであるのだから、おいそれと下手なことはいえない。

音楽を言葉で表現することは難しいことであるから、単に「名演、名盤」では、その言葉の概念も去るところながら、所詮昔から「定評ある」=「オーソライズ」されている、=えらい評論家先生のお墨付き有る・・・などという範疇に落ち着かざるを得ない。中には苦心してその理由を詳しく表現しようとする人もたまにいるのだが、やはり故人の感性の範疇に推しとどまっており、意欲を掻き立てられ、積極的参考にして購入にいたる、ということにおいての説得力に欠ける。小生など見習ってその音盤を購入する気持ちには到底なれないので会る。
自分が購入した音盤を他人がどのようにに評価しているのかが気になるのであろうか?小生にはサッパリ分からないのである。
「名盤、名演は?」という投稿は今もなお続いているようだ。

ある日「浄夜」のおすすめを、教えて」という投稿があり、しばらく返事を書き込むのを躊躇していた。
小生はこれは多くのレスがつくだろうと思い、小生の、出る幕ではないと、決めていたのだが、どういうわけか、2、3日経っても一向にレスが増えない。そしてその投稿には、自分は「この演奏を愛聴です」と、ある演奏が上げられていたのでそれなら・・・・とやおら重い腰を上げ、レスすることにした。

小生は、音盤について投稿するときには、その音盤を必ず投稿前に改めて聞くようにしている。
今回も「ブーレーズの6重奏盤」を聞いてみた。質問投稿者の方が、その音盤を愛聴していると書いていたからである。

さてそこからがこの話の本題なのだが、小生が聞いたのは、ブーレーズの6重奏版の演奏、しかしこの音盤、演奏技術、解釈、アーティキュレーションなど、どれをとっても余りにもひどく、ブーレーズらしからぬところが多々あった・・・中でもバイオリンの過度なポルタメントにはひどくガッカリさせられた・・・ので、期待を裏切る演奏として、その旨の投稿をした。
ところが後で気がついてみると、小生が聞いたものは、ブーレーズの指揮した6重奏盤でも、録音年の違う、演奏者も違うものだったことが判明した。音盤を取り出して、聴き終えてかなりの間何の躊躇もなく、「ドメーヌ-ミュージカル-アンサンブル」1967年録音として、投稿をしてしまったのだった。しかし実は、小生が聞いたのは、「インタ-・コンテンポレイヌ」との新録音であったのだ。
小生ブーレーズの「浄夜」は3種類所有しているのだが、実は投稿前に、気に入っている、古い弦楽合奏版、そしてもう一つのこれも古い6重奏盤を探したのだが、あいにくレコード棚のどこかに紛れ込んでしまい、すぐに見つけることが出来なかった。つい近くににあったCDを取り出し、聴いたはよいのだが、投稿する段になった瞬間、、「インタ-・コンテンポレイン」との音盤が「ドメーヌミュージカルアンサンブル」との音盤に化けたのである。
投稿した跡でこれに気がついたので、すぐにお詫びと訂正の投稿をしたのであったが、・・・・・・・・・・・・
その次がまたいけない、

小生のお気に入りの「浄夜」の演奏を「ブーレーズの合奏版」としなければならないのに、なぜか「バーンスタインの合奏版」と誤記してしまったものだから、すぐに愛好家の方からご指摘・・・というか「バーンスタインに浄夜の演奏が有ったことを知らなかった、録音データなど、入手できる可能性も含めて教えて欲しい」という質問があった。
データを確認するために、音盤を探さないといけないと思い、レコード棚をゆっくり探すと、それは存在した。例の「クリムト」の「接吻」のジャケットのものである。さて録音は・・・・とジャケット記載のデータを探していて、ハタと気づいた。なんと「バーンスタインの指揮」のものと思い込んでいたそれは、実は、「ブーレーズ」がニューヨークフィルのメンバーと録音したものだったのである。
いっぺんに血の気が引いた。またも大きなミスをしたまま、投稿してしまったのである。

思い込み・・・・なんといやな響きの言葉だろう、自分で気がつかない間に、思い込みの激しい人間の一種になっていたとは!!
またもお詫びの投稿をすると、その方からご丁寧な返事があり、ひとまずこころが落ち着いた。
この掲示板の参加者の皆さんはそれなりの人物が多いと以前から思っていたが、やはりそう思っていたのに間違いはなかった。

その夜、反省の意を込めて手持ちの「浄夜」を全部聞いて見ることにした。

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上が「ブーレーズ」の指揮した「ドメーヌ・ミュージカル・アンサンブル」との6重奏版・・・これはすごくいい。エヴェレスト・レーベルの1960年代のLP、フランス・ディスク大賞受賞と表記されている。
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実はこれが最もお気に入りなのだが、廃盤でCD復刻されてなく入手不可能なので、投稿を差し控えた。ゼルキンが提唱し、カザルスが、参加した・・・室内楽の音楽祭として定評の有る「マールボロ音楽祭」の録音。6重奏版で今まで小生が聞いた中では一番のお気に入り。どういうメンバーが集まって結成したか、その経緯は不明であるが、個々の演奏スキルは非常に高い。その緻密なアンサンブルと指揮者を立てない素直な演奏のよさが随所に出た、これは本当に聴いていただきたい演奏であるが、残念なことに廃盤のままである。ロマンチシズムの表現力と息の合ったハーモニーが織り成す音楽は、「ブーレーズとドメーヌ・ミュージカル・アンサンブル」の演奏を凌駕する。カップリングされたゼルキンが参加したブラームスのホルントリオもすこぶるよい演奏である。「ブルーム」が演奏するドイツ式ホルンの音が深く響く。
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ブーレーズとNYPメンバーによる合奏版。小生が気に入っている演奏。ロマンとリリシズムあふれる演奏。ブーレーズにしては珍しく感情移入激しい演奏だ。
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この録音はブーレーズらしからぬ演奏だ、何が言いたいのかサッパリ伝わってこない。素人の演奏家と思うほど技術的問題を抱えている。その割りに不必要な「ポルタメント」を多用している。なんともわけの分からない演奏である。ブーレーズの失敗作といっても良いだろう。
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若手の北欧の指揮者「サロネン」の合奏版。突き放した演奏をしようと思っているのだが、つい感情移入してしまうところもあり、全体のバランスを少し崩しかけている、ゴツゴツした演奏。
アンサンブルは巧みなのだが意志薄弱・・・今ひとつ惜しい演奏である。
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by noanoa1970 | 2005-07-22 07:00 | 徒然の音楽エッセイ | Comments(0)